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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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115/180

奈良県奈良市。倉庫カフェと生ハムとチーズのパンケーキとビール。

 その日、散策中にタスッタさんは、川沿いにぽつんと立っている、白い倉庫風の建物を見つける。

 タスッタさんは出先であろうが時間があると散策をしたくなるたちで、この日の昼下がりも、たまたま予定が先方の都合によりキャンセルされたため、半日ほど時間が空いてしまい、そのまま当てもなくふらりと散策を楽しんでいた。

 遠目では倉庫かなにかのように見えたのでさして気にとめることもなかったのだが、しばらく川沿いに歩いて近くに来てみると、駐車場を備えた飲食店であることに気づく。

 あ、こんなところに。

 と、タスッタさんは思った。

 しっかりとした料理屋というよりは、軽食メインのカフェかなにかだろうな、と、タスッタさんはそう予想をする。

 ときおりこうした、周囲にあまり飲食店がないような地域に隠れ家的に営業しているお店というものが、存在していることを、タスッタさんは経験上知っていた。

 さらに近寄って見ると、予想通りにそのお店はカフェであるらしく、駐車場もほとんど塞がっているせいきょうぶりだった。

 特にお腹が空いているわけでもなく、もしも満席で入れなかったらそれでもいいか、くらいの軽い気持ちで、タスッタさんはそのお店の扉を潜る。

 お店の中のテーブル席は案の定満席に近く、場所柄のせいか時間帯のせいか、ほとんどが中年以上の主婦らしい団体客で埋まっていた。

 店員さんがすぐにタスッタさんに気づき、まず人数を訊かれたのでいつものように一人だと答えると、そのまますぐにカウンター席に案内される。

 カウンターといっても座席同士の距離がかなりあり、荷物置き場もありでかなりゆったりとくつろげる空間に設計されていた。

 そのカウンターに座りながら、タスッタさんは、

「うん。

 ここは、くつろげるお店のようですね」

 と、心の中で一人頷く。

 次にメニューを開き、さてなにを頼みましょうかと本格的に吟味をはじめた。

 昼食は二時間前に終え、しかし夕食を食べるのにはまだ早すぎるという半端な時間帯である。

 本格的なお食事よりも、デザート的な物でなにか手頃なのはないか。

 そんなことを考えながらメニューのページをめくっていたタスッタさんの手が、あるところで止まった。

「パンケーキ」

 タスッタさんは、小さく呟く。

 この店はパンケーキ系のメニューも何種類か用意されており、そのほとんどはいわゆるスイーツ系の甘い料理だったが、それ以外のパンケーキがあったのだ

「生ハムとチーズのパンケーキ、ですか」

 メニューの写真はかなり彩りがよく、かなり食欲をそそる物だった。

 この手のお店のパンケーキが見栄えとコスト重視であり、実際に頼んだ物が出てくるとその大きさにがっかりする、という経験を、タスッタさんはこれまでに何度かしている。

 それでもいいかな、と思いつつ、タスッタさんは店員さんを呼んで、その生ハムとチーズのパンケーキを頼んだ。

 その時に、

「お飲み物はなんにしますか?」

 と確認され、そろそろ熱くなってきたから冷たい物を頼みますかね、という思考がふと頭をよぎり、反射的に、

「ビールをお願いします」

 と頼んでいる。

 こういうお店で本格的に飲むつもりはなかったが、散歩の途中で喉を潤すくらいならばいいかな、と、タスッタさんはそう判断したのだった。

 なにより生ハムとチーズでは、ソフトドリンクよりはビールの方がよく合うような気がする。


 パンケーキというのは注文してから焼き上がるまで二十分前後待たせるようなお店もざらにある料理で、今回もタスッタさんはどうせ暇だから待たされてもいいと覚悟をした上で注文をしている。

 しかし予想外に早く、せいぜい五分ほどで冷たいビールのグラスといっしょに焼き上がったパンケーキが出てきた。

 あ、早いとタスッタさんはまずそのことに驚き、次いで、目の前に置かれた皿、その上のヴィジュアルに感嘆する。

 メインのパンケーキ以外にもトマトなどの野菜がお皿の脇の方に配置され、メニューの写真で見た通り、かなりおしゃれな仕上がりだった。

 パンケーキの上には薄切りの生ハムが波打った状態で盛られていて、こちらの方も大変に見栄えがする。

 外見だけだと、サラダかなにかのように見えますね。

 とタスッタさんは思い、まずはグラスを手にして一口、冷たいビールで喉を潤した。

 それからフォークを手に取り、パンケーキの上に厚く盛られた生ハムを食べてみる。

 うん、ハム。

 特別に上質というわけではないが、まずまず普通においしいハムだった。

 これがまた、ビールによく合う。

 ハムの下にはレタスが敷かれており、パンケーキやチーズはどうもその下にあるらしい。

 タスッタさんはナイフも手にしてパンケーキを一口大に切り分け、上から下までを一気にフォークで刺して口の中に運ぶ。

 ハムと野菜、パンケーキ、チーズの味わいが咀嚼をするごとに口の中に広がった。

 あ、これは。

 と、タスッタさんは思う。

 それぞれ単品で食べるよりは、こうしていっしょに食べた方がいいかも。

 そうして一緒くたに咀嚼をすると、それぞれの素材が味を引き立て合う。

 そんな気がした。

 やはりこれは。

 と、タスッタさんは思う。

 パンケーキという料理から連想する物とは、少しニュアンスが違うお料理であるような気がします。

 確かに土台にパンケーキは使われているのだが、そのパンケーキは決して主役ではなく。

 しかし、そのパンケーキがなければこの一品は成立しない、という絶妙なバランスの上に成立しているお料理だった。

 ハムもですが、チーズがかなりボリューミーですね。

 と、タスッタさんは思う。

 ビールを頼んでちょうどよかったかな。

 冷たいソフトドリンクだと、このお料理の重さにはちょっと似合わないような気がします。

 ビールといっしょに食べると味や風味が引き立て合って、ちょうどいい。

 そんな料理だとタスッタさんは思い、そして自分の見込みが間違ってはいなかったことについても若干誇らしく思った。


 そうしてタスッタさんが食事を楽しんでいると、また一組お客さんが入って来た。

 三人組のお客さんたちだったが、予約していた者ですがと名乗るとすぐに店員さんが奥の部屋へと案内する。

 驚いたのは、そのお客さんたちが三人とも、リードをつけた小型犬を連れていたことだ。

 ああ。

 と、タスッタさんは思った。

 ここは、ペットの同伴も大丈夫なお店なんですね。

 そうしたお店があるとは聞いたことがあったが、ふらりと入ったお店がたまたまそうした対応をしているお店である可能性はまだまだ少ない。

 そのお客さんたちが連れていた小型犬も、無駄吠えなどすることもなく、黙然と飼い主に連れられてそのまま奥の部屋へと入って姿を消した。

 郊外のお店だから出来ることなんでしょうね、とも、タスッタさんは思う。

 他のお客さんたちはペット同伴のお客さんたちが来たことについても特に気にした様子もなく、そうしたことも含めて雰囲気のいいお店だった。

 今日のような平日の午後、ゆっくりとした時間を過ごすのにはいいお店なのかも知れませんね、と、また一口ビールをあおりながら、タスッタさんはそんな風に思う。


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