父の想い 【天候令嬢発売記念】
今回はしゃっロッテのお父様のマロー公爵です。
彼、私の中ではイケオジのお気に入りキャラです(●´ω`●)
マロー公爵家当主であり、シャルロッテの父は、シュルトンから届いた手紙を読んでは閉じ、読んでは閉じを繰り返したあと、立ち上がると執務室を出た。
娘がシュルトンへと旅立ってから、公爵家は以前よりも静かである。
マロー公爵は、ふと足を止めて庭の方へと視線を移した。
それから、亡き妻の為にと作った庭へと足を向ける。
公爵家の庭だからこそ、美しく整えられているが、やはり人気がほとんどないために少し寂しい印象があった。
「……早いものだな……」
妻が無くなってから、マロ―公爵はこの庭に来ることがほとんどなくなった。
楽しい思い出を思い出して辛くなってしまうから。
だけれど、妻も娘も公爵家からいなくなり、ふと、今日は風に誘われるようにこの庭へと足を向けたのだ。
いつぶりだろうかと思いながら足を進めて行くと、妻が特に気に入っていた大きな木の前へとマロー公爵は向かう。
立派な木は風に揺れている。
「いつのまにこの木もこんなに大きくなったのか……」
時代は流れていくというのに、自分ばかりが取り残されているようだと、たまに思う。
「シャルロッテは元気だろうか……」
泣いていないだろうか、寂しくはないだろうか。
そんなことを一瞬思うが、先ほど読んだシャルロッテからの手紙には、どれほどシュルトンが良い国かが書き綴られていた。
きっと幸せなのだ。
マロー公爵は木に手を当てて、息を吐く。
「寂しいな……」
ぽつりとつぶやいた本音。
その時であった。
妻が好んでつけていた香水の香りがしたような気がして、マロー公爵は顔をあげた。
「……花?」
風に揺れて、花が咲いていた。それは妻の付けていた香水と同じ香りの花であり、マロー公爵はそれに手を伸ばすと、香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
その瞬間、突風が吹き抜けていく。
マロー公爵は風に誘われるように空を見上げた。
「あぁ……そうか」
空が青く澄んでいた。
そして虹がかかると、美しくきらめく。
「そうか……あの子は、元気なのだな」
マロー公爵は立ちあがると、庭から執務室へと帰り、それから執事へと向かって口を開いた。
「……今度、時間が空いたら……シュルトンに一度シャルロッテの顔を見に行くか」
執事は顔をあげ、嬉しそうに微笑むとうなずいた。
「お嬢様もきっとお喜びになると思います」
「うむ。では、それまでの間にシャルロッテへの手土産も準備しなければな」
「かしこまりました」
執務室の机へと向かったマロー公爵はどこか楽しげであった。
「さて、一仕事するか」
取り残されていると感じるならば動けばいいのだ。
そして、婿殿にはぜひともうちのシャルロッテをよろしくと念を押しておかなければならないなと、マロー公爵は笑みを浮かべたのであった。
最後まで読んでくださりありがとうございます(*´▽`*)
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