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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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150/180

東京都千代田区。蕎麦屋のランチセット。

 どんよりとした天気がここ数日続いていた。

 日によって寒暖差もかなり大きかったが、今日は大気がかなり冷えている気がする。

 師走に入ったそんな日に、タスッタさんは秋葉原にいた。

 駅からすぐそこにある総合家電店のビルでいくつか買い物をした後、散策がてら中央通り沿いをしばらく歩く。

 そちらはアニメショップやゲームセンター、パチンコ屋などが並ぶ一角になるのだが、そのどれもに興味がないタスッタさんはそれらのお店の前を素通りして、山手線の線路がある方面へと移動する。

 通りをひとつ越えるとそこにかなり大きな商用ビルがあり、そのビルの名称が示すとおり、そこはもともと青果市場があった跡地に建てられたものだと、タスッタさんは以前になにかで読んだことがあった。

 上層の階はオフィスになっているようだが、地上からいくつかのフロアは飲食店がテナントとして入っている。

 場所柄、そのビルの周辺にも飲食店はそれなりに存在するのだが、タスッタさんはそのままそのビルへと向かう。


 一階に入っていたチェーン店のカフェと中華料理屋の間にあるエスカレーターに乗って、タスッタさんは二階へと向った。

 エスカレーターを降りたすぐの場所から飲食店が並んでいて、どうやら二階はすべて飲食店によって占められているようだ。

 どうしましょうかね。

 周囲をざっと見渡して、タスッタさんは考える。

 すぐそこに、ラーメン屋さんかなにかの券売機が並んでいるのが見える。

 どうやら複数の似たようなお店がそこで、フードコート形式の、つまり飲食スペースを共有した形で商売をしているらしかった。

 空調は十分に効いていたのだが、なんとなくラーメンという気分でもなかったので、タスッタさんはその一角をスルーする。

 後は、パスタとか、定食、海鮮、か。

 そのフロアをざっと散策しながらタスッタさんは様子を伺う。

 一食あたりの値段は、少し高めですかね。

 と、タスッタさんは思う。

 でも、チェーン店でもない限り、まともな内容を用意しようとしたら、この程度の値段が適切なのかも知れない。

 客層として想定している人たちの、懐具合も考慮した値段設定なのだろうが。

 お昼まで、まだ少し時間があったから、人通りはそんなに多くはない。

 だが、もう少し時間が経つと、どっと人が増えるはずだった。

 さて、どうしましょうか。

 タスッタさんは、改めて考える。


 結局、タスッタさんは角地にあったお蕎麦屋さんに入ることにした。

 こういう場所の蕎麦屋というものがどんな風なのか、興味があったし、それにこの日はなんとなく重い食事を摂るような気分ではなかったためだ。

 お蕎麦屋さん、といっても普段タスッタさんが足を運びがちなお店とは違い、清潔で明るい内装だった。

 お店の入口脇のレジにいた店員さんに一人客であることを告げると、そのままカウンター席へと案内される。

 正午までまだ二十分ほどあったが、テーブル席にはぽつぽつお客さんが入っていた。

 タスッタさんはカウンター席に座ると、そこに置いてあったメニューを眺める。

 冊子になっているメニューとは別に、ランチタイム用の料理を記した紙が各席に置いてあり、それをざっと一瞥したタスッタさんは、お冷やを持ってきた店員さんに向かって、

「この、Aセットをください」

 と告げた。

 いくつかあるランチセットの中でタスッタさんが選んだのは、鳥つけ蕎麦とアヒージョご飯のセットだった。

 もう少しするとお店も混雑するであろうと予測し、そうなる前に退店できるよう、さっと食べられる選択にした。

 無論、メニューにある写真などがそれなりによく、食欲をそそるように撮れていたことも、選択した理由になっているが。

 まあ、お蕎麦ですし。

 すぐに出てくるでしょう。


 タスッタさんが予想をしていた通り、注文した料理はいくらもしないうちに出てくる。

 鳥つけ麺とアヒージョご飯、それに小鉢の香の物がトレーの上に乗って、タスッタさんの前に配膳された。

 見た目は、特筆するべきことがありませんね。

 と、タスッタさんは思う。

 お蕎麦の色が気持ち濃いめ、ということくらいか。

 蕎麦粉の割合が多いのでしょうか。

 などと思いつつ、タスッタさんは箸を取ってその蕎麦をつまみ、汁に潜らせてから啜る。

 ん。

 と、タスッタさんは思う。

 この汁が、ちょうどいい案配ですね。

 味が濃すぎず、薄すぎず。

 出汁と鳥の風味が、いい具合に乗っている。

 その汁と蕎麦をいっしょに啜ると、うん、おいしい。

 鳥肉も、メニュー写真に乗っているほどではないにせよ、かなり大きな塊がいくつか入っていた。

 主役はあくまでこのお汁ですから、脂や風味を出した後のお肉はそんなに自己主張する必要もないんですけどね。

 などと思いつつ、タスッタさんはそのお肉のうちのひとつを箸先で摘まみ、口の中に入れる。

 嚙むとじんわりと鶏肉の味が口の中に広がって、うん、これもいい。

 味といい噛み応えといい、かなりおいしいんじゃないでしょうか、これ。

 と、タスッタさんは思う。

 茶碗に盛られたアヒージョ飯とやらは、どことなくエスニックな香りがするエビ入りご飯だった。

 このエビが、小さい割にはプリプリな食感であり、これも、かなりおいしい。

 お店に入る前に予想していた以上に、充実した内容だと感じられた。

 値段を考えると、コストパフォーマンスはかなりいいと断言ができる。

 カウンター席の前には日本酒の酒瓶がずらりと並び、時間帯によっては飲食の「飲む」方が主体になるお店なんでしょうね、などと予想をしながら、タスッタさんはお蕎麦をまた啜る。

 鴨とかの気取った種もいいですが、鳥もなかなか。

 普通に、おいしいですよねえ。


 いくらもかからずに完食したタスッタさんは、入口のレジで伝票と引き換えに代金を支払い、そのお店を後にした。

 正午までにはまだいくらか時間を残しており、タスッタさんがそのお店にいた時間は合計でも十分少々くらいにしかならない。

 お蕎麦は、そんなに時間をかけて食べるものでもないですしね。

 と、タスッタさんは思う。

 満腹感もちょうどいいくらいで、うん、お昼としては、この程度のボリュームが適当かなあ。

 などとも思った。

 すっとあまり悩まずに入ったお店なのに、予想以上にいいお店でした。

 と、タスッタさんは結論する。



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