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「えっ? そういうこと?」

「花は、何組なんだ?」

「B組だ」

「じゃあ、田母神さんと同じだな。仲いいの?」

「数少ない友人の一人だ、優真もよく知っているぞ? なぁ?」

「花を通してだけどな」

「それにしても、なぜ転入してきたばかりのお前が萌の事を知っているんだ?」

「いや、さっきさ――」


 田母神さんと知り合った経緯を説明した。


「黒澤のヤロウ……」


 花は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら焼き鳥を貪る。


「黒澤の事も知っているのか?」

「もちろんだ。あのオスは、事あるごとに萌にちょっかいを出して困らせているんだ!」

「おま、オスって……」

「それって、黒澤ってやつが萌ちゃんの事が好きでちょっかいを出してるって考えられねぇか?」

「いやいや、小学生じゃあるまいし。それに、竹刀で殴り掛かってたんだぜ?」


 俺が止めなかったら、田母神さんはケガをしていたかもしれない。

 好きな相手にそんな事ができるとは思えない。


「殺すしかないな……」

「物騒なこと言うなって」

「ふぅ~いかんなぁ悪いクセが……。まぁ、でも、お前が園芸部に入ってくれると言うなら放課後は安心できるな」

「萌ちゃんの事、頼むぜ?」

「おう! 任せな!」


 それから俺達は昔話に花を咲かせた。


 すっかり日も暮れ、辺りが夜の帳に包まれる。


「明日も学校だし、そろそろお暇しようか」

「そうだな」

「えぇ~もっといろよ~もっと昔話しようぜ~」

「隣に住んでいるんだからいつでもできるだろ?」

「それはそうだけどさ……てか、花もこのマンションに住んでるんだよな? 何号室?」


 そういえば部屋の番号を聞いてなかったなと思い、散らかったゴミを纏めてくれている花に聞いてみる。

 これから長い付き合いになる訳だし。


「私か? 優真、言ってなかったのか?」

「まぁな、お前の事は驚かせるために隠していたからな」

「まぁ、そうだな」


 花と優真が何か言いづらそうにまごまごしている。


「どうしたんだ? 花は、このマンションじゃないのか?」

「いや、違うんだ零。実は」

「花、俺から言うよ」


 優真が花を手で制す。


「零、実はな……」

「実は?」

「俺達一緒に住んでるんだ」

「ん? 一緒に? もちろん、部屋の割り当てがなくてとかじゃないよな?」

「あぁ、そういう事じゃない」

「つまり、あれか。そういう事なのか?」

「あぁ、そういう事だ」


 変な言い回しをしている俺達を見て、居たたまれなかったのか花が間に入ってくる。


「ああああもう、じっれたい! 私と優真は恋人の関係だ! それで一緒に住んでいる!」

「お、おう」


 花の勢いに気圧され、たじろいでいる俺に向けて優真は頭を下げる。


「零、すまん! 俺達三人の友情関係に水を差すような真似をして! いきなり一般人として生きる事になって、隣には花がいて!」

「互いに依存するようになって気づいたら恋仲になっていたんだ……すまない、零」

「いやいやいや、なんで謝んだよ!」

「だって、お前、”俺達の友情は永遠だ”とか言ってたじゃん。誰よりもこの関係性を大事にしてたじゃんか」

「まぁ、言ってたけど……恥ずかしいからやめてくれねぇかそれ」


 確かに言ったさ、拳を突き上げて言ったさ!

 ほらあれだ、若気の至りと言うか、恥ずかしい!


「”俺達の友情は永遠だ!”」

「だからやめろって、花! 懇切丁寧に拳まで突き上げてくれちゃってさ!」

 

 俺のせいで気を使わせてしまったのか。

 まったく、そんなこと気にしなくていいのに。


「お前らが謝る必要なんてねぇよ。お前らはあれか、二人が良い仲だからって俺をハブるのか?」

「そんな訳ねぇだろ!」

「アホな事言うな、殴るぞ?」

「こ、こえぇから拳を下ろせ花」


 こいつは口より先に手がでるタイプの人種だからやっかいなんだよな……。


「まぁ、そういう事だよ。お前らがどんな仲になっても俺達の友情は変わらない。それよりも何よりも、俺はお前達が生きていてくれてすげえ嬉しかったんだ。それでいいじゃん」

「零……」

「”俺達の友情は永遠だ!”」

「だから、やめろって! 花」

「ぷはははははは、何だよ、心配して損したよ」

「まったくだ」

「てか、そんな事を俺が気にすると本気で思ってた方が俺はショックだぜ?」

「悪かったよ」

「そうだ、零。萌なんかどうだ? 萌はいい子だぞ? あぁ見えて根性もある」

「いや、田母神さんが良い人なのはわかるんだけどさ」


 どうしてもあの子が……霞住和奏が気になる。


「無駄だよ、花。こいつは、今、冷血姫に首ったけだからな」

「はぁ? お前、頭大丈夫か?」

「お前、ちょいちょい酷いよな!?」

「よりによって霞住和奏なんて」

「だってよ、本当にいい子だったんだって! めっちゃ可愛いし……」

「確かに、顔がいいのは認めるが……なぁ?」

「いい子だというのが想像がつかん」

「まぁ、いいさ。分かって上げられるのは俺だけなんだ」

「いや、キモイから」

「……ひどい……」

「まぁ、約束通りいろいろと探ってやるから、あと腐れなく玉砕して萌ちゃんに鞍替えすればいいじゃん」

「そうだな、まずは粉砕してこい! 萌との仲は私が持ってやる」

「お前ら、本当にひどいッ!」


 こうして、俺は友人との再会を果たした。

 まさか、恋仲なっていたとは……。

 まぁ、俺としては知らないやつと結ばれるより、この二人が一緒になってくれた方がいいんだけどね。


「俺も彼女欲しいなぁ」


 俺は霞住の顔を浮かべながらそう呟くのだった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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