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第86話:明けまして運命の選択

6章! 最終章!!

 夏休みが終わると、何が始まる?

 知らんのか。2学期が始まるのだ。


「はぁ……。めんどくさ」


 我、1ヶ月引きこもっていた民。

 そりゃあ快適だったクーラー生活も、外に出なきゃいけない用事があれば全部なくなってしまう。

 というか、今までが文明の利器に頼りすぎていたのだ。


 1ヶ月ぶりの制服に着替えて、微妙な慣れなさ。

 姿見を見て、わたしこんな格好だったっけ? と、外行きの髪型に慣れないでいた。

 面倒くさくて髪型セッティングしてないことも多かったしなぁ。

 それを考え出すと、尊花さんとまゆさんには随分とだらしない格好を見せていた気がする。


 朝食を食べて、歯を磨いて。

 最後にローファーを履いたわたしは、扉を開けた。


「……あつい」


 モワッとした湿度と熱。

 もう9月だというのに残暑が厳しい。

 地球さんはもっとわたしたちに優しくしてほしいわ。

 こう、8月までは気温25℃ 9月からは20℃ぐらいのメリハリの付け方を。


 もっと言おう。人類に都合の良い天気になってほしい。


「なんでこんな燦々と輝いているんだろう。とける。しぬ」


 到底元アイドルなどという光景ではないのだが、わたしもうアイドルじゃないし、その辺バレる相手もいませんしーーーーーーーー!!!

 そーれーに。バレたところで、わたしの彼女たちが優しく慰めてくれるはず、さ!


「あー、遅いよー美鈴ちゃん!」

「ふあぁ……。ねむー」

「おはようございます、尊花さん、まゆさん」


 昨日約束した待ち合わせ場所にはすでに2人の姿があった。

 うーん、今日は数割増しでかわいい。制服にはやはりチカラがあるのだろう。

 チカラ is パワー。これが若さだ。


「美鈴ちゃん、見た目ちょっと手抜いた?」

「へ?! なんで分かるんですか?!」

「だって髪の毛梳かしきれてないし、ちょっと頬がたるんでるっていうか……。太った?」

「うっ!!」


 クリティカルヒット。彼女は優しく慰めてくれるはず、では……!


「確かに、ちょっと輪郭丸み帯びたねー。あんまり太っちゃうと嫌われちゃうよー?」

「ガハッ!!!!」


 優しく慰めて、くれ……。ない。

 むしろすでに失恋フラグが立ち始めている。

 痩せよう。努力を続けなければ、人は離れていく一方だ。


「まぁそんな美鈴さんもまゆさんは好きだけどねー」


 そう言いながら、まゆさんがわたしの片腕を引っ張って胸元に抱き寄せる。

 ……抱き寄せる?!

 え?! 何があった?!!

 待って、柔らか! 腕柔らか!!


 慌てて見る。うぉっ! でっか!!!


「あー、ズルい! 私も!!」


 そう言いながら、尊花さんが反対側の腕を胸元に抱き寄せる。

 ……抱き寄せる?!

 え?! 待って、何が起こっているの?!!

 あっ……。尊花さんも意外とあるのを思い出した。やわらか……。


「……あ、あの」

「「なーにー?」」

「アッ、なんでもないです……」


 無言の圧力がすごかった。

 というかさ。わたし、こんな役得でいいのか?

 2人に告白されて。2人を恋人にして。

 今はラブラブ恋人サンドイッチ。


 待って。わたし死ぬかも。幸せすぎて死んじゃう。

 2度目の命を燃やしてしまいますぅううううううううう!!!!


 ほら、なんか幸せすぎて時間止まった感覚あるし!

 ……え?


 ちらりと尊花さんとまゆさんの顔を覗き込む。

 まばたきしないし、口も開いたまま。

 マジで止まってる。止まってない?!


『そのとーりだよーん』

「うわ出た」


 わたしは2人の恋人に腕をロックされた状態で、カミサマを対面に据えることとなってしまった。なんてこったい。


『結論が出たようで何よりだねー』

「……まぁ」

『過去のトラウマも払拭して、夏休みが終わりハーレム生活。んー、青春ギャルゲーって感じー』

「どっちかというと百合ゲーじゃないですか?」

『そうとも言うー』


 クスクス笑いやがって。

 カミサマの言うとおりでものすごく癪だが、確かに過去のトラウマは2人のお陰である程度改善できた。

 人が怖いのは相変わらずだけど、それでも愛してくれる人がいるなら克服できそうな気がしてる。


 だから問題なのはどうして時間を止めてまでカミサマが現れたか、ということだった。

 わたしなんかしました?


『さて。キミが考えている、どうしてカミサマが出てきたかー、っていう話からしようか』

「なんか、今まで以上にワクワクしてませんか?」

『まーねー。このためにキミで遊んできたんだから』


 イラァー。

 人ではないからある程度は許せてしまうのが、さらにイラッと来てしまう。


『覚えてる? 汝、ハッピーエンドを目指せ。さすれば選択の機会を与えよう。ってやつ』

「…………」

『あ、覚えてないなこいつー』

「そんなこと言ってましたっけ?」

『はーい、読者の皆さんは「第6話:神託の乙女(陰キャ)」をチェックー。それからキミにはぽーい!』


 唐突にカミサマの手に野球ボールサイズの光の玉が現れたと思えば、それを両手で覆い、天高く振りかぶる。

 これ、わたしにも分かる。この人なんか投げようとしてるーーーーー!!!


「待って待って待って! それ死ぬ?! 死にませんよね?!」


 そしていつの間にか野球のユニフォームに着替えていたカミサマが、美神極まる片足を垂直90度に高めてから、思いっきり全力全心、全霊を込めた魂のストレートをわたしの頭に投げ込んだ。

 両腕はロックされている。つまり、直撃です。


「待って待って待ってーーーーー!!!!!」


 光の玉がぶつかった次の瞬間、蘇る『かつて存在していた記憶』。


 ◇


『汝、ハッピーエンドを目指せ。さすれば選択の機会を与えよう』

「……どういうこと?」

『神託の意味を解釈するのはカミサマじゃなくて、キミ自身さー』


 ◇


「え?! なにしたのこれ?!」

『忘れないように文字通り脳に刻んであげたんだよ。いつでも思い出せるね!』

「……あなた、邪神じゃないの?」

『いやいや、カミサマは神様ですゆえー』


 ◇


「…………完全に忘れてた」

『まぁ脳に刻んだなんて嘘だからねー』


 こいつ……。


 すべて思い出した。確か入学初日、まゆさんの攻撃によって気絶したわたしは保健室に連れて行かれた。

 そこで遭遇したカミサマに謎の神託を受け取っていたのだ。

 思い出させ方はさておきとして、ハッピーエンドは文字通り恋人を作ることだとも言っていた。

 尊花さんとまゆさんという恋人が出来たから、カミサマは多少強引でも『選択』をさせにきた、ってことか。


『そー。そのとーりー! 賢い子は好きだよー』

「……それで。その選択、ってなんなんですか?」

『簡単だよ。異世界に転生してきた人間がどういう末路を辿っているか。大まかに二通りだ』


 ――異世界でこのまま過ごすか。


 ――現実世界に戻って、もう一度人生をやり直すか。


「……は?」

『遊んだおもちゃは片付けなきゃいけない。最後にキミには2つの選択を用意した』

「待って。そんなの異世界で過ごすに決まってるじゃないですか。尊花さんとまゆさんがいるんだから」


 考えるまでもない。

 現実世界に戻ってまで、また人生をやり直す理由なんてどこにも……。


『現実世界に尊花ちゃんとまゆちゃんを連れていけるとしたら?』

「え?」

『要するに、恋人としての関係は失わないまま、あっちか、こっちか。それを選んでほしいんだよ』


 それって。どういうことだ?

 意味が分からない選択にただただ困惑する。

 えっと。尊花さんとまゆさんはそのままで、周りの人々は。それに自分も……。


「つまり『佐山奈緒』として暮らしたいか、『相沢美鈴』として暮らしたいか、ってことですか?」

『そうそう。どちらにも嬉しいことも、悲しいこともある。でも尊花ちゃんとまゆちゃんはキミ自身が勝ち取った者。置いてけぼりにするなんて言ったら、天秤に偏りが出てしまう。一般人として暮らしたいか。元アイドルとして日々を送るか。それがキミへの最後の選択だ』


 バカじゃないの。そんなの……。


「すぐに決められるわけないじゃないですか」

『ふふ、だと思ったよ。だから文化祭が終わった後、もう一度聞く。その時が本当に最後の時だ』


 ――悔いを、残さないでね。


 カミサマは邪悪に楽しそうな笑みを浮かべながら、わたしがまばたきをした瞬間にその存在そのものが消える。

 そして同時に時間が動きだしたのか、固まっていたわたしを心配そうに見つめる2つの目線があった。


「どうしたの、美鈴ちゃん?」

「あっ。い、いえ! なんでもないですよ!」


 『相沢美鈴』か『佐山奈緒』か。

 ははは……。冗談には聞こえない本気の選択が、わたしの頭の中に何度も反響していた。

大切な選択の話

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 長い休みが明けた後の学校、行くの面倒だな・・・となるのは覚えがありますね。誰しも一度は通る道なのかも。晴れて恋人になった三人。新学期が始まる朝からいちゃついて見せつけてい…
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