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42 屋敷(臨時休校)

 

 事件のパーティーがあった後、貴族には不必要な外出を控えるよう国王より伝達があった。もちろん王立学園も休校し、生徒は実家へと帰された上で捜査が行われているようだ。

 ルイス様もアランフォード殿下の指示で、側で捜査に加わっている。



 あの夜私とエミーリア様はすぐにアドロフ様とシーラ様と共に屋敷に帰って、休むことにした。

 アドロフ様には勝手に証拠集めで動いたことを咎められたが、最後は「リアのためにありがとう」と褒めてくれた。



 そして事件から1週間が経ち、ルイス様から事件の真相を聞けることになった。ルイス様の顔には疲労が見え、事件の複雑さが窺い知れる。



「義父様たちには報告し終わったからね……リアとセリアにも分かった所まで教えるよ。テオ、お茶を頼める?」

「かしこまりました。ルイス様のは濃いめにご用意しますね」

「うん、そうして……さて何から説明しようかな」



 クレア様はマンハイム子爵家とは血の繋がりはなく、魔力を保有していたため孤児院から秘密裏に引き取られた娘だった。


 引き取った当初にマンハイム子爵は一冊の乙女小説を与えたのだった。内容は可愛らしい少女が孤児院から引き取られ、全員に愛され、王子に見初められて結婚する物語。


 あまりにも自分の境遇に似た内容で、小説と同じ行動をとると現実になることが何度かあり予言書として信じ込んだようだ。



「お義兄様、クレア様も洗脳されていたということですの?」

「ある意味はそうだね。小説の本にも魔法が施されていて状況によって内容が書き換えられていて、その的確な変化で予言書だと信じたんだろうね」



 そして小説の内容と同じく装飾品を渡すと相手は自分を好きになり、思い通りに動くようになった。装飾品は通学生のクレア様が子爵家屋敷で寝ている間に枕元に置かれ、小説と同じ妖精の贈り物と信じ込んでいた。

 あの夜、マンハイム子爵家からは複数の洗脳の魔道具が見つかったそうだ。



「でもルイス様、私もブローチを渡されましたが、悪寒はあったものの洗脳された感じはなかったですよ」

「セリアは警戒心が特別強くなっていたか、クレア様の言葉に一切同感出来なかったんだろうね。あの魔道具を起動させるためには相手の心の隙が必要なんだ。大抵は自分の見た目を利用したり、相手が同感しそうな言葉を囁いて隙を作っていたようだね」


「そ、それだけで完全に洗脳されてしまうんですか?」

「いや、同じ事を繰り返して洗脳を深くしていくんだ。洗脳の浅い内は精神操作ができないし解術も簡単。だから長くクレア嬢といた者ほど術も多く発動され、深く洗脳していたようだね……ゲイル様とギュンター様は解術に時間がかかりそうだよ」



 もし私が少しでもクレア様を甘く見て、警戒を緩めていたら洗脳されていたのかと思うとゾッとする。

 クレア様を嫌悪していたエルンスト様でさえも引きずり込む恐ろしい魔道具だったのだ。彼は自力で正気を取り戻したように見えた。まだ洗脳が浅かったらしい。



「あら、グレン様はどうなさったの?ゲイル様、ギュンター様と同じくあのお方も随分とクレア様に心酔なさっていたわ」

「実はねリア……今回の黒幕はグレン様だったんだ。魔道具は全てグレン様の父ハーバー侯爵が用意したもので、グレン様はクレア様が取り巻きを落とし入れるように誘導していたんだ」

「そんな!」



 現在貴族には貴族尊厳派と国民平等派の2つの派閥がある。グレン様のご実家であるハーバー侯爵は尊厳派の人間で、今回の被害者はほとんどが平等派だった。恋愛にかまけてスキャンダルを起こし、平等派の権力を落とそうとしていたと推測されている。


 今回の騒動でまとめて敵対派閥の権威を失墜させるつもりだったらしく、マンハイム子爵家は使い捨ての駒だったらしい。本当はグレン様も洗脳された被害者面して、罪から逃れるつもりだったようだ。



「数年前の誘拐事件の関与もあるみたいだし悪質だよ。それに…………」

「お義兄様?」



 急にルイス様のお顔に影が落ち、言葉が止まる。苦しそうなルイス様に隣に座るエミーリア様が寄り添うが、なかなか強張った表情は戻らない。



「ルイス様、俺から話しますか?」

「大丈夫だよテオ、ちゃんと僕が話すよ。……今回洗脳された被害者を見て僕の本当の父親ザリア伯爵を思い出したんだ。そして残された遺品から今回のとほぼ同じ魔道具が見つかった……っ」



 ルイス様は苦しげに唇を噛みしめ、片手で目元を覆ってしまった。



「そ、それって……お義兄様のお父様は洗脳されて悪事を起こしていたということですの?でもそれって被害者なのに」

「もしかしたらね……でも確認することはもう不可能だよ、父にはもう会えないんだから」

「お義兄様」

「――――っ、ごめん。少しだけ甘えさせて」


 エミーリア様はそっとルイス様を抱き締め、ルイス様もエミーリア様の肩に頭を乗せるとそのまま静かに涙を流しはじめた。

 私とテオはルイス様が落ち着くまで、静かに二人を見守っていた。



 **********



「相変わらず黒猫宛の手紙が凄いな……使用人のスカウトに、お礼として宝石の打診、それに……嫁に来ないかって!?なんだこれ。セリアは嫁になんて行かないよな!?」


「テオ煩いよー行くわけないじゃん!黒猫時代と関係ない知らない貴族や商会の息子だもん!お金があってもお断り~なんで救済した子供と関係ないところからも手紙が来るのかなぁ」

 


 今は私の部屋で手紙の確認を行っていると、テオが紅茶を淹れに来てくれた。あまりにも量が多いので内容の確認を手伝ってもらうことになったのだが…………何故かテオが私以上に手紙の内容に焦っており、逆に私は冷静でいられる。



 救済した子供ならお礼がしたいとか、会いたいとか言われるのは分かるし、希望に応えても良いと思っている。

 しかし関係ない人たちの意図がまったく不明で裏がありそうで怖いだけだ。ハッキリ言って静かに放置で頼みたい。



 断りたい案件は全てアドロフ様にお任せ状態だ。特に使用人のスカウトに関してはエミーリア様が「人気取りでセリアを横取りするなんて許さないわ」とご立腹で、アドロフ様がやる気に満ちている。



 スカウトのお断りの返事もだが、恋文へと手法を変えた執拗な男性のアピールにはうんざりしていた。下心前提のスカウトとか止めてくれ。

 ツンデレ姫ことクリスティーナ王女殿下との文通で思わず愚痴を書いた2日後ピタリと止まった。誰から恋文が届いていたかは名前は伏せていたのに……ただの愚痴だったはずなのに……何をしたんだ?クリスティーナ殿下の情報網が怖い。



「セリア……学園では仲の良い男子はいるのか?」



 私が手紙を読みながら唸っていると、テオが急に真剣な顔をして聞いてきた。



「男子?仲が良いのか分からないけど、クラスメイトにはお世話になってるかな。あと今回の事件でアランフォード殿下と側近騎士のエルンスト様とはよく話してたよ」

「で、殿下?」

「ルイス様から聞いてない?調査の手伝いしてたの、お仕事仲間」



 今まで詳しく学園生活について聞いてこなかったテオから質問攻撃を受け、素直に答えていく。



「そ、そうか。俺やルイス様より親しいやつはいるか?親しくなくても特別な感じとか」

「特別…………うーん。今のところそれはいないね」



 特別と言われ一瞬ある友人の笑顔が思い浮かんだが、テオとルイス様ほど親密ではないので話題には出さない。

 そのあともテオは笑顔になったり、焦りはじめたり、また笑顔になったり忙しそうだったが、紅茶を飲み終えると難しい顔をして出ていってしまった。


 実はテオも学園に入って友達が欲しかったのかな?そう思って私はベッドに入り寝た。

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