表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/28

「もう一人のダチ」

 田母神さんと別れ家路につく。

 当初の予定通り食料の買い出しをするために商店街に向かう。

 空腹も相まってか、見るモノ全てが旨そうに見える。

 結局、両手一杯にお惣菜を買い込む羽目になった俺はホクホク顔で家に帰った。


 時刻は十四時半。

 袋の中に入っている焼き鳥の香ばしい匂いが俺の空腹度を加速させ、それに比例して俺の足取りも速くなる。


「よし、ついた」

 

 自分の部屋の前に立つ。

 両手で持っていた袋を左手で持ち、右手でカードキーを取り出そうとカバンの中を物色していると部屋のドアが独りでに開かれ、

 俺は瞬時にバックステップでドアから距離をとる。


「誰だッ!?」

「誰だッ、じゃねぇよ! おせえんだよ」


 うん? この声は……。


「優真?」

「おう! お帰り」


 あれ? なんで?? ここ、俺の部屋だよな?

 俺は、表札の上に刻まれている部屋番号を確認する。


【3005】


「お前の部屋で間違いないぜ?」

「はぁ? てか、なんで俺の部屋にいるの? 鍵かけたよな?」

「俺がなんのスペシャリストか忘れたのか?」

「あ……ッ、潜入捜査……」

「おうよ! こんなマンションのドアなんぞお茶の子さいさいと言う訳よ!」


 優真はどや顔で俺にそう告げる。


「いや、確かに幾多の難関を突破してきたお前にとって一般人が暮らすマンションの鍵開けなんて余裕かもしれないけど、れっきとした犯罪だからな!?」

「そんな固い事いうなよ、家族だろ俺ら」

「いや、まぁ、そうだけどよ……じゃあ、俺がお前の部屋に勝手に入ったら?」

「そんなの、ぶっ殺すに決まってんだろ?」


 お前、何言ってんの?といった表情で、さぞ、当り前の様に答える優真。

 

「よし、なら取り合えずお前から死んでみようか?」


 満面の笑みでポキポキと指を鳴らす俺に対して、優真は「ば、馬鹿、冗談だって!」と慌てふためく。


「サプライズってやつを味合わせてやりたかったんだよ」


 まぁ、こいつなりに俺を歓迎してくれているのだろう。


「まぁ、いいか」

「いいんかい!」

「まぁ、お前が俺に害を為すとは思わないし、別に取られて困るような物もないしな」

「よく言うぜ。お前、通帳とハンコ、テーブルに置きっぱなしだったぜ? オヤジがせっかく用立てくれた物なんだ、もっと大事にしろよな。お前は昔からそうだ」

 

 うん? このパターンは!?

 や、やばい! 優真の説教が始まりそうだ。

 こいつ一度説教し始まるとめちゃくちゃ長いんだよな。

 てか、なんで俺が説教されてるんだ? 主の許可なしに人様の家に勝手に入っておきながら。

 ひとこと言ってやろうと思ったその時だった。


「いつまでやっているんだ、馬鹿どもが!」


 優真の背後からもう一つ影が現れる。


 癖のかかった綿あめの様にふわふわな黒髪を持つ俺と同じ年頃のメガネ少女。

 あれ? こいつ……まさか!?

 

「【エッジ】!?」

「久しぶりだな、ゼロ……いや、零と呼んだ方がいいか?」

「そっか……お前も、生きていたんだな……」

「まぁな」


 コードネーム【エッジ】。

【ベエマス】一二を争う刀剣使いだ。

 優真と同じく歳が近かった事もあり組織ではよく三人でつるんでいた。


「優真が生きていたからお前も生きていてくれたらと密かに願ってたんだ!」

「ふふ、お前と言うやつは相変わらずだな……まぁ、立ち話もなんだ、中で話そうじゃないか。さぁ、遠慮するな」

「いや、ここ俺んちだからな!? お前も相変わらずだな!」


 俺は、エッジに誘導されるがまま、玄関に入っていった。



「なんだ、これ」


 リビングに入ると、いつの間にか横断幕の様な物が掛かっていて、そこには【一般人の世界(パンピーワールド)へようこそ、零!】と書かれていた。


「いいだろ? お前が来るって聞いて優真と一緒に考えて作ったんだ」

「めっちゃくちゃいいよ!」

「良かったぜ、喜んでもらえたようで」

「ありがとうな二人とも。正直、俺、不安で不安でしょうがなかったんだ」

「それは俺もよくわかる。俺もそうだったからな」

「私もだ」


 二人ともうんうんと頷き、俺を肯定してくれる。


「だけど、お前達がいてくれるなら、すごく心強い! 不安なんかどっかに飛んでったぜ!」

「あははは、大げさなやつだな。だけど、俺も一緒だ」

「また、三人で楽しくやろうじゃないか」

「おう! よろしくな優真、えっとエッジは何て呼べばいいんだ?」

「花だ。風見 花」

「花か。改めまして、よろしくな優真、花!」


 俺達は固い握手を交わした。


 それから、俺が買ってきたお惣菜を肴に昔話に花を咲かせる。


 本当は外に何か食べに行こうと思っていたらしいが、俺が買ってきたお惣菜と優真が自分の部屋にあったワインを持って来て俺の部屋で再会パーティ―をすることにした。


 姿は未成年でも一応全員実年齢はアラサーだから酒飲んでも問題ないよね?

俺達は訓練されているため、いくら飲んでも酒で粗相をする事はない。人様に迷惑を掛ける事はないだろう。


 それにしても、お惣菜、たくさん買ってきてよかった。

 これなら三人の腹を十二分に満たせるだろう。


 それと、花にもオルトロスともめた時に紫響を呼んだ事を怒られたが、優真の話によると花も似たようなもので何度も優真に怒られていたらしい。


 相変わらず自分の事を棚に上げるのが上手いやつだよ、花は。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

感想、ブックマーク、評価点、いいねなど頂けましたら、

すごく励みになりますので、ぜひ、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ