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お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!  作者: ユーコ
ポイ活

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76/90

16.デトックス温泉郷かえるの湯その4

 カチュア達の温泉巡りももう終盤だ。

「なかなか良かったわね、温泉」

「今度、また来ましょう」

 すっかり温泉が気に入ったカチュア達は、次にいつ来ようか計画を立てている。

「お待ちしているですケロ」

 意外とあま吉の策略にはまりそうなガンマチームであった。


 その時。

「君達、ちょっといいかな」

 九の湯をあがったカチュア達は、声を掛けられた。


 振り返るとそこに立っていたのは、見知らぬ男達の集団だ。

 デトックス温泉郷の湯治客はほとんどが動物や動物の姿をしている者達なので、ここに来てカチュア達が初めて見た人間である。

 十名以上の男性にいきなり呼び止められたカチュア達は驚いた。

 人間と出会ったのも驚いたが、男達のうちの八人はまるで同一人物と見まごうほどそっくりだったのだ。



「えっ、あなた方は?」

 そっくり八人組男性の一人が言った。

「俺達は『仲良しファミリー団』だ」

「家族で冒険者をやっている」

「俺達は兄弟で、上が三つ子、下が五つ子なんだ」

 と三つ子が自己紹介した。

「「「「「よろしく!」」」」」

 と下の兄弟達は息もぴったり揃って挨拶する。


 それ以外の男達は七名。

 こちらは全員眼鏡の集団である。

 体格も似ていて、どちらかというとひょろい感じだ。


「アンタ達は?」

 とアンが聞くと、男の一人が代表して答えた。


「僕達は『白銀の夜明け団』という。ロアアカデミーのダンジョン研究者でここにはフィールドワークで来ているんだ」

「あ、そうなんですか」

「見ての通り、腕っ節は強くないが、自分達で作り出した発明品を使って探索している」

「いろんなチームがいるのねぇ」

 カチュアは感心した。



「それてあの、皆さん、俺達に何か用事ですか?」

 そうオーグが彼らに尋ねると、

「君達、この温泉郷で発生した行方不明事件を知っているかい?」

『白銀の夜明け団』の眼鏡の男は深刻そうな声で逆にカチュア達に聞き返してくる。


「あ、聞きました」

「本当、怖くて不思議な事件ね」

 とカチュアが言えば、ローラも頷く。

「うん」


「俺達はその行方不明者が出たチームのもんなんだ」

 と『仲良しファミリー団』が言った。

「えっ、そうなんですか?」

「ああ、そうなんだ。俺達はこの一月、行方不明者になったチームメンバーを捜している」

「僕らは君達にお願いがあってきたんだ」

「話だけでも聞いてくれねぇか?」

 と彼らは揃って神妙にカチュア達にお願いをしてきた。






 ***


 カチュア達は近くの茶屋に移動した。

 ここはトーヨー風のカフェで人気メニューは玉露と三色団子のセットだという。

 一同はそれを頼むことにした。

 団子というのはお菓子の中ではヘルシーな食べ物だそうなので、アンも安心して食べられる。

 あまり食べたことがない味だが、意外と美味しい。

「この苦いお茶と甘いお菓子が合うわね」

「うん」



「さてと」

 お茶とお菓子を食べ終えると、『白銀の夜明け団』のメンバーの男性が、おもむろに話し始める。


「行方不明事件直後から、僕達はこのデトックス温泉郷に滞在し、このデトックス温泉郷の隅から隅まで探したんだ」

「一ヶ月ずっと?」

「ああ、温泉郷の湯主――ここのオーナーのことだ――のガマってかえるも協力的で配下のかえる達を使って捜索を手伝ってくれている」

 と『仲良しファミリー団』の兄弟の一人が言った。

「それでもまだ行方不明者はおろか、手がかり一つ見つからない」

 彼らはそろってため息をついた。


 さっきかえる女子達に教えてもらった通りの話だ。

「……なら、この温泉郷には行方不明者はいないってこと?」

 とローラが聞いた。


 意外にも『白銀の夜明け団』のメンバーが首を横に振って否定する。

「それがそうとも限らない」

「えっ、どういうこと?」

「君達はダンジョンのことなら何でも知っている情報屋を知っているかい? 彼はこの温泉郷の常連客で、僕らは温泉郷内部の探索を進める一方、彼にも外で行方不明者と似た人物の目撃情報がないか探してもらった」

『仲良しファミリー団』が辛そうな表情で言う。

「似た死体がねぇかも探してもらった」

「どちらもないという返事だった」

 それは朗報だが、手がかり一つないという意味でもある。


『白銀の夜明け団』は眼鏡をくいっと押し上げながら、言った。


「そこから導き出される結論は、僕らの仲間はまだこの温泉郷にいる可能性が高いということなんだ」



「でも皆さん、中は隅から隅まで探したって、さっき言いましたよね?」

 とリックが聞く。


「それなんだが、正確に言うと少し違う。一カ所だけ俺達では探せなかったところがある」

「僕らの仲間が行方不明になった場所、十の湯の女湯だ」


「温泉郷は十の湯だけが女湯と男湯に分かれていて、ここに住む温泉かえる達の昔からの言い伝えで女湯は男子禁制、逆に男湯は女子禁制なんだと」

「なんでも性別が逆の者が入ると災いが降りかかるらしい」

「つまり僕達は十の湯の女湯に入ることは出来ないんだ」

 彼らは説明した。


「なるほどそれでアタシ達に声を掛けてきたのね」


「ああ、この通りだ。十の湯の女湯に行って捜索してみてくれないか」

「頼む!」

 と彼らは一斉に頭を下げてきた。



「駄目だ。危険すぎる」

 とベルンハルトが難しい表情で断った。


「君達男性が入れなくても湯主のガマに頼んで女子かえるに探してもらえばいいじゃないか」

 ベルンハルトは意外と冴えた提案をした。


「もちろん探してもらった。だが、行方不明者は見つからなかった」

「実は君達の前に来た女性だけのパーティ、『クールガールズ』という冒険者達にも協力を願って探してもらった。その時も見つからなかった」


 ローラとカチュアは顔を見合わせる。

「……だったら、残念だけど、私達が探しても無駄なんじゃない?」

「うん」



「いや、確かに何も見つからなかったが、分かったこともいくつかあるんだ」

「分かったこと?」

「特に重要なことが分かった。十の湯に入った者全てが行方不明になるわけでないということだ」

「???」

 なんか難しいことを言い出した『白銀の夜明け団』である。

「行方不明になるにはおそらく条件があるんだ」

「条件?」

「行方不明になるのは人間だけと仮定したらどうだろう? かえる女子達はかえるなので行方不明にならない」

「まあ、それはそうよね」

「でもそれなら、『クールガールズ』とかいうパーティはどうなんです? その人達は人間の女性ですよね?」

 リックがそう尋ねると、『仲良しファミリー団』の兄弟が「それなんだが」と口を挟む。


「『クールガールズ』の女性達と、俺達とこいつらのチームのメンバーが行方不明になった状況には一つ、異なる点があったんだ」

「異なる点?」

「まず行方不明になったのは僕らのチームに所属する女性メンバーだった。彼女はチーム唯一の女性メンバーで、僕らは女湯に入って探すことが出来ないでいた。その時困っていた僕らの話を聞いて、『仲良しファミリー団』の女性メンバーが十の湯に向かってくれた」

「実はうちのチームでさらわれたのはお袋なんだ」

「えっ、お母さん?」

「子供は全員男だからうちのチームの唯一の女性だ」

「危ねぇって止めたんだが」

「行くって言って聞かなかったんだ」

「ああ、困っている人を見捨てられない性格なんだよ、母ちゃん……」

 八人の子供を育てた肝っ玉母ちゃんは、優しく豪快な人柄だった。


「『クールガールズ』達は女性だけのパーティなので、十の湯の中ではずっと一緒に行動して一人になる時はなかったそうだ」

「要するに、行方不明事件は人間の女性一人が十の湯にはいる時に起こるんじゃないかと俺達はにらんでいるんだ」



「ではなおさら協力出来ない。危険だ」

 とベルンハルトはキッパリ断る。


 ベルンハルトの返事を『白銀の夜明け団』のメンバーはある程度読んでいたようだった。

「その判断は当然だと思う。だが、この通りだ。協力してくれないか? これは僕達の推測、いや、願望かもしれないが、行方不明者はまだ生きているんだ」

『白銀の夜明け団』のメンバーはそう言って食い下がる。


「えっ、生きてるの?」

 残念だが、一月前の行方不明者だ。死んでしまっていてもおかしくない。

 両方のチームのメンバー達は頷いた。


「俺達は家族だ。だからなのか、なんとなく母ちゃんが生きているのが分かるんだ。その命のともしびが少しずつ消えかかっていることも。頼む。アンタ達は十の湯に見に行ってくれるだけでいい!」

「僕らの本業はロアアカデミーのダンジョン研究者だと言っただろう? 僕らは互いに居場所が分かる発信器を付けている」

 と『白銀の夜明け団』のメンバーが指輪を見せてきた。


「これは彼女が持っている発信器と同タイプのものだ。そしてこっちが、受信装置だ」

 受信装置は透明な板のようなもので、板には難しそうな言葉と数字が映し出されていた。

 カチュア達にはちんぷんかんぷんだが、『白銀の夜明け団』のメンバーにとってこの装置のデーターは重要な手がかりらしい。

「この指輪の発信を辿ると、彼女はまだ中にいるはずなんだ」

「その指輪を使って探すことは出来ないんですか?」

 リックは興味津々で質問した。

「かなり遠くまで探査出来る反面、まだ試作段階なので、詳細な場所は分からないんだ」

 と苦々しい表情で首を横に振る。


「指輪は持ち主の心臓が止まった時、受信側の端末が赤く光るという機能が付いている。今、受信器の状態は青。まだ彼女は生きていると思われる」


「生きて助け出せる最後のチャンスかもしれねぇんだ。協力してもらえねぇか?」

「頼む!」

 と彼らはガンマチームにお願いしてきた。



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― 新着の感想 ―
同情はするけどヤダ。冒険者は自己責任でしょ?子が家で待ってるのにリスクが高すぎる。
行方不明になったら、どう責任とるつもりなのかな?
お願いのしかたが悪い まず、報酬を提示 命懸けになるかもしれないのよ? まさかただ働きさせるの?
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