第18話 王都からの救援
「でも……どうしてハンナがここに?」
「それに、なんで総監たちまで!?」
ハンナは
「それはね──」
───
──時は
12時間前に戻る
深夜。
エステルは王令が降りず、
自室の扉を閉めた。
風にあおられ、エステルは自室の窓を開け放った。
月明かりに照らされた瞳は、燃えるような決意を宿している。
「……クソみたいな王」
ローブを翻し、彼女は低く囁く。
「私たち鳥契約者は攻撃力こそ劣る……けど、″数″だけは誇りよ」
バサバサッ!
夜空から黒い羽が雪のように舞い込み、百羽を超えるカラスが床を埋め尽くす。
「来なさい、カラスたち!」
エステルは一羽を指先で撫で、囁いた。
「……お前はヤコブの元へこの手紙を届けなさい。リリン村の異変を伝えるのよ」
マントを羽織り、窓枠に足をかける。
「私は――ハンナの元へ向かう。后としてではなく、母として」
冷たい夜風が頬を打つ。
「……城外へ出たと知られれば極刑ね。でも……子を守るのは親の務めよ」
黒い翼の群れと共に、エステルは夜の王宮を飛び立った。
───
霊獣管理協会・本部
総監ヨハネと副総監ヤコブのもとに、一羽のカラスが舞い降り、手紙を落とす。
「姉上のカラス!」
ヤコブが封を切ると、そこには震える筆跡で記されていた。
──農業村リリン壊滅の危機。リザエルの報復。
「───!」
ヤコブは椅子を蹴るように立ち上がった。
「待て! ヤコブ!」
ヨハネが低く制した。
「総監! これは国の危機です! 私がリリン村へ──!」
「落ち着け」
ヤコブは睨み返す。
「……いつも冷静なお前が珍しいな……」
「……」
「これは王からの依頼ではない。私たちは王命がなければ動けない……それはわかっているはずだ」
「……承知しています。ですが、私だけでも向かいます」
「総監に逆らうのか?」
「……」
ヨハネはふっと目を細め、そして笑った。
「なら、私も“行楽ついで”に出かけるとしよう」
「えっ……?」
「総監としてではなく、ただのヨハネとしてな」
「ヤコブ……お前はすでに何か掴んでいるだろう」
「──!」
ヤコブの表情が動く。
「私は数名の霊獣使いを率いてリリン村へ向かう。お前は黒幕を探せ」
「──必ず突き止めます」
「しかし……さすが総監ですね」
「いつもの勘だ……」
「そして、動くときは今だ」
───
ノルディア・夜明け前
ハンナとドラコは眠っていた。
トントン……窓を叩く音。
「……何?」
カーテンを開けると、そこには母・エステルの姿があった。
「お母さま……!?」
「ハンナ!」
「今すぐドラコと農業村リリンへ向かいなさい。村を死守するのよ!」
「──! でも、ここには父様の霊獣 朱雀が……監視してるはず……」
「私があなたの代わりになるわ」
エステルはカラスの群れを背に言い切った。
「ドラコの分も、カラスに幻影を任せなさい。朱雀は霊力の流れこそ感知するけど、目は悪い。そして今は寝ているから大丈夫よ」
「……お母さま」
「早く行って! リリンの霊獣も、霊獣使いも危ない!」
「──! ドラコ、行くわよ!」
「分かったわ!」
「お母さま……ありがとうございます!」
エステルは一瞬だけ、夢で見た非難な光景を思い出す。
胸に手を当てる。
(きっと……大切な人なのね)
「いってらっしゃい、ハンナ!」
───
そして現在。
「それで俺達助かったんだ……」
リクは大きく息を吐いた。
「しかし、すまなかった……森の魔物の襲来があり……到着が遅くなった」
「それで……あの男は……」
「後はヤコブが対応するだろう」
ヨハネはリリン村の森を見つめ、視線を鋭くしていた。
続く




