第10話 悪魔の村リリン
「ダンさん! こいつにもう一度魔法をかけよう!」
リクが叫ぶ。
「待て、リク……。おいらには、このスライムと話さなきゃいけないことがある」
キリッとした表情でデカダンの方を向く。
「デカダン! お前はチビ達を連れて、養鶏場の池に避難しろ!」
「ダンの兄貴!!」
「大丈夫だ! おいらなら平気だ!」
「……わかりました! 兄貴も、早く来てくださいよ!」
「てめぇら、急げ! 干からびちまうぞ!」
「ギャム!!」
ダンゴムシ達は丸く転がりながらその場を離れていく。
──
リクが息を呑む。
「ダンさん……」
ダンさんは真剣な表情に戻り、スライムを睨みつけた。
「……お前。破裂する気だな」
「───!」
スライムの身体が揺らぐ。
「フフ……そうだ……。私が自爆すれば……大勢の人間が死ぬ……! 土を浄化しても無駄なんだよ……!」
「なんでそこまで、人間を恨む!?」
「……いいだろう。どうせお前も俺も死ぬ……理由くらい、話してやる」
「私はただのスライムだった……。そして、エネルギーで栄えた街″エデン”にいた」
「無限に近い力を生み出すエネルギー……! だが人間は欲に呑まれ、実験に失敗し爆破を起こした!……街は消滅した!」
「重油と科学毒に汚染され……私は毒を喰らい、化け物に成り果てた! 大好きだった街を……人間は壊した!!」
「家族や同族は毒に耐えれず死んだ!!」
「人間など破壊しかしない!! 存在する価値などない!!」
───
ダンさんは一歩も退かず、拳で砂を握りしめる。
土埃が舞う中、その瞳は揺るがなかった。
「やっぱりな……。お前、それ……四百年前の話だろ?」
「なに……!? なぜそれを……!」
スライムの身体が激しく揺らめく。
ダンさんは砂をすくい、力強く見せつけた。
土の粒子は風に舞い、キラキラと反射した。
「気づいてないのか……? ここがどこだか!」
「ここは――かつて“爆破”で滅んだエデンだ! 猛毒に侵され! 街の名前が変わったんだ!! 人類の罪として!!
《悪魔の町・リリン》と呼ばれたんだ!」
「なっ……!」
スライムの巨体が震えた。
「そうだ! 湖は重油で満ち、科学毒で生物は死滅し! 草一本生えない死の大地になったんだ!」
「けどな……百年かけて浄化したんだ!! そしてこんなに緑溢れる美しい村になったんだ!!」
ダンさんは背後に広がる森林を指し示す。
青空の下で命が輝いていた。
「バカな! 一歩入れば死ぬレベルの毒だったはずだ……!」
「先代の霊獣ダンゴムシ……“ダンディさん”はな……」
ダンさんは涙を流しながら叫ぶ。
「土の力を信じ抜いて! 科学毒まみれの死の街を浄化し! 農業村リリンに再生したんだ!!」
「一人で!! 百年かけてだぞ!! たった十センチの小さなダンゴムシが!」
「誰からも褒められず!!」
「お前……! 本当に好きだった街を……また毒で汚す気か!!」
「……ダンディ……だと……」
スライムの瞳が揺らぐ――。
続く
※次回の話は残酷描写ありです。苦手な方は1話飛ばしてお読みください。




