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第7話 リクのトラウマとダンさんの癒し

 リクは夢を見た。


 現実世界で

地元の工務店で働いていた頃の夢だ。

 

高校を卒業してから、建築士を目指し、社長にも気に入られていた。


けれど……現場監督の先輩ふたりに目をつけられた。


 その二人は昔から地元で有名な不良で、警察沙汰も何度かあった。

現場では顔以外を何回か蹴られ、常にあざだらけになっていた。



 ある日、職場のトイレに連れ込まれ、暴力を受けた。

「何が気にくわないんだ?」と聞くと、

「ただ目障りだから」「ただ存在が腹立つから」だと言われた。


「お前、女みたいな顔だな」

「お前、本当に男か?」と胸ぐらをつかまれた。


たまたま他の従業員がトイレに入ってきて、何も起きなかったが、

「明日続きしてやる」と吐き捨てられた。


俺が何をした?

お前たちに危害を加えたか?


小学校時も皆の前で発表する時、足が震えてから、目をつけられクラスのリーダーにいじめられた。


担任が言っていた。

「いじめられる方が悪いんだ」って。



俺が悪いのか?


───


 はっと我に返る。


信号が青に変わる。

朝、バイクにまたがり職場に向かっていた。


(職場に行きたくない……)


ああ……行かなきゃ


だが、赤信号のトラックがこっちに向かってきた。


逃げなきゃ……。


(いや……もういいか……もうこんな人生嫌だ……)



────キキキーッ!!



────



 

「わぁあああ……!」

脂汗をかいて目を覚ますリク。



「はぁ……はぁ……」

「リク! どうしたんだ!」


「前世のことが……夢に出てきて……」


身体がガタガタと震え、

涙が止まらず、ボロボロと泣き出す。


「うぅ……」

「ダンさん……俺、生まれ変わって全部変わったつもりだった……」


「けど……くそ……まだあいつらのこと思い出して……身体が震える……くそ、根本は何も変わってないんだ……」


「ダンさん……俺怖いんだよ。弓矢も……本番で震えて出来なくなるかも……」


「なんで震えか止まらないんだよ……くそ!」

「くそっ!」

何度も自分の太ももを叩くリク。


「なんで俺は…こんなにも弱いんだ……くそっ…」

リクは拳を強く握り涙をこぼす。



「リク……」

ぴょんとリクの肩にのるダンさん

 

「おいらさ、いろんな霊獣使いと契約してきて、捨てられたって前に話しただろ?」

「うん」


「おいら……そいつらのこと、怒ってないんだ!」

「なんで? 怒らないの?」



「怒っても意味がないから!」

「なんだよ……俺が子供だって言いたいのか?」


「違うよ! おいらはもう許したんだ!」

「許す? いじめたやつを? なんで?」



「……自分のために!」


「リク……ずっとそいつらのことや、前世でうまく出来なかった事を思い出と辛くない?」

「腹立つよな?」

「うん……」


「許すって、手放すことだよ。もういらないって」

「手放す?」


「そう……もうお前たちとの過去はいらないって手放す」

「もう必要ないって!」



「おいらは、土を豊かにする魔法しか使えないけど……」

「お前は“リク”って名前だろ?」

「……」


「土と″りく″は同じだからさ」


「もしかしたらおいらの魔法使えるかも」

「えっ……!」


「おいらにまかしとけ!」

 

「土を声を聞かせろ! そして″りく″を豊かに!」

 

リクの周りに神々しい光に包まれる。

「えっ……」

 

「リクの心、豊かになれ!」




 

──

 


 光の中、俺は前世のスーツ姿だった。


現場監督の二人が言う。


「おい、昼めしいこうぜ」

「事務所の隣のラーメン屋いこうぜ」


初めて職場で会った時だ。


中学中退の二人の事を馬鹿だなと

作業服の現場で、汚いなと見下して


俺は冷たく断ったんだ。


 

(……嫌われるきっかけは俺だった)

 

(ごめんなさい……)

 


(ああ……本当はこの二人と仲良くなりたかったんだ)


 

ボロボロと泣き出す……前世の俺。

 

「お前、何泣いてんだよ? 夜キャバクラ行くか?」

「……俺たちが奢ってやるよ」


(僕も傷ついたけど……)

(あなたたちを許します)


そして場面は変わる

アーチェリーを持って地面を叩く前世の

咲夜。

「こんな自分なんて嫌いだ! 嫌いだ!」


俺はリクの姿で、前世の咲夜と目が合う。


そして怒りに満ちた咲夜は話す

「なんだお前? 咲夜の人生が嫌でトラックにわざと轢かれたんだろ? 逃げたんだろ?」


「……」

「俺は…もう逃げない」

「前世の咲夜が頑張ったから今の俺が存在するんだ」

「だからもう俺は…過去の自分を否定しない!」


咲夜は表情を変えた

「僕は……弱いよ」


「俺は弱いままでありのままの咲夜を受け入れる」

「俺は……もう俺自身を絶対否定しない!」

リクは昨夜に向けて手を差し出す。


「初めて俺の事肯定してくれてた」

昨夜は陸の手を取り。


「ありがとう」

笑顔ですっと消えた。



 

───



 はっと意識が戻る。目には涙を溜めていた。


目の前にはダンさん。

 

「リク? 元気になった?」

「ダンさん……ありがとう」


ダンさんを手のひらにのせて、また涙がこぼれる。


「ダンさん……すごいよ……何……その魔法……」

「おいらは土や陸を豊かにする魔法が使えるのだ!」


ドヤ顔するダンさん

「怪我とかは治せないけど!」



「すごいよ……ダンさんありがとう……」

「おいらたち相棒だろ!!」


「リクは過去と向き合って偉いと思う!!」

「自信持てリク! もう大丈夫だ!」



ボロボロと泣くリク。

「うぅ……ありがとう」



リクの涙を浴びるダンさん……

 


「ぅ……う……リク……」

「ん?」



 

「塩水は……おいら死んじゃう」


クタッ……となってるダンさん。

 

「わぁあ!! 水! 水! みずー!」

 




(ダンさんはやっぱり最高の相棒だ………)



 


───


──2日後


白霊米はくれいまいの田んぼ近くで、狼型の魔物がいきなり姿を現した。


「リク、気をつけて!」

「ドラコ、ハンナ、見守って……!」


村人は叫びながら非難する。


でもリクの内面は、なぜかすごく静かだった。

恐怖も、迷いも、ただ一つ――鮮明に打つことだけを想い描く。


ギギギ……と弦を引き絞る。

シュッ……シュバッ!


矢は、狼の目を正確に射抜いた。


──初めて、本番で当たった。


嬉しさと達成感で、思わず涙がこぼれそうになる。


(……異世界に来て、やっと成功した気がする)


仲間がいて、ハンナやドラコ、そしてダンさんが傍にいてくれる。

本当に良かった。


リクは深呼吸をし、胸いっぱいに安心と誇りを感じた。

(俺は……もう逃げない。前に進むんだ)




続く


※深層心理の癒し方を参考にしました。

※改稿で癒しの後、狼型魔物を仕留めるシーンを追加しました。

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