表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

142/180

茨城県ひたちなか市。定食屋の刺身定食。

 ここ数日はっきりとしない、ぐずついた天気が続いていた。

 タスッタさんは昨日から那珂湊漁港をうろついている。

 無論、いくつかの用件があったからであるが、その所用も大方終わり、後は帰路につくだけとなっている。

「でも、その前に」

 と、タスッタさんは思う。

 せっかくだから、なにか食べてから帰ろう。

 なにせここは港町、タスッタさんも昨日のうちのお寿司とか牡蠣とか、たっぷりと食べている。

 ここ那珂湊漁港は半ば観光地化していて週末はかなり混雑をするということであったが、今日は平日。

 それもまだ午前中で、はっきりとしない天気ということもあって人通りはあまり多くなかった。

 市場の方は、昨日までにかなり歩き回りましたからねえ。

 と、タスッタさんは市場から少し離れて港公園の周辺をうろついてみる。

 案外、こうした飲食店が密集した場所から少し距離を置いた場所に、ひょっこりとよさそうなお店が見つかったりすることを、タスッタさんはこれまでの経験から心得ていた。

 しばらく目的地を決めずに適当に歩いていると、すぐになかなかよさそうなお店が見つかった。

 小さな店構えであったがその割には駐車場が広めで、どことなく観光客よりは地元客を見込んだような地味な、もとい渋い作りに見える。

 まだお昼には少し間があるし、入ってみましょうかね。

 とそう思い、タスッタさんはそのお店を目指した。


 外観から予想をした通り、その中もこぢんまりとしたお店だった。

 テーブル席がひとつに、小あがりにもテーブルが二つ。

 このうち、小あがりではない方のテーブル席は八脚の椅子が配置されていて、つまりは団体客か混雑時の相席用なのだろうな、と、タスッタさんは予測をする。

 お店に入るなり店員さんと目が合い、一人であること告げるとそのままその大きなテーブルの空いている席へどうぞと案内をされた。

 お客さんの入りはこの時点で半分くらい、どうもそのお客さんたちのやり取りを見ていると、そのほとんどが常連客らしかった。

 どうやら、地元の人がよく利用するお店だ、というタスッタさんの見立ては、完全に的中していたらしい。

 周囲の喧噪を気にすることなく、タスッタさんはテーブルの上に置かれていたメニューを手に取ってその中身を見る。

 さて、なにを食べましょうかね。

 せっかくの港町であるから海産物を頼むことまでは決めていたのだが、具体的に頼む物はまだ決めていなかった。

 焼き魚か、煮魚か、それとも刺身か。

 貝類は、昨日かなり牡蠣を食べたから今日はいいかな。

 あ、エビフライもある。

 かなり立派そうなエビを使っているみたいですけど、ううん。

 少し悩んだ結果、タスッタさんは無難に「刺身定食」を頼むことにした。

 ここの刺身定食は、その日市場に入った魚によってなんの刺身になるのか変わってくる盛り合わせだそうで、それならば一度に多くの種類が食べられるはずだと、そう思ったからだ。


 注文をしてから十分も待たされずに刺身定食を乗せたトレーがタスッタさんの前に出てくる。

 刺身の盛り合わせ以外にあら汁と、それに茎わかめ、漬物が小鉢に入ってトレーの上に乗っていた。

 予想以上に、ボリュームがありそうですね。

 と、タスッタさんは思う。

 とはいえ、メインがお刺身というあまりお腹にもたれない料理なので、特に不安を感じることはなかったが。

 タスッタさんはまずあら汁を一口啜り、その出汁を堪能した。

 かなり、風味が濃い。

 出汁のもととなるあらを、贅沢に使っているんでしょうね。

 と、タスッタさんは、そう思う。

 ここのような港町ならではのおいしさだと思った。

 次にお刺身。

 マグロとイカ、くらいは見た目で検討がつくのだが、それ以外の二種の刺身はなんの魚のものなのか、よくわからなかった。

 どちらも白っぽい切り身で、でも微妙に色合いが異なる。

 どうやらそのうちの一種がメインであるらしく、丁寧にお頭までついていた。

 カサゴ、かな。

 とタスッタさんはそのカラフルなお頭をみて、そんな風に予想をする。

 赤っぽい色合いのお頭で、胸びれがかなり大きな魚だった。

 タスッタさんはまず白っぽい切り身を一切れつまみ、口の中に入れてみた。

 あ、これ。

 と、タスッタさんは悟る。

 ヒラメ、ですね。

 おそらく。

 謎の白身のうち、一種類は比較的なじみのあるヒラメらしかった。

 あるいは、その近縁種か。

 そして、このお頭の方が。

 などと思いながら、もう一方の白身を口に入れてみる。

 なんのお魚なのか、よくわかりませんね。

 と、タスッタさんは思う。

 でも、旨味はかなり強い。

 あまり大きな魚ではないので、量こそあまり多くはなかったが、それゆえになおさら贅沢に感じた。

 なんというお魚なんでしょうか。

 と疑問に思いながら、タスッタさんはその切り身を味わう。

 ほどよく脂が乗り、しかし、くどくない。

 多分、これまでに食べた経験がないお魚だと思うのですが。

 新鮮だからか、お刺身はどれもおいしかった。

 マグロやイカまで、普段食べている物と同じ味わいでありながら、歯応えや味がまるで違う。

 新鮮ということは、こういうことなのか。

 と、タスッタさんは思う。

 その新鮮なお魚が、四種類も。

 いえ、イカはお魚ではないですけど、魚介類のお刺身が四種類も。

 と、タスッタさんは心の中で訂正をする。

 なんと贅沢な。

 そんな思いを噛みしめながら、タスッタさんは食事を続けた。

 ただひたすら堪能した。

 といっていい。

 なぜに新鮮なお刺身はここまでおいしいのか。

 定食をすっかり完食したタスッタさんは、そんな風に思う。

 食事を終え、レジで会計をする時に、タスッタさんは例の尾頭つきは、なんという魚だったのかと店員さんに訊ねてみた。

 店員さんは、

「ホウボウです」

 と簡潔に答えてくれる。

 ホウボウといわれてもタスッタさんはピンと来なかったが、後で調べてみるとやはりカサゴの仲間であるらしかった。

 タスッタさんが去るその頃には、すでにお昼時に入っていたので、お店の中はほぼ満席になっている。

 タスッタさんは満ち足りた気分でそのお店を後にした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ