第15話 走り抜けた先に
「リク! 助けに来たよ!」
声が響いた瞬間、リクは思わず見上げる。
遠方にいるはずのハンナとドラコが目の前に……。
(一瞬……何が起きたか理解が追いつかなかった……)
「ハンナ!? なんでここに──!」
リクの声が裏返る。
「リク! 詳しい話はあと!」
ハンナは荒い息を整え、鋭い目で叫ぶ。
「──!」
地平線の向こうから、土埃がもうもうと立ちのぼった。
大地を震わせる無数の足音が、響き渡る。
「また! 魔物の群れ!?」
ドラコが叫ぶ!
「ダンさんは!? 大丈夫!?」
「今……脱水で、限界だ!」
リクはローブを抱きしめたまま必死に答える。
「──!」
ハンナの顔が一瞬だけ強張った。
「早く! 水場に連れていって!!」
「でも、魔物が……!」
リクが叫ぶと同時に、黒い群れが迫りくる。
「ここは私とドラコがやる!」
瞳に宿る光は鋭く、全身から霊力がみなぎる。
「ミカエルの名において!」
「永久の闇に帰れ!」
「ドラコ! 魂ごと焼き払えぇッ!!」
轟音と共に紅蓮の炎が大地を飲み込み、魔物の群れを一瞬で灰に変える。
熱風がリクの頬を叩き、視界が赤黒く染まる。
「ハンナ!」
リクの声。
「早く行って! リク!!」
振り返らずに叫ぶ。
「……わかった! ありがとう!!」
リクは歯を食いしばり、走り出す。
ローブの中で震えるダンさんを抱え、養鶏場の池へと――。
「ダンさん! 大丈夫か!」
「……うぅ……」
弱々しい呻きがローブの中から漏れた。
「はぁ……はぁ……」
肺が焼けるように痛い……。
心臓が胸を突き破りそうなほど鳴り、視界が揺れる。
(急げ!……今、止まったら……)
「──!」
「見えた! あと少しで……!」
「ダンさん! 池が見えたよ! 頑張れ!」
(間に合った! ダンさんに水を補給させてから、村の皆と合流しよう……)
──その時だった。
「おーい……そこの少年……た、助けてくれ……」
草むらから、か細い声。
(村人……? 観光客……?)
リクは警戒しながらも足を止めた。
「大丈夫ですか!? 避難場所は──」
その瞬間、ふらつく足取りで現れた男。
帽子の影に顔を伏せ、肩を震わせている。
「──!」
(……見たことがある。数ヶ月前、湖のほとりで──)
「悪いな……霊獣使い」
──刃が閃いた。
「ッ──!」
リクの目が大きく見開かれる。
「ぐあぁッ……!」
ローブごと、ダンさんを抱いたままリクの身体が崩れ落ちる。
赤黒い雫が土を濡らす。
続く




