135話 人の縁は巡り合わせ
港での路銀稼ぎも最終日となった。
長いようであっという間だった気もする。ひと悶着あったからかな。仕事仲間との絆が随分と深まり、ハチが去るのは寂しいと皆が言ってくれる。
そんなことを言われてしまえば、俺だって寂しく思う。もう一週間延期しちゃおうっかなぁなんてことも考えたが、それでは本末転倒だ。俺は実家に、そして愛するノエルの元に早く辿り着くために、ここでまとまったお金を稼いでいるのだから。
悲しいが、人生は一期一会。別れの寂しさよりも、出会えた喜びをしっかりと噛み締めるとしようじゃないか。きっと、人生はそう考えた方が幸せに違いないから。
「ハチ君とも、お別れとなるのか」
「ロベール監督官! 朝から御早いですね」
炊き出しの朝食を食べ終わり、俺が提案したみんなで行う朝の体操を終えた頃、港の監督官ロベール様が姿を現した。
お忙しい方で、あまり現場に姿を現すことのない方だ。特に、こんな朝方に姿を見せたのは初めてだった気がする。
「今日は君の最終日だと聞いていたからね。重要戦力であるハチ君が抜けるんだ。監督官としても、一声かけておくべきだろう?」
「たかが俺みたいな小物に時間を使うべきじゃないですよ。後々しわ寄せがきて、徹夜で仕事、みたいなことになっちゃいますよ」
「ははっ、随分と詳しいね。頻繁にそうなりがちだよ」
二人でしばしの談笑。といっても、船着き場の仕事は忙しいし、ロベール監督官はもっと忙しい。
数分間の何気ない会話をし、別れのあいさつ代わりとさせて貰う。本当に良くして貰ったからね。
「ハチ君『路銀を稼ぎに来た』という君の言い分のためにも、給金を受け取るまではいなくならないでくれよ? でないと、既に隠しきれていない君の正体に更なる憶測が大量に飛び交ってしまうぞ」
「はいはい、いなくなりませんよー」
誓って、ない。
俺は本当に路銀を稼ぎに来たし、2週間休みなしで働いたのだ。路銀目当てでしかないし、いなくなる理由があろうはずもなかった。金は、絶対に貰う! 何があってもね!
「結構弾んだ額を用意しているつもりだ。君の分は多めに入れているが、皆同意の上である。本当に受け取る気があるのなら、遠慮なく受け取ってくれ」
「本当に頂きますから。今日の17時、仕事終わりと同時にきっちりと徴収に向かいますので、ご覚悟を」
「ははっ。頼むよ。唐突なお別れなんて寂しいからね」
このように良くしてくれるのはロベール監督官だけではない。
船着き場の皆からも、まだ長旅になるのなら、と保存食や旅で役に立つ小道具なんかを貰った。持ち切れないと断っていると、丈夫なキャンバス生地のバッグまでいただいた。肩にかかる部分が広く頑丈な布で作られているので楽に背負えて、大量に物が入る。なんとも使い勝手の良いものだ。
何から何まで……。俺はただ力仕事して、権力に溺れたガキんちょを監督官殿に告げ口しただけなのに。皆に必要以上に良くして貰える。本当に運だけは良いんだよね、俺って。
「ハチ、ちょっとこっちへ来てくれ。見せたいものがある」
昼飯前にそう告げて呼び出しをしたのは、髭面のおっちゃんラザルスさん。この港で最も人望があると言っても良い人物だ。俺も沢山世話になったし、多分俺に何かくれようとしているのがわかったので、今運んでいる荷物を倉庫に置き次第行くと伝えた。
案内されたのは、海賊から港を守るために作られた砦の見張り台跡。今は別の立地の良い要塞が使われているらしい。高い丘に建設されたもので、随分と階段を登った。俺は楽々だったが、一般の人じゃ登るだけでへとへとになる長い道のりだ。驚くことに、ラザルスさんもまったく息が上がっていない。
そこへ到着すると、港と海が一望できる高台だった。
「ハチ、見ると良い、この景色を」
そこからの景色は、ちょうどお昼の太陽の光が、港へと垂直に注がれているのが見えた。
いつもは濃い青に染まっている海も、ここからだと陽で水面が白く光る。出入りする帆船の白帆もまたまぶしく、風を受けて大きく膨らみ、強力な推進力となる。船が進むたび、白く輝く海面に長い一直線の航跡が刻まれる。
桟橋では荷揚げが続いていた。仕事仲間たちが米粒の様だ。
滑車が回り、木箱がゆっくりと船上へと持ち上がる。縄を引く水夫の背中の汗が反射し、ここまで光りが届いた。
少し離れた商業区の石畳では、港から運ばれた荷車が行き交い、商人が声を張り上げる。どこもかしこも、皆活気に満ち溢れている。
風が吹き上がってきた。潮の匂い。
それに混じる、焼いた魚と貝の匂い。
今朝も沢山食べたというのに、もう腹が鳴りそうになる。
「どうだ」
隣でラザルスさんが嬉しそうに言う。
俺はすぐには答えず、ゆったりとこの景色をもう少し静かに味わう。
海は広く、船は多く、人は忙しい。全ての営みがこの世界を作り上げていると考えると、頭の下がる思いだ。
「……綺麗だな」
素直に、口から出た感想だった。
「そうだろう。美しい街だ。そして、何よりこの港が好きだ。これから先もずっとこうあって欲しい。何年先も、何十年先も、出来れば何百年先でも……」
俺はちらりとラザルスさんの顔を見た。
彼の目は港へと注がれて、俺の視線には気づいていない。
「ラザルスさん、あんた頑丈な体をしているね。オルカに殴られた部分も既に完治したみたいだし、こんな長い階段を登っても、息一つ切らしていない」
「ははっ、ハチも知っているだろう。港の荷運びの仕事をしていりゃ、自然と体も鍛えられる。あそこに頑丈じゃない男なんて、一人もいないわい」
「……それもそうだ」
……そうだね。その通りだけどさ。
「一週間に一度はここにやって来て、ゆったりと癒しの時間を過ごす」
「仕事仲間も連れて来てあげるのか?」
「いいや、ここに友に来た人間は、お前さんが二人目だ」
「ありゃ。勿体ない。こんな綺麗な場所なのに」
「人が多くなると、うるさくなるじゃろう。それに、こんな高台まで来るのも大変だからな」
確かにね。俺たちは楽々登ったが、普通なら着く頃には息が切れて、景色どころじゃなくなる。
もうお昼時で、みんなは昼食を食べている頃だろうけど、この景色を見られたことを考えれば一食抜いたくらいは安い代償だ。どうせ夕飯で取り返す!
「もう一人って誰だったんだ?」
「ん? ああ、もう10年以上も前のことになる。領主の一人娘ポルカ様じゃよ」
「ほう、珍しい名が」
「もしや知り合いだったりするのか?」
知り合いかどうかか。
王立魔法学園の試験で出会い、学園でも少し付き合いがあった。
それほど親しくは無いし、その細い縁も既に切れたと思う。けれど、まあ一応知ってはいるか。
「奇妙な縁でね。一時期、関りがあった」
「それまた不思議な。あの子がこの街にいた頃、ワシに負けないくらい港が大好きだった。朝から晩まで、何が楽しいのかずっと港を一人走り回っておっての。港で働くワシらの癒しだったよ」
「へぇー。イメージ通りだな。あの変人女なら一晩中走り回っていても頷ける」
「素晴らしい日々だったのだが……少し悲しい事故もあった」
「事故?」
自然と吸い寄せられる美しい港の景色だが、気になる話にまた視線がラザルスさんへと向いた。
何かをためらっているようで、返事がない。
「やはり、この話はやめよう。あまり思い出したくない話だった。すまんな、話し始めたのはこちらだというのに」
「別にいいよ。金になりそうな話じゃないので、全然許す」
「ははっ。面白いやつよのぉお前さんは」
んーと腕を伸ばして伸びをし、この美しい景色と高台故の綺麗な空気を体に取り込んでいく。ここも、今日で最後か。まっ、こういう美しい景色も一期一会ってことで。
「お前さんに覚えておいて欲しかったんだよ。これから何があっても、港がどうなってしまおうとも、この景色を覚えて、伝えてくれる人物が居て欲しかった」
「何、言ってんだか。こんな美しい街、簡単になくなるかよ」
控えめに言っても、この二週間は素敵なものだった。
人は活気に満ちているし、気性も明るい。皆がここでの生活を気に入っている証だ。そんな人に愛された街が、簡単に衰退するはずもない。
どんな困難があろうとも、この港を愛している皆が支えることだろう。
「……そうだな。アサギリの街はこれからも、ずっとずっと残るはずだ。ワシは心からそう願っておる」
なんだかしみじみとした雰囲気になって来たタイミングで、俺の腹が盛大に鳴る。
グー――――! と欲望たっぷりの音がこの美しい高台に響いた。
ごめん、一食抜くことすら、この体は許しちゃくれないらしい。めっちゃ腹減った。
「すまんな、ハチ。こんなところに付き合わせたばかりに、昼飯を食べ損なってしまった」
「別にいいよー。この後商業区の焼き立てバゲットを口に咥えながら仕事するから」
「頼もしいな。喉を詰まらせるなよ?」
「あいよー」
その会話を最後にし、穏やかな雰囲気のまま、俺たちは高台を後にした。
午後も働くぞーと息巻いて港に戻ると、俺はそこで驚きの光景を目の当たりにすることとなる。
銀ピカに光る鎧を見に纏った10名を超える騎士たちに囲まれた美しい女性がいた。港に似つかわしくない存在。そしてその美しい顔にしばらく、ん? みたいな感じで違和感を覚えていたのだが、彼女が俺の顔を見て目を潤ませたとき、その大物を虜にしちゃいそうな華憐さに記憶が刺激された。
「ああっ、ミリアちゃん!?」
「ハチ様!」
たどたどしいけれど、それでもしっかりと自身の脚でこちらへと歩み寄って来る。彼女はずっと脚が不自由だったにも関わらず、今では一人で歩けるようになっていた。一体、どれほどの鍛錬と心力で、その生まれ持ったハンデを克服してみせたのだろうか。彼女の強さには、会う度に感心させられる。
俺から歩み寄ることもできたのだが、彼女がそうして欲しくないのがなんとなくわかったので、ただ静かに待った。
俺は二年半も姿をくらましていた。砂の一族でお世話になった期間も考えると三年弱も生死が分からない状態だったろう。
ミリアちゃん程の大物がなぜこんな小さな港町にいるかは知らないが、シロウの友人である俺が生きているのを喜んでくるのは、素直にこちらも少し感動した。
ようやく俺の元へと歩み寄ったミリアちゃんは、脚も限界だったのだろう。勢い良く俺の胸へと飛び込んで来た。
優しく抱きかかえ、再会の喜びで彼女をクルクルと振り回した。親友の可愛い妹ちゃんとの再会だ。少しくらいはしゃいじゃってもいいだろう。
成長したのは俺だけじゃない。むしろこのくらいの年齢だと女性の方が顕著に成長する。ミリアちゃんはもともとクラウスや王族を初め、大物キラーの美女だったのだが、三年も経ち、その容姿の美しさは更に際立ったものになっていた。
こんなに美しくて儚い雰囲気を持っていたら、王都にいる有象無象の令嬢じゃ彼女に勝てないだろうね。ミリアちゃんは将来の王妃様候補かな? そうじゃなくとも、まだまだ彼女は大物になる予感がしている。
「ハチ様、お会いしとうございました。ずっと、ずっと、姿を消していた三年間、ずっとお会いしとうございました!」
「俺もそうだよ」
ミリアちゃんは昔から高価なプレゼントを贈って来る羽振りの良いお嬢さんだ。だからって訳じゃないが、大好き。
クルスカ家は、今じゃ王国屈指の金持ち貴族。しかもシロウもミリアちゃんも羽振りが良く、気前の良い人物。俺はそういう羽振りの良い大物が、心の底から大好きである!!
まあ、そんなことがなくたって、親友の妹ちゃんだもの。大好きに決まっている。
「全く、会わないうちに益々綺麗になる。これはシロウも大変だね。ミリアちゃんに俺のような変な虫がつかないように、日々警戒しっぱなしだろうさ」
実家の観葉植物のように、しっかりと手入れが必要なか弱いミリアちゃん。一人で歩けるようになったとはいえ、シロウは兄としていろいろ気苦労していることなんてこと、容易に想像できる。
「ありがとうございます。ハチ様に、その様なことを言って頂けるだなんて。ハチ様、あなた様とお話したいことが、山のようにございます。急な再会で私の頭が混乱して、逆に何を話して良いかわかっておりません」
「慌てることは無いさ。俺たちの関係はこれからも続く。話したいこと、幾らでも話したらいい」
「……そうですよね。そうですね! 私は、あなた様に大事な要件を告げなくてはなりません。今こそ勇気を。私は……私は、ハチ様にずっと、ずっと――」
なんだろう?
ミリアちゃんが顔を赤らめて、何かを言い淀んでいる。
彼女もお腹が空いたのだろうか?
まあ、今から大量にバゲットを買ってくるので、半分くらい分けてやっても良い。
彼女がようやく決心して、口を開いた瞬間、異様な音がした。
というより、港の自然な音が止み、静寂故の普段聞き慣れない些細な海の音が聞こえる。
船の揺れがぴたりと動きを止め、波が消え海面が滑らかに。次いで、風も止む。
目の前の青き大海が、中央から裂けた。
一直線に。海が、左右に押しのけられる。
海水が、一本の透明な道に遮られるように二つに分割された。
海を覗けば、割れ目の底の砂が見えた。
異常を起こす海水に、魚も驚き海水を飛び出し桟橋に着地した。割れた隙間へと巨大船が一隻傾き、港に驚きを届け、静寂を割った悲鳴が上がる。
逃げ惑う人々の中、俺とミリアちゃんもその割れた海の方向を見続けた。
海を割って出来た通路の遥か先に、一人の影が見える。まだ遠いが、確かにいる。
人の形をしているが、人じゃないことは明白。
存在が発する圧は、まだ遠いその場所からも強く感じられた。
やべぇ。
「神!?」
たぶんミリアちゃんの護衛である騎士が口にしたワード。彼らも海に出来た通路を渡る存在に気づき、そして神だと認識したらしい。
「海を割るほどの力……。おそらくカナタ様と同じ規模、建国の神! ミリア様、今すぐお避難を! 今からでも間に合うか怪しいですが、本当に建国の神が侵略してきたのであれば、建国以来の大事件になります!」
騎士が強い口調で事態を説明する。
ミリアちゃんも、ほとんど自分の頭で理解していたからだろう。俺の服を掴む手が、自然と力強くなる。顔色も青ざめていた。
「……わかりました。急ぎ、全力で退避致しましょう。さあ、ハチ様も一緒に逃げましょう。馬車を用意し、王都にも急ぎ報せを!」
ミリアちゃんが俺の手を取り、騎士たちの元へと歩み寄ろうとする。
騎士たちも急ぎでこちらへと駆け寄ってきていた。
けれど、俺はミリアちゃんの手を軽く解いた。
「え……ハチ様?」
「すまないな。ミリアちゃん」
「はい?」
「俺は一緒に行けないや」
「……そんな」
建国の神、カナタ様レベルの神が迫っているって?
海を真っ二つに割って登場って?
クリマージュ王国建国以来の危機だって?
関係ないんだよ。だって、俺。
17時にお給金受け取る予定だから!
俺、港離れられないんだわ。
後、4時間くらい働かなきゃだし。
「なぜですか。相手は建国の神相当の侵略者。狙いもわからず、こちらは何も準備をしておりません。それに、これはあなた様が責任を負う事態でもないのです! 王国をあげて対処するべき問題です。どうか、どうかハチ様、ミリアと一緒にお逃げ下さい!」
「……ごめん」
俺、やっぱり行けないよ。
でも、大丈夫。俺には“秘策”があるんだぁ。というより、港は多分大丈夫だと思われる。じゃなきゃ、俺もすぐに逃げている。小物は何より自分の身が可愛いものだから。
「どうして! どうしてあなたはいつも、神から逃げないのですか! どうして、いつも! あなただけが! ……はっ、もしや全てがわかった上でこの地に?」
「その通り。俺は全部わかっている」
自分が安全だということを! かなり冷静です。
「ミリアちゃん、もう話はここまでだ。君は大事をとって逃げなさい。ここは任せて。俺は予定通り、この後ノエルに会いに行く。全て順調だ」
そう告げると、ミリアちゃんは軽く涙を流し、あきらめたように脱力した。その身を気遣った騎士に連れていかれ、すぐに姿が見えなくなる。
俺のことを心配してくれるどこまでも優しい女性。やっぱり大物に愛される女性は、博愛の精神が凄まじい。ミリアちゃん、幸せになりなよ。
やれやれ。
なんの因果か、また神か。
それも他国の、建国の神レベルだって?
とんでもないのに、遭遇しちまったよ。路銀を稼ぎたいだけなのに、なんでこんなことに。
みんなが逃げ惑うが、俺は港にどっしりと座り込んだ。
怖くないのかって? これにはからくりがあるんだなぁ、実は。
肘をついて横にごろんとなって寛いでいると、カツカツと鎧の音を立てて歩み寄る男の、力強い足音が聞こえる。足音でなんとなくわかる相手の職業。
首を少し向けてみると、如何にも強そうな軍人さんがいるではないか。
はじめ、港を守る兵かと思っていた。昔は良く海賊が出ていたらしいからアサギリの街が雇っている兵なのかと。
しかし、立ち振る舞いからして、一流の軍人。一流なんて表現は失礼かもしれない。最上級と表現した方が近い。そして、顔に見える片目の光を奪ったであろう縦に伸びる傷口を見て、この人が誰か判明した。
なんと。
名将アルノー・ブレザックが俺の後ろに控えていたのだ。
なんだよ。王国はどうやら、敵国の侵略を予期していたらしい。
王国正規軍の元将軍。リュミエール王子が将軍に就任するまで、王国正規軍の総大将だったお方だ。
もともと“あれ”があるから警戒してなかったものの、名将アルノーの登場で余計に心配がなくなった。
「逃げないのか?」
「逃げないね」
名将アルノーなら“あれ”を知らないはずもない。
「逆に聞くけど、逃げる必要性があるのかい?」
「ふん、ないな。お主の目的を考えれば、全く無いと言ってよい。しかし、なぜだ。いつからこの絵を思い描いていた? もしや……ワシはその為に、呼ばれたのか? いや、聞くのは無粋か。なるほど、使えるものは例え敵であったとしても、全部使うか。ワッハハハハハ!! なんと豪快な男よ!!」
笑ってる。声でか! 楽しそう。
軍人ってやつらは頭のおかしい人たちが多いんだよね。
死地において、なぜかめちゃくちゃ楽しそうにしたりする。今も、まあはしゃいじゃって、何やら訳の分からないことを言っている。
「これは、ワシも狙いを変えざるを得ないか。内輪揉めして、帝国に全部持って行かれては元も子もない! しかし、持って来た戦力で足りるかのぉ。相手は、間違いなくあの偉大なる帝国の神であるぞ」
相手が誰でも関係ないよ。
あまりクリマージュ王国を舐めない方が良い。俺は神を知った日、そしてなんか神との変な巡り合わせがあると知った日から、神に関することは調べに調べ尽くしている。そこで驚愕の事実が判明したのだ。
「ブハハハハハッ。誠、面白き展開よ! アルノー、お主、なぜこのことを黙っておった!!」
声でか。こっちも、笑ってる。
新しい声の登場。
あれ? 聞き馴染のあるその声に、首を反対側に捻って見てみると、ええ……。
盾持ちの将軍ローデリヒと丸眼鏡兄さんアトスさんまで。
おいおい……。
王国正規軍元将軍アルノーに、盾持ち将軍ローデリヒまで。これから軍人専用のパーティーでも開く予定ですか?
何があって、こんな大戦力が集っている?
「ローデリヒ!? ……いつからいた!」
「三日前から槍持ちの背後を取っておったわ! お主の狙いが読めずにな。それにしても、帝国の神か。こんな面白い事、なぜ黙っておった!」
「ワシではないわ。ワシも誘われてやって来た、ただの操り人形よ」
「なんと。ハチ・ワレンジャール……か。なるほどのぉ。わかって来たわい」
名将アルノーも将軍ローデリヒも古い知り合いらしい。
全く、どんどん強力な味方が集まる。俺は本当に運が良いらしい。
ふふっ。俺も、笑ってる。





