第2話 嵐の前の静けさ
湖の水面は、濁った灰色に沈んでいた。
タロが釣竿を肩に担ぎ、ため息をつく。
「……やっぱ濁っちまったなぁ」
「そうですね……」
リクは湖を見つめながら頷いた。
そのとき、頭上を鋭い影が横切る。
「……ん?」
リクは反射的に弓を背から抜き、矢をつがえて放った。
――ギャアッ!
大型の鳥形の魔物が矢に貫かれ、湖畔に墜ちる。
「やっぱり来るな……時々は」
弓を下ろし、リクは息を吐いた。
彼の背には、常に矢筒と弓がある。
「お前、ほんと四六時中その弓抱えてるな」
タロは苦笑してリクの背中を軽く叩く。
「……備えだよ。ハンナがいない分、守れる人が減ってるし」
「……まぁ、そうだな」
タロは頭をかき、少し声を落とした。
「なぁリク君……失恋ってのはな、酒で忘れるもんなんだぞ?」
「ち、違います! 俺……ちゃんとハンナと手紙してますから!」
顔を真っ赤にするリク。
「なんだ! 遠距離恋愛か! がんばれ!」
タロは大笑いしながら、彼の背中をどんどん叩いた。
場の空気が少し和む。だがその直後、タロが真顔に戻る。
「そういえばリク君……魚、もう全然取れないんだ。だからしばらくは野菜カレーになるけどいいか?」
「やっぱり湖……元に戻らないんですかね」
「今、ダンさんがハンナの本を必死に調べてるだろ」
「自然現象じゃない、って言ってましたよね」
「……ああ」
タロは視線を湖へ向ける。
「元に戻るといいけどな」
───
その頃。
ダンさんは机いっぱいに本を広げ、眉間にしわを寄せていた。
「……魔物のミジンコ……?」
小さな指が挿絵を押さえる。
「湖の霊力をゆっくり食い尽くす……数カ月単位で……。霊力が尽きれば、今度は共食い……」
額にじわりと汗が浮かんだ。
「……でも、この地域には生息していない……?」
ページを戻し、何度も見比べる。
「……誰かが、意図的に湖に……?」
パタンと本を閉じ、ダンさんは小さく震えた。
「知らない間に……もう攻撃を受けてた……」
椅子から飛び降り、叫ぶ。
「やばいぞ! ヤコブに知らせないと!」
───
勢いよく外に飛び出す。
……だが。
いつも耳に届くはずの鳥の声はなかった。
木々のざわめきも、虫の音すらも消えている。
「……静かすぎる」
異常なまでの沈黙が、全身をぞわりと包み込む。
風さえ止まった湖と森が、不気味な気配を孕んでいた。
「こんなの……初めてだ……」
小さな体が震える。
「一体……何が起きようとしているんだ……」
続く
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