番外編 王都に隕石が落ちた日【後半】
夜中一時。
マタイがフクロウを上空へ飛ばす。
「もうそろそろです……。フク! 北西上空、鑑定スキル発動!」
「ライガを上空へ」
「はい! いけ、ライガ!」
「しかし……時間まで予測できるのですね」
「いえ、そんなに便利なものではありません。予知夢の中で観察し、月の位置と天候から日程と時間を割り出すのです」
「すごい……」
マタイは説明を続ける。
「先程も言いましたが、隕石は左右対称ではありません。フクの鑑定で、ちょうど中心位置を割り出すのです」
「ライガでその一点を追撃してください」
「隕石が砕ければ、王都への物理的損壊は阻止できます」
「……失敗したら?」
「始末書どころでは済みません。私も、あなたも……」
「さて、集中しましょう。あと五分ほどです。我々が失敗すれば――王都の四分の一が消し飛びます」
「が、頑張ります……!」
フクが叫んだ。
「来たぞ! スキャン開始!」
「迎撃用意!」
マタイが手を挙げ叫ぶ!
光る片目がレンズのように輝く。
「北西! 高度83! 目標正面300!」
「3! 2! 1!」
「雷撃せよ!」
ピカッ――!!
空を裂く閃光。
直後、鈍い轟音が響き渡った。
隕石は上空で砕け、破片がパラパラと散って落ちる。
「よし! やりました!」
ドゥがヘナヘナと崩れる。
「よかった……」
───
自然公園内・展望台。
聖竜フレアの使い、アンが腕を組みながら空を睨む。
「やっぱり破片は落ちてくるな……。あれに瘴気が乗っているのか? 魔力か?」
「フレア! 王都全体に浄化魔法を展開! 全て魔力を無効化せよ!」
王都は光のドームに包まれた。
隕石の破片が青白く光っていたが、その輝きはすっと消えていく。
「やはり……魔力はあったな」
「さて……落下予測地点に向かうか」
───
自然公園内・落下地点近く。
総監ヨハネは腕を組み、静かに待機していた。
不死鳥と伝書バト・ナナは、木の枝に留まっている。
「悪かったよ……お前のこと、悪く言って」
ナナは不死鳥を鋭く睨む。
「お前、伝書バトの中で一番最速で古株なんだろ?」
ナナは小さく頷いた。
「俺なんて回復魔法しか使えねぇ。攻撃できねぇし……飛ぶの遅ぇし……」
ナナは不死鳥をジーと見つめる。
「ポッポ……(元気出せ)」
「……ありがとなナナ」
その時――
ドォン!!
爆音とともに砂埃が舞い上がる。
ヨハネは腕で顔を覆い、視界を確保した。
「砂場に落ちたか……。瘴気は、ないように見えるが……」
──パリン。
何かが割れるような、不気味な音。
隕石が青く光りだし、霧のようなものが漏れ出す。
「──なんだ!?」
「うぐ……くっ……」
ヨハネが膝をついた。
「ヨハネ! 大丈夫か!?」
「不死鳥、動くな! 待機だ! ナナも!」
「総監!」
アンが駆け寄る。背後には聖竜フレア。
「アンか! 再度、浄化魔法を!」
「えっ!? わかりました!」
「フレア! 浄化魔法を展開!」
光のドームが公園を包む。
「魔力を無効化せよ!」
だが――
聖竜フレアが叫ぶ。
「アン! もう魔力はない! 違う何かだ!」
「なに……? 聖竜フレアの浄化魔法が効かないだと……」
「アンも待機だ! 落下地点に近づくな!」
ヨハネは振り絞るように叫んだ。
「直ちに住民を隣町に避難させろ! 竜使いを集め、風でこの瘴気をここに留めろ! 絶対に住民は守れ!」
───
同時刻、霊獣管理協会本部。
ナナの視覚を通じて、ヤコブは惨状を見ていた。
「なんだと!? サラ! 隣町のペテロとサライのもとへ飛べ!」
伝書バトが箇条書きの手紙をくちばしに加え、飛び立つ。
「竜使い……王都内に十体いるな! 契約者を呼べ! 急げ!」
───
隕石落下から2時間後
「ゲホッ……!」
ヨハネは視界を失い、呼吸が乱れていく。
「肺が……! 不死鳥! 身体の細胞を回復させろ!」
「ちょっと待ってろ!」
不死鳥の羽が光を放つ。だが――弾けて消えた。
「なっ!? 効かねぇぞ……ヨハネ!」
「クソ! 回復魔法も効かないだと……!」
「わりぃ……ヨハネ……羽が痺れて……」
不死鳥が地面に倒れ込む。
「不死鳥!」
竜使いたちは風の壁を作り、瘴気を必死に留めた。
リクの父の水竜も加わり、風を巻き起こす。
────
一方その頃。
リクの母サライは避難民を誘導していた。
「慌てないで! 教会へ避難を!」
隼にランプを持たせ、王都と隣町を照らしながら案内していく。
隼がサライの腕に止まった。
「姉さん! ほぼ住民避難できたっす!」
「ありがとう!」
「……一体、王都で何が起きているの……?」
────
城内。
ハンナが玉座に向かうと、第二王子ルカが微笑んでいた。
「これは一体なにが起きたのですか? 光と……衝撃音が!」
「おや、ハンナ。久しぶりだね」
「王都に隕石が落ちたらしいよ」
「えっ……」
「そして、なぜか瘴気が広がっているようだ」
「早く、国民の元へ!」
「やめた方がいい」
ルカは笑みを浮かべたまま言う。
「今、僕の霊獣 麒麟で城に結界を張っている。あらゆるものから守る魔法だ」
「我々王族さえ滅びなければ、国は生きるからね」
「……っ!」
「もう少し様子を見ようじゃないか」
────
隕石落下から3時間後
霊獣管理協会本部。
「クッ! まさか……全滅だと……」
ヤコブが机を叩いた。
ナナの視界に映ったのは、意識を失い倒れた霊獣と霊獣使いたち。
「緊急徴集を……かけなければ……!」
視界が歪む。
「───!」
「くっ……」
胸を押さえ、苦しむヤコブ。
「まさか、ここまで瘴気が……まずい!」
「お前ら、上空へ! 逃げろ!」
副総監ヤコブは必死に伝書バトの檻を開いた。
「全国の……霊獣たちに知らせないと!」
ナナは霊獣管理協会に戻ってきた。
呼吸は乱れていた。
震える手で手紙を書き、次々に渡す。
「シオン! 届けろ! モーセ! 届けろ!」
「よし……全部……。ナナ! 霊獣ダンドドシンのもとへ……!」
視界がぼやけ、机から崩れ落ちるヤコブ。
「ゲホッ……肺が……苦しい……」
ナナは「嫌だ」と首を振る。
「いけ……! これはただの瘴気じゃない……! このままでは国が滅びる……! もう一度言う! 農業村リリン、霊獣ダンドドシンに届けろ!」
ナナはヤコブの頬に顔を寄せ、一瞬の沈黙のあと空へ舞い上がった。
その姿はすぐに見えなくなった。
(……後は、頼んだぞ……)
───
隕石落下から28時間後
早朝。
リクとダンさんが
王都に到着する2時間前
「ララ! もっと急げ!」
「分かってるわよ!」
霊獣「犬神」ララの背中に使いの指揮官ダニエルがまたがり、全速力で王都に向かう!
「クソ! 行方不明者捜索中に緊急徴集だと!」
「全滅……!? ありえないだろ!」
「ララ! 王都に入る前に布、顔に巻くぞ!」
「分かった! 嗅覚オフにするわよ! 私、失神しちゃう!」
自然公園に向かうララとダニエル
「───!」
「クソ……皆倒れている……」
「ダニエルさん……」
「アン君! 大丈夫か!?」
アンが腕を使い地面を這いつくばり、ダニエルの前に進む。
「総監が危ないです……一番最初に瘴気を浴びしてしまって、意識がありません」
「──!」
「僕達はまだ大丈夫です……」
「分かった! 総監を先に運び出す!」
ダニエルは自然公園の中心に向かい、落下地点に到着した。
「総監!」
そこには顔は青ざめ、浅い呼吸を繰り返すヨハネが倒れていた。
「すぐ、運び出しますからね!」
「ダニエル! 早くここを離れるわよ!」
「ここはやばいわ!」
意識のない総監ヨハネを隣町まで運び出す。
「クソ! なにが起きている!」
「緊急徴集で駆けつけても! 俺達には何もできない!」
「王都の霊獣は全滅……、地方に誰かいるのか」
「聖竜、不死鳥も倒れた……もう無理なのか……」
───
ダニエル達が隣町に着いた時、
リクとダンさんが王都に到着した。
リクは、唾を飲み込む。
「……ダンさん。本当に、やるの?」
ダンさんは、迷いのない目で言った!
「おいらが、この国を守る!」
──
その後
「最弱」と呼ばれた霊獣「ダンゴムシ」ダンドドシンが、
ダンゴムシ本来の″浄化能力″と魔法″土を豊かにする″を発動。
そして、魔法の威力を最大値に引き出したのは霊獣使い″リクの霊力″だった。
王都は浄化され、救われた。
───
王都が救われ、一件落着。
「リク〜、王都、乾燥しててイヤだー」
「帰ろうか。農業村リリンへ」
ダンドドシンと使いのリクが王都を立ち去った後……。
フードを深くかぶった男が、その背ををじっと見つめていた。
「………」
「私の計画を邪魔したな……」
「ダンゴムシのくせに……」
「……今度はお前達の村を壊滅させてやる」
男の口元がゆっくりと歪む。
その笑みは冷たく、底しれない。
「さて……戦争の準備を始めようか」
───
隕石落下から一年。
今度は戦争を止め、やがて世界を救う戦いへと巻き込まれていく。
その未来を、この時の二人はまだ知らなかった。
番外編 王都に隕石が落ちた日【後半】
──おしまい──
そして物語は、第三章【農業村死守編】へと続く。
◎アン 18歳 178cm
霊獣「聖竜」フレア使い
主人公いじめた奴らの一人 貴族出身
性格が悪いが、成績トップで優秀
◎ハンナ=ロレーヌ 19歳 168cm
リクと同い年の少女。
霊獣 龍ドラコの使い
気高くも優しい心を持つ。
◎ルカ=ロレーヌ 25歳 175cm
第二王子 国王と第一后の子供
霊獣「麒麟」使い
◎指揮官ダニエル 28歳 170センチ
明るい性格 霊獣管理協会の指揮官
◎霊獣「犬神」ララ 250歳 2m
警察犬のように嗅覚が鋭い 全身が白い
神経質で追跡中は他の匂いを嫌う




