行政高校とは、
世界観や設定を振り返る簡単な説明文 (プロローグのようなもの)です。
“法”こそが“正義”。“正義”こそが“絶対”。
それは日本と言う国の信念であり、国民の中で息づく常識だ。
例えどんな理由があろうと、どんなに幼かろうと、法を犯した者は命をもってして償わなければならない。何故ならそれが“正しい”からだ。
だが、全ての人間がこの考えを受け入れている訳ではない。
この国には二種類の人間が居る。
法に従う者、法に不満を持つ者。
国民の大多数は法を受け入れ、法によって作られた日常の中を生きている。
だが、それに対して10%にも満たない人間は反感を持っていた。彼らは納得できなかった。その“理不尽”な考えを、傲慢な主張を、何処までも非道な罰を。
それは他の日本人から見たらとても異常で、危険な思想に思えて、人は何時しかこの10%にも満たない人間たちをこう呼んだ――“Bloody-minded”(通称ブラッド)――法を受け入れず、犯罪者を受け入れる“非常識”、或いは“偏屈”な屑。
彼らはブラッドを“低俗な人種”と見なし、軽蔑し、冷たい眼を向けた。そこに肉体的な苦痛は伴わなくとも、ブラッドたちの心に深い傷を負わせた。ブラッドには物理的な居場所があったとしても、精神的に安らげる場所など無いのだ。
世界は今や精神主義社会。
“健全な精神”と“力”を持つものこそが上に立つことを許される。
そのトップを飾るのが機関士――行政機関に身を置く者たちだ。国で最も偉大な力を持ち、領土を守り、民を救い、秩序を作り上げる彼らこそが、国家の力であり、顔そのものだ。
行政高校――正式名を「国立行政機関付属高校」。
毎年、行政機関へ最も多くの卒業生を正式な職員として送り込んでいる高等行政教育機関として知られている。それは同時に、誰もが憧れる“行政機関士”(略称――機関士)を最も多く輩出しているエリート校を意味している。行政高校の卒業試験は、行政機関士試験と同等のもので、結果次第ではそのまま機関に所属することが出来るのだ。
この学校に入学を許されたということ自体がエリートということであり、それを知らぬものは居ない。
この高校は全国に八校設置されている。
最も厳しく、最も過酷な難題を強いられる環境。
誰もが機関士となることを目指し、崇高なる使命と信念を掲げる其処は“正義感”で満ち溢れた学生が集う聖地だ。
徹底した精神主義。
残酷なまでの実力主義。
それが、機関士の世界。
其処はブラッドと言う人種にとって、最も生きにくい場所なのかもしれない。
正義感の強い生徒たちが集まるからこそ、囲まれ、蔑みの目を向けられ、嫌悪と憎悪の悪質な感情で精神を蝕まれる。
例え、同じ新入生であっても、どんな才能があったとしても、ブラッドが平等に扱われることは無い。
彼らは何時だって“危険分子”として見定められる、“下等な”人種なのだから――。




