第17話 瀕死のリク
「リク!! 起きろって!」
ダンさんは小さな身体でリクの傷口を押さえるが、血はゆっくりと流れ、血溜まりが出来ていた。
「うぅ……誰かぁ……ハンナとドラコは魔物の応戦でこれない……」
「……おいらの魔法じゃ治せない……」
ダンさんはふらついて、リクの頬に寄りかかる。
「……おいらの脱水も……もう限界……」
「リク……ごめんな……おいら弱くて……」
ダンさんはそっと目をつぶる。
その時。
──ドドドドッ!
大地を揺らす轟音と共に土煙が迫ってきた!
「いたぞ!」
次の瞬間、馬上から叫びが飛ぶ!
上空から不死鳥が舞い降りた――が、リクの姿を目にした瞬間、その瞳が大きく揺れた。
「──!」
「……ッ、間に合え!!」
翼を大きく広げ、地を蹴る馬よりも速く、全速力で墜ちるようにリクへ突っ込んでいく。
「ヨハネ!! 霊力貸せ!」
「回復魔法!!」
不死鳥は翼でリクを抱き包み込むように覆い、羽先から放たれる光が血の流れを押さえ込んでいく。
「血管修復! 塞がれぇッ!!」
不死鳥の羽が光り、リクを包む。
「水竜!! ダンドドシンに水を!」
「了解です!」
ザーッと激しい雨がダンさんの上に降り注いだ。
「ダンドドシン! 大丈夫か!?」
「えっ……あっ! リクの親父さん!?」
「えっ……えっ……!?」
「皆で助けに来たんだぞ!!」
──青空に轟く仲間の声。
「1番出血の酷い所は塞げた。とりあえず大丈夫だ!」
不死鳥がふっと息をつく。
ヨハネは声を張り上げた!
「聖竜フレアは村の魔力を無効化!」
「雷神鳥ライガは魔物を撃破せよ」
「はっ!」
使いのアンとドゥが風を切って、駆け抜けていく。
「先行くぞ!」
雷神鳥ライガがバチバチと光を纏い、電光石火の速さで村の中心へと飛ぶ。
衝撃波と共に、土埃が舞い上がり視界を覆う。
「フレア! 村全体に浄化魔法を展開!」
「全ての魔力を無効化せよ!!」
眩い光が村全体を包み込み、半透明の光のドームが広がっていく。
同時に村に置かれた魔石がパキッと割れ、光が消える。
──村の教会
魔物が村の中心を徘徊していた。
教会の中では村人が怯えながら身を寄せ合っている
──バリン!
ステンドガラスが割れ、狼型の魔物が侵入する!
「うわぁ!!怖いよ!」
「ライガ! 村の魔物に雷撃を落とせ!」
凄まじい轟音と共に稲妻が走り、魔物が崩れ落ちる。
直後、ドゥが馬で教会まで駆けこんだ。
「皆さん! 大丈夫ですか?」
「すべての魔物は倒しました!」
「怪我している方はこちらへ!」
その声に混じって教会の椅子の上で
タロはふっと目を覚ます。
「なんか……騒がしいな……」
目に入ったのは天井に描かれた天使の絵。
「天使……? 俺死んだ……?」
ゆっくり起き上がろうとした瞬間。
「──!! 痛だだだだだ!!」
子供が駆け寄る。
「タロさんが目覚ました!」
「魔物は? どうなった?」
「今霊獣使いの人達が来てくれたんだ!」
「リクは?」
「ごめん……わかんない……けど、村全体が光って湖の毒は消えたんだ」
「ダンさんの魔法だな……」
「良かった……」
───
ふっと、温かいものが頬に触れた。
「リク!」
「はぁっ!」
目を開けると、ダンさんが必死に額を押し当てていた。
そして自分を取り囲むの人の影がうっすら見えた。
「ダンさん……」
「総監……? えっ……父さん? えっ……!?」
ダンさんはリクの頬に顔をすり寄せ、涙をぼろぼろ零していた。
「リクっ……死んじゃうかと思ったよ……おいら……怖かったよぉ……!」
「ダンさん……ごめん、ごめん」
ダンさんの甲羅にそっと触れる。
(俺……生きてる……)
混乱するリクの耳に、かすれた声が届いた。
地面には、不死鳥がぐったりと横たわっている。
「……クソだりぃ……魔法使いすぎた……」
「お前……ヨハネの霊力と……俺に感謝しろよな……」
「死んだら……俺の魔法でも戻せねぇんだからよ……」
「ありがとう……」
リクは震える息でそう答え、すぐ隣のダンさんへ視線を移した。
「ダンさん……大丈夫? あれ……水は……?」
「今…………水竜が……池に水溜めてくれてる……」
ダンさんの甲羅は血で濡れ、全身が震えていた。
それでも離れず、必死にリクを守ろうとしていたことが伝わる。
「リクぅ……おいら……ほんと怖かった……」
「……ごめんね、ダンさん」
───
その時。
「リク!!」
ドラコの背に乗ったハンナが駆け込んできた。
彼女の目は恐怖と安堵で潤んでいた。
「リク……血だらけじゃない!」
「大丈夫だ。傷は塞がっている」
ヨハネの低い声が響いた。
ハンナはリクに駆け寄ると、そのまま強く抱きしめた。
「ごめん……私が離れたから……!」
「いや……大丈夫……俺は平気だよ」
リクは弱く笑おうとしたが、喉が詰まった。
「でも……なんでみんな、ここに……!?」
続く




