表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/28

「霞住はかわいいんだって!」

「お待たせいたしました~2ポンドリブロースとライス特盛が3つに、フィレステーキセット3つになりま~~す」


 ゆる~い感じのおねーさんが俺達が注文したステーキを次々とテーブルに並べる。


 木っ端たちを蹴散らしたのち、俺達は当初の目的である極厚ステーキを食べに来た。

 約1キロのリブロースを頼んだのはもちろん、俺、優真、花の三人で霞住たちはフィレステーキを頼んでいる。


 ジュゥゥゥという肉の焼ける音と一拍遅れて鼻腔をくすぐる食欲を掻き立てる匂いによって俺の口の中は大変な事になっている。多分、花も一緒だろう。


「うぉおおお! デケー! ちょー旨そう!」

「もう、食べていいんだよな!? なぁ、優真! いいんだよな!?」

「お前ら、少しは落ち着けって。ステーキ位でガキじゃあるまいし……」


 肉のエアーズロックを目の当たりにして子供の様にはしゃぐ俺と花をみて優真はやれやれと首を振る。


「だってよ~腹ペコの状態でこのフォルム&スメルは凶器だぜッ!?」

「ええい! やかましい! 貴様には羞恥心というものはないのか!」

「お前も大概声デカいけどな……」

「なんだと!?」

「まぁ、まぁ、小夜子。別にいいじゃない、この場所には私達しかいないんだから」

「そうですが……」


 いつもの様に俺に食いかかろうとする小夜子を宥める霞住が言う通りこのステーキ屋さんには現状俺達6人しかいない。


 と言うのも、先ほどの木っ端どもと花の戦闘のせいでただでさえ平日という事で少なかったお客さんのほとんどが立ち去ったため、現状アウトレットにいるのは俺達6人だけだと言っても過言ではない程に人がいない。


「貸切感があっていいですね」


 萌ちゃんも上機嫌だ。

 俺は鉄板の上で存在感を醸し出している肉の塊にフォークをぶっ刺し、ナイフを入れる。

 スーッとまではいかないが、それでもスムーズに切り離す事のできた肉をゴクリと喉をならしつつ頬張る。肉の甘みとニンニクがガツンと効いたソースがひと嚙みする度にじゅわっとあふれ出す肉汁とミックスされて俺の口の中は幸せいっぱいになる。一口飲み込んだら余計俺の空きっ腹を刺激したらしく、会話をすることなく次々と肉を口に運んだ。


「うまかった~しあわせだぁ~~」

「ふふふ、黒木君ったら」


 今にも昇天しそうな俺の反応が面白かったのか霞住がクスクスと笑いだす。


「なんとまぁ、零の言っていた通りだったとはな」

「もぐもぎゅ、本当、もぐ、だよな」

「花、食いながらしゃべるな」


 優真に注意され最後の一切れを名残惜しそうに飲み込む花。

 

「本当だよな。まさか、こんなに表情豊かな奴だったとは」

「事情があって、そうするしかなかったの。今まで気分を悪くするよう事をしていたらごめんなさい」

「いや、俺達は別にそんな事なかったから気にしなくていい、なぁ?」

「優真の言う通りだ。気にするな」

「ありがとう二人とも」

「言っただろ? めっちゃいい子だし、めっちゃ可愛いんだ霞住は」

「ちょ、黒木君、可愛いだなんて……」


 顔を真っ赤にしてもじもじする霞住。

 天使かよ!


「おい、貴様! お嬢様をたぶらかすな!」


 とまぁ、相変わらず俺に突っかかってくる小夜子。


「なんだよたぶらかすって、本当の事を言ったまでだよ俺は。てか、なんだ、お前は霞住の事可愛いとは思わないのか?」

「そんな訳ないだろ! この世でお嬢様以上に可愛い存在など居やしない!」

「分かってるじゃねぇか!」

「もぉお! やめてよ二人とも!」



「霞住の事情ってなんだ?」


 霞住が他人を寄せ付けないようにしているのは大体わかった。

 萌ちゃんの様に自分のせいで傷つく人を見たくないからだろう。だけど、亞聖学園に在籍する者はそのほとんどが良家の子女、誘拐などの危険が極めて高い。だけど、霞住の場合、いつも傍にいる小夜子をはじめ、おそらく駄犬どもだろう、霞住に見つからない様にかなりの数の護衛がついている。親はかなりの心配性だというのであれば、それに越したことはないのだが……。


「……それは……」

「それは、霞住が持つ力のせいだ」


 優真の言葉で、霞住と小夜子が顔を強張らせ「なぜ……それを」とつぶやく。


「優真、力とは?」

「【未来視】って言えばいいのか?」

「きさ――ッ!?」


 刀に手をかけ立ち上がろうとする小夜子のおでこを花が人さし指で抑え込む。


「ぬぁッ、う、うごけ、ない」

「まぁ、動けなくしてるからな。よく考えてみようか小夜子。もし、うちらが和奏の敵であれば、こうして仲良くステーキを食べて団欒する事なんてないから」

「そ、それは、お嬢様の護衛がいるから……」

「あぁ~ワンコの事? あはは、あんな奴ら護衛って言えないっしょ? そろそろ、気づいてるよな? うちらがどんな存在なのか」

「おい! 花ッ」

「うちらのこと、信用してもらうためだよ。小夜子達はべらべらと言いふらすタイプでもなさそうだし」


 確かに、霞住がベラベラと俺らの事情をバラすとは思わないし、思いたくない。小夜子は、霞住に従順だから霞住が口止めしてくれたらバラされることはないだろう。萌ちゃんもそうだ。萌ちゃんが俺らはが嫌がることはしないだろう。

 だから俺はーー。


「俺達は、元裏組織の人間なんだ」


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

感想、ブックマーク、評価点、いいねなど頂けましたら、

すごく励みになりますので、ぜひ、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ