第5話 決起する村人、そして迫る魔物達
「なぁリク……湖の方は、俺に任せろ!」
「タロさん!? 一人じゃ何時間も……!」
その時――。
「おーい! リク! 湖は大丈夫か!」
「さっきの音、村まで聞こえたぞ!」
ぞろぞろとリリン村の住人が駆けつける。
ちょうど教会の集会で村中が集まっていたのだ。
タロは腰に手を当て、ぐるりと村人たちを見渡す。
「なぁ皆! 湖が毒で汚されちまった! けどな――米ぬか撒けば浄化できるらしい!」
「手伝ってくれ!」
一瞬の沈黙……。
「ふふ……私、おばさんだけど、撒布なら任せな!」
「いつも飯くれるしな、たまには恩返しだ!」
「畑で慣れてるから、俺らの方が早ぇぞ!」
「僕、足速いから任せて」
「よーし! みんなで村を守るんだ!!」
次々と手が上がる。
「で、でも魔物が絶対来るかも……! なんかゾワゾワする……」
村人の声に不安が広がる。
「心配すんな!」
タロが一歩、前に出る。
「村人は俺が護る!」
「タロさん……!」
タロは拳を握りしめ、リクに言う。
「なぁ……リク君、俺はただの釣り人でさえないおじさんだけど……ここ最近、ずっと魔物と戦う練習をしてきた!」
「ここは、俺に任せろ!」
リクは驚きに目を見開く。
「……タロさん……!」
タロはリクの肩を叩き、真っ直ぐに言い放つ。
「毒の元凶は向こうなんだろ? 倒せるのはお前とダンさんしかいねぇ!」
「だから――行けッ!!」
リクは唇を噛み、そして頷く。
「……分かった! タロさんがやる時はやるって、俺知ってる! だから信じる!」
タロはニカッと笑って拳を突き上げた。
「おう! 任せとけ!」
そして村人たちに向き直る。
「さぁ! 俺らの村は、俺らで護るぞォォーーッ!!」
「「「おおおおおおおおお!!!」」」
村人たちの咆哮が空を揺らした。
───
リクとダンさんは、農業村リリン南にある共同畑へと全力で駆けていた!
後ろからはデカダンと、丸まったちびダンゴムシたちがゴロゴロついてくる!
「ねぇダンさん! なんでこんな何もない村が狙われるんだよ! おかしいだろ!」
「……多分、食料だ」
「えっ……?」
「農業村リリンは王都に食料を納めてる。ここが潰れれば、王都は飢える!」
「戦争が始まりやすくなる……」
「……!」
「じゃあ、去年隣町の小麦畑が汚染されたのも……!」
「そう。きっと実験だ。だから共同畑には――もっと強い毒が仕掛けられてる」
「王都の時みたいに浄化できないの?」
「……重金属ならおいらの持ってる力でなんとかなるけど……今回の毒は猛毒で無理なんだ…」
「──!」
「おいら一人の力じゃ浄化できない。土の力が強くないと無理なんだ!」
「……」
「リク! ここ農業村は絶対守るぞ!」
「食料不足は国を内側からも滅ぼす!」
「おいらは三百年生きてるけど……百五十年前の戦争が終わる前、よく作物が盗まれた。食料不足は、人の心を壊す」
「先代の霊獣ダンゴムシも言ってた。“食料を軽んじるな”ってな」
「せ、先代……!? おいらの師匠さ! また今度話す! 米ぬかの浄化はその師匠から受け継いだんだ!」
「そうなん──危ないッ!!」
リクは反射的に弓を構え、林から飛び出した狼型の魔物を射抜いた!
ズシャッ!!
「……やっぱり魔物が来てる!」
「タロさん……本当に大丈夫かな……!」
─────
湖近く。
村人たちは麻袋に米ぬかを詰め、穴を開けては走りながら湖岸へ撒いていた。
ドシン……ドシン……!
森の奥から、重い地響きが迫ってくる。
「やっぱり来やがったか……」
タロは苦笑しながら釣り竿を構えた。
怯える子供に、彼は叫ぶ。
「大丈夫だ! 敵は湖奥の森からしか来ねぇ!」
「俺がここで止める! お前らは撒布を急げ!」
「タロさん! 頑張って! 僕、足が速いことしか取り得ないけど、全速力でやるから! 一番遠い所は俺が撒いてくる!」
タロは釣り竿をぐっと握り直す。
「まさか……冴えない釣り人として生き直して、魔物と戦うことになるとはな……」
にかっと笑い、足を踏み出す。
「――だが、やってやるぜ!!」
続く
これまで千文字ほどのエピソードを毎日投稿していましたが、
物語を整理しながら進めていきたいので、これからは不定期更新になります。
ゆっくりですが、これからもよろしくお願いします。




