表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

134/180

岡山県倉敷市。うどん屋の揚げ餅ぶっかけうどん。

 よく晴れた、風の強い日だった。

 この日、タスッタさんは広島県の倉敷市というところに来ている。

 少し前に記録的な大雨による水害が起こった場所、のすぐ近くで、しかしこの周辺は被害はなかったそうだ。

 しかし地名がニュースなどで連呼されたおかげで、観光客が激減し、地元経済は確実に打撃を受けているとか。

 この土地に来てからタスッタさんは、地元の人たちからそんな内容を何度か聞かされていた。

 距離的にはさして離れていないのに、自然災害だとそういうこともあるんだなとタスッタさんは感心した。

 それはともかく、少なくともこの近辺では災害以前と変わらない日常が今も営まれている。

 ともかくも倉敷駅前に関していえば、平日の昼間なのにそれなりに人通りが多かった。

 あくまで地方都市としては、という程度の賑わいではあったのだが。

 さて、どうしましょか。

 と、タスッタさんは例によって考える。

 時刻は午前十一時を少し回ったところ。

 駅前の商店街なので、入るべき飲食店にも困ることはない。

 問題となるのは、いつものように、

「なにを食べるか?」

 なのであった。

 少し前までの酷暑は一段落しているものの、この日もかなりの夏日ではあった。

 ただ、風が強いために多少、体感としては涼しくも感じるのだが。

 いずれにしろ、こういう日はあまりこってりとした、しつこい料理は遠慮したいかなあ。

 と、タスッタさんは思う。

 さっぱりとしていてしつこくなく、すっと食べ切れるようなもの。

 となると、麺類ですかねえ。

 と、タスッタさんは考える。

 この夏は暑い日が続いていたこともあって、タスッタさんは昼間に麺類をいただく機会が多かった。

 立ち食いの物なども含めると、どこへいっても蕎麦屋などは比較的見つけやすく、そこで冷たい蕎麦などをつるっと食べて済ますことが多かったのだ。

 その分、朝晩のメニューで栄養バランス的な配慮をしなければならなくなるのだが。

 今日もまた、それでもいいかな。

 とか、タスッタさんは思い始める。

 食欲がなくてもさっ食べることができるのが、そうした麺類のいいところだった。

 そんな気分で駅の周辺を散策してみると、よさそうなお店はすぐに見つかってしまった。

 黄色い丸を背景にかなの「ぶ」が大きく書かれている看板が、いやでも人目を引く。

「ぶっかけうどん、ですか」

 誰にともなく、タスッタさんは呟く。

 こちらは西の方だから、蕎麦よりはうどんの圏内なのだ。

 看板その物もかなり大きく、あれでは遠くからでもお店の所在地が明瞭にわかってしまうのだろうな。

 と、タスッタさんは思った。

 老舗か有名店なのか。

 案外、地元では有名な、格式のあるお店なのかも知れない。

 とりあえず、あそこに入ってみますかね。

 とか思いつつ、タスッタさんはそのお店に向かって歩き出す。


 入ってみると、決して大きくはないが清潔な、感じのいいお店だった。

 簡素なテーブル席が並んでいて、こんな時間にしては、お客さんも入っている。

 多分、地元で評判がいいお店なのだろうな、とタスッタさんは感じる。

 立ち食いでも、最近よくあるセルフサービス式のお店でもなく、普通に注文を通すタイプのお店であるようだ。

 店員さんに一人客であることを告げると、

「どこでも空いている席にどうぞ」

 といわれた。

 タスッタさんは空いていたテーブル席に座り、メニューを見た。

 料理の種類というかトッピングによって差別化をしているので、品目はそれなり多いようだ。

 だが、どうやらここの売りはぶっかけうどんであるらしいし、シンプルにそっちを注文しますかねえ。

 と、タスッタさんは考えながら、メニュー表を眺めていた。

 そして、ある場所でその目線が止まる。

「揚げ餅」

 と、タスッタさんは呟く。

 こちらではメジャーなトッピングなのだろうか。

 少なくともタスッタさんは、これまでうどんの具として揚げ餅を使った料理を見たことがなかった。

 これを頼んでみましょうか。

 軽い気持ちでタスッタさんはそう思い、店員さんに声をかける。


 三分くらいだろうか。

 とにかく、そんなに待たされるということもなく、注文した料理が出て来た。

 揚げ餅以外にも天かすがどんぶり一杯に広がっていて、その上に玉子と海苔、ねぎ、しょうがなどが乗っている。

 わさびも、どんぶりのヘリに着いてた。

 好みの分量をつゆに溶かし入れて、ということなのだろう。

 少なくとも見た目は、かなりオーソドックですね。

 とか思いつつ、タスッタさんはどんぶりの中に箸を入れて軽くかき混ぜた。

 それから麺を軽く摘まみ、まずは一口啜ってみる。

 ぶっかけであるがゆえにつゆの量は少なめだったが、そのかわりに味はかなり濃い目だった。

 甘辛い、というのだろうか。

 蕎麦屋さんのつゆをさらに濃厚にしたような冷たいつゆが麺によく絡んで、なかなかおいしく感じる。

 麺は太すぎもせず細すぎもせず、茹であがったばかりだから半透明で、歯応えがかなりしっかりとしている。

 この麺が天かすやつゆと絡むと、実にいい案配となった。

 うん。

 タスッタさんは、心の中で頷く。

 シンプルだけど、これはかなり。

 おいしい。

 次にタスッタさんは、揚げ餅を一口食べてみた。

 揚げたてなのか、かなり熱い。

 そして、よく伸びる。

 かなりしっかりとしたお餅ですねえ。

 と、タスッタさんは思う。

 予想していた以上に、食べ応えがある。

 この揚げ餅だけでもいいのではないか、とさえ、思った。

 その熱い揚げ餅と冷たいうどんを交互にいただく。

 うどんに揚げ餅。

 どういう組み合わせかとも思ったけど、これはこれで。

 うん。

 十分に、ありですねえ。

 そんなことを思いながら、タスッタさんは完食した。

 もともと、食べるのに時間がかからない料理でもある。

 値段の割には、満腹感と満足感がある食事だった。

 いい料理でした。

 と、タスッタさんは思う。

 コストパフォーマンス的には、かなりいいお店ですね。

 この値段で、ここまでの満足感を得られる料理というのも少ない。

 シンプルであるがゆえにごまかしがない、素直ないい料理だと。

 そんなことを思いながら、タスッタさんは勘定を済ませるために席を立つ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ