第21話 迫り来る戦争の影
海街ノルディア・要塞内
ハンナは波打ち際に座り、白波を見つめていた。
「この海の向こう……隣国リザエルよね」
隣でドラコが尻尾を揺らす。
「海は綺麗だけど、村人……冷たいわね」
「ん?」
「到着してすぐ、“霊獣使い? 税金泥棒!”って。噛みついてやろうかと思った」
「こら、ドラコ」
「冗談よ。でも……気持ちはわかるでしょ」
ハンナは視線を上げた。青空には、巨大な影――王直属の霊獣 朱雀がゆっくり旋回している。
その姿は、美しさよりも重たい威圧感を放っていた。
「……あの子、ずっと上から見てる」
「おかげで、息が詰まりそうよ」
そのとき、伝書バトが舞い降りた。
「……ニコラ? 叔父様の伝書バト……」
封を開けると、見慣れた筆跡が目に飛び込む。
────
ハンナへ
元気ですか?
こっちは変わらずタロさんと新作のカレー作っています。
湖の水量がかなり少なくなって、今ダンさんが原因を調べています。
君と過ごした日々が、懐かしいです。
君にまた会いたいです。
海街はどうですか?
きっと忙しいと思うけど、体に気をつけて。
直接会ったら、きっと恥ずかしくて何も言えなくなるから……こうして手紙にします。
――リク
───
「……リク……」
胸がじんわりと熱くなり、思わず手紙を胸に抱いた。
「なになに? お、甘いこと書かれてるじゃないの」
背後からドラコが覗き込む。
「ち、違うってば!」
「返事、書きなさいよ。すぐに」
「……うん」
リクへ
手紙、ありがとう。元気です。
この海街は……海はきれい。でも、人も空も、少し冷たく感じます。
頭上では王の霊獣がいつも見下ろしていて、息が詰まりそう。
それでも、君からの手紙を読むと、農業村にいた時みたいにちゃんと呼吸ができる気がする。
また会える日を、楽しみにしています。
――ハンナ
「ニコラ! これをリクに届けて」
ニコラは嬉しそうに羽根を広げ飛び立つ。
海はキラキラと反射し、美しい風景が広がる。
─────
深夜。
ハンナの母、エステルはうなされていた。
夢の中で――。
農業村リリンの湖が干上がり、ひび割れた大地の上でダンドドシンやダンゴムシたちが力尽きていく。
やがて森から魔物が何十体も這い出し、村を火と毒の瘴気が覆った。
村人は次々と倒れ、最後に映ったのは――血に染まった地面に崩れ落ちる霊獣使いの少年の姿だった。
そして農業村リリンは火の海に包まれる。
エステルは夢の中で必死に叫んだ。
『……やめて……お願い……!』
──次の瞬間、景色が歪み、場面は切り替わる。
ノルディア
砕け散る波、崩壊する港。
「私の……大切な人を……」
「リクを返せ! 無抵抗の村を焼き払うなんて! 許さない!」
ドラコは切ない目でハンナをじっと見つめる。
剣を握るハンナの姿。
『……ハンナ……! やめて!』
どんなに叫ぼうと夢の中では届かない。
海の向こう側、リザエルの大地が――
炎と煙に包まれ、まるで地獄のように燃え広がっていた。
(これは……農業村リリン壊滅の“報復”……?)
(リザエルとの戦争……!)
エステルの絶叫とともに、夢は唐突に途切れる。
「――っ!!」
彼女は荒い息を吐き、冷たい汗に濡れて目を覚ました。
「農業村が滅びるだけじゃない………」
「このままでは大戦になる………」
エステルは胸元を押さえ、暗い天井を見上げた。
「農業村リリンには……霊獣……最弱のダンゴムシしかいない……」
涙に濡れた瞳で、小さく呟く。
「未来は……変えられるのかしら……」
──物語は、第三章へと動き出す。
【お陰様で2万pv】ハズレスキルで"最弱"霊獣ダンゴムシを引いた俺、実は"最強"霊獣だった件〜王都救ったけど、もうこりごり。田舎で異世界スローライフ始めます〜
第二章 完結
第三章 農業村リリン死守&戦争阻止編
へ続きます。
タイトルも新たに、
『ハズレスキルで"最弱"霊獣ダンゴムシを引いた俺、実は"最強"霊獣だった件 〜戦争を止めろ!王都の次は世界を救え!〜』
へと改めました。
第三章では、最弱霊獣ダンドドシンと使いのリクが
農業村リリンを、仲間を、そして世界を守るために立ち上がる!
そして明かされる農業村リリンの悲しい過去。
“最弱”と呼ばれたダンゴムシが、今度は戦争そのものを止める存在となる……!
どうか引き続き、彼らの活躍を見届けてください。
第三章が始まる前に本編に書けなかった
『王都に隕石が落ちた日【前半】、【後半】』を投稿します。
※第二章は霊獣の活躍が少なかったので、ほとんどの登場人物を登場させました!
第三章も全力で書いていきますので、お楽しみに!!
続く
第二章までお読みいただき、本当にありがとうございます!
初めての異世界ファンタジー執筆で、調べものをしながら試行錯誤を重ねての投稿でした。
話の立ち上がりが遅くなってしまい、もどかしく思われた方もいたかもしれませんが……
ここまで読んでくださった読者の皆さまのおかげで、ついにここまで物語を紡ぐことができました。
本当にありがとうございます!
「弱いものでも必ず活躍出来る」をテーマに執筆頑張ります!




