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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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101/180

北海道札幌市北区。カレー食堂のチキンカレー。

 その日の札幌はよく晴れていた。

 積雪はあちこちに残っているが、歩道はきれいに除雪がしてあって歩くのにほとんど支障はなかった。

 地元の人たちは雪のことなど目に入っていない風で歩いているのだが、タスッタさんは寒くて仕方がない。

 慣れと、それに服の密閉度からして本州で売っているものとは根本的に違っているのだということを、タスッタさんはあとで知った。

 ここは札幌の中でも地下鉄南北線北18条駅という駅を降りて少し歩いたあたりなのだが、土地勘のないタスッタさんにはどういう性格の場所であるのか、見当がつかない。

 ビルが立ち並んでいる風景は、本州の町並みとさして変わらないのだが。

「大学病院、ですか」

 信号機に取り付けてある標識を見て、タスッタさんはさっきからすぐそばに見える広大な敷地が大学のものであることをようやく知った。

 その構内に、大学の附属病院も存在しているらしい。

 かなり大きな大学なのだろうな、と、タスッタさんは漠然とそんなことを想像する。

 当然のことながらこの町に住む人々はここで自分の生活を送っているわけであり、それは堅実な地に足の着いた生活であるはずだった。

 一年のうちほとんどの時間を旅人として過ごしている自分とは違うのだ、そんなことをタスッタさんはふと思った。

 そして、

「こういう寒い日には、やはり体が暖まるものを食べたいものですね」

 などと脈絡もなく考える。

 寒空の下、そんなことを考えていると黒いひさしの下に赤い壁面のお店が目に入った。

「カレー食堂、ですか」

 おそらくはカレーの専門店なのだろう。

 今日のような日には、辛い物もいいかも知れない。

 そう考えたタスッタさんは、さっそくそのお店の扉をくぐる。


 外見から想像をするよりも店内は広く感じた。

 カウンター席、テーブル席の他に小上がりまである。

 店に入ったタスッタさんにすぐに店員さんが気づいて、

「カウンターの空いている席にどうぞ」

 といってくれた。

 タスッタさんは素直にテーブル席に腰掛ける。

 まだお昼前だというのにかなり客さんが入っており、空席は少なかった。

 人気のあるお店なんでしょうか?

 と、タスッタさんは疑問に思う。

 すぐに先ほど声をかけてくれた店員さんがお冷とメニューを持ってきてくれる。

 店員さんはこの女性とカウンターの中で調理をしている男性の二人だけで、年格好からいっておそらくは夫婦なのだろうな、と、タスッタさんは想像した。

 その二人きりの店員さんはどちらも忙しく働いていた。

 タスッタさんはメニューに目を落とす。

 うん、やはり、カレーばかりだ。

 辛いものを求めてこのお店に入ったタスッタさんにしても、それで不満はない。

「辛さが選べるシステムですか」

 カレーのお店にありがちなあれだった。

 さて、どうしましょうか。

 タスッタさんも辛いものはそれなりに好きなつもりだが、だからといって極端に辛いものが好きなわけではない。

 うん。

 ここはやはり無難に、5辛くらいで。

 あとは、どのカレーを選ぶべきか。

 タスッタさんはしばらくメニューの上に視線をさまよわせてから、チキンカレーを頼むことにした。

 無難といえば無難な選択だった、奇をてらったものが必ずおいしいという根拠も別にない。

 タスッタさんは店員さんに声をかけて、注文を伝える。


 チキンカレーはすぐに出て来た。

 タスッタさんはまず一口お冷を飲み、スプーンを手にしてゴロゴロと野菜がいっぱい入っているルーといっしょにご飯を掬って口の中に入れる。

 まずよく煮込まれた野菜の味が口の中にぱっと広がり、続いて辛さがやってきた。

 辛いことは辛いが、角が立った辛さではなく、野菜の旨みに寄って刺激が押し包まれている、かなり優しい辛さだった。

 ああ、日本的なカレーだな。

 と、タスッタさんは思う。

 ルーはスープカレー風ではあるが同時にドロリとしたとろりも感じ、なにより、素材の味をいちいち大事にしている。

 インド風のエスニックなカレーとは違い、辛くても、どこか優しい。

 なにより、トロトロになるまで煮込まれた具材の味が、溶け合って渾然一体となっていた。

 スパイスの風味よりも、そちらの味の方が印象に残る。

 辛いけど、けっして辛すぎず、うん、やはり日本風のカレーだ。

 と、タスッタさんは思う。

 よく煮込まれたチキンの味も、想像通りにおいしい。

 タスッタさんはすぐに汗をかき、ハンカチで顔を拭いながら、チキンカレーを食べ続ける。


 チキンカレーを完食したあと、タスッタさんはマンゴーラッシーを追加で注文して、一息ついた。

 まだ辛さが残っているような気がする舌の上を、わずかに酸味がありながら甘いラッシーで洗い流していく。

 カレーを選んだのは正解でした。

 とか、タスッタさんは思う。

 やはり寒い日には、食べていて汗をかくような物を食べたくなる。

 カレーとか、お鍋とか。

 そうだ、今日の夕食はお鍋にしましょうか。

 一人でもお鍋を注文できるお店を探して。

 さっき昼食を食べたばかりだというのに、タスッタさんはそんなことを考え始める。



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