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感情が天候に反映される特殊能力持ち令嬢は婚約解消されたので不毛の大地へ嫁ぎたい ~魔物を薙ぎ倒す国王陛下に溺愛されて幸せです~  作者: かのん


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 突然声をかけられたことで、びくっとしてしまったがこのままではいけない。


 私はアズール様におしえてもらったことを想いだし、背筋を伸ばして胸を張る。


「えぇ。シュルトンの者です。貴方は?」


 声は出来るだけ低くして、男らしくというのを気を付ける。


 すると男性は胸から金貨を取り出すと、それを私に投げてよこした。


 突然のことに私は慌ててそれを落とさないように掴むと、男は楽しそうに笑い声をあげた。


「ははっ。受け取ったな。よし、一日シュルトンを案内しろ。あと、暑い。飲み物を買ってこい」


「え?」


「さっさとしろ。俺はここで待っているから」


 有無を言わせない雰囲気の男。


 どうしてか従わなければならないような、そんな圧を放つ男性。


 しかも男はそう言うと、ポケットから小さなスケッチブックを取り出すと、絵を描きだした。


 私は困惑しながらも仕方ないとため息をついて飲み物を買いに向かう。


 こちらの様子を見ていた飲み物やの店主は、心配そうに呟く。


「大丈夫ですか?」


「えぇ……あ、いや、どうにかするので大丈夫です」


「何かあったらすぐに合図を出してください」


「ありがとう」


 私がシャルロッテだとシュルトンの人々は分かっており、何かがあったらすぐに知らせがでる仕組みになっている。


 なんだか皆に見守られているみたいでちょっと恥ずかしい。


 私は飲み物をもっていく。


 すると、男性は小さなスケッチブックをポケットへと片づける。


 ちらりと見えたが、かなり絵が上手いようだ。


「飲み物。どうぞ。これ、お金返します。じゃあ」


 飲み物を受け取った後、男は私の腕を掴むと、自分の横のベンチに座らせた。


「一度受け取った物は返すな。まぁいいじゃねぇか。なぁお前、名前は?」


 いたずら気な笑みで見つめられ、私は困ったなと思いながら言葉を返す。


「シエルです」


「シエルか。俺はレクス。よろしくな」


「どうも」


 よろしくするつもりはないが、強引な男だ。


 私は出会ったことのない雰囲気の男性だ。


 私はちらりとその姿を見て違和感に気付く。


 男性の風貌は異国の雰囲気がただよっていた。


 切れ長の煌めく瞳と、長い髪はそこにいるだけで女性を引き付けるのだろう。


 周囲を見れば、女性達がちらちらとレクス様を見ているのが分かる。


「女って言うのはうっとおしいな。はぁ。どこに行ってもこちらを見てくる。気持ち悪い」


 吐き捨てるようなその言葉に、私はドキリとする。


 そして女の人が嫌いならば私は近くにいない方がいいなとそっとその場を離れようとしたのだけれど、腕をぐいっと掴まれる。


「この街を案内してくれ。男一人だと女が寄って来るんだよ」


 そんなことがあるのだろうかと首をかしげたくなるけれど、確かに拾遺の女性達がちらちらとレクス様を見ており、うーんと唸り声をあげる。


「わ……私は、その……忙しいんです」


「忙しいって? さっきぼーっとしてたくせに?」


「……見てたのですか?」


「あぁ。ぼーっと空眺めてたから暇なんだと思ったんだよ。さて、行くか。最初は画材店、服飾店と雑貨屋と武器屋を案内してくれ」


「僕は」


「ほら、いくぞ」


 腕を無理やり引かれ、私は困ったなと思いながら断ることが出来なかった。


 こうなったらさっさと案内して終わろう。


 画材店に入ると、レクス様は楽しそうにスケッチブックに手を伸ばす。


「絵を描くの、好きなんですか?」


 つい尋ねると、素直にうなずかれた。


「ん? あぁ。絵を描いている時は、自由だからな」


 どういう意味だろうか。


 それから、シュルトンの店を次々に回った。


「シュルトンは地味だな。だが、悪くない。独自の加工技術は、強みになりえるな……シュルトンは今度どうなっていくか楽しみだな」


 レクスの言葉に、私はぱっと顔を明るくする。


「そうなんです。シュルトンには沢山の可能性があるんです!」


「あぁ。それはそうだろう。魔物の出現も減ったと聞く」


「そうなんです。ですから」


「だからこそ」


「シュルトンの未来は明るい!」


「シュルトンは、今後、道を誤れば亡ぶ」


 私はレクス様を見て、固まった。


 今、シュルトンが滅ぶと言ったのか。


 私はむっとするとレクス様はくすくすと笑い、私の頭を乱暴にわっしわっしと撫でた。


「お前脳みそあるのか? はっはっは。子どもは楽観的でいいな」


 子ども……レクス様は私を子どもだと思っているのか。


 驚いていると、レクス様は真面目な顔で言った。


「魔物がいなくなればこの土地は奪い合いになる可能性だってある。小さな国だ」


「リベラ王国が後ろ盾となります。シャルロッテ様のご実家がリベラですから」


 自分のことを言うのもおかしなものだと思いながらそう口にすると、レクス様はニッと笑う。


「俺だったら、ここをリベラの国落としの第一歩にする。だがまぁ、安心しろ。今の所まだ、魔物はいるようだしな」


 その時、カーンと大きな鐘の音が鳴り響いた。


 一つ鐘ということは、アズール様達の出撃だ。


 私は急いで大通りの方へと走ると、馬の蹄が大地を蹴る音が響き渡っている。


「アズール様……」


 皆が大通りへと集まり、出撃していく騎士達を見送る。


 その中に、アズール様の姿が見えた。


 どうか、無事に帰ってきてくれますように。私はそう願いぎゅっと手を握ると、アズール様と一瞬視線が合ったような気がした。


「ご無事で」


 にっとアズール様が笑い、駆けていく。


 勇猛果敢なその姿を、私は祈るように見つめたのであった。




アズールの出陣姿はめちゃくちゃかっこいいでしょうなぁ(*´▽`*)

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