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Lycoris radiata  作者: 緋泉ちるは
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ノアの策略

 村に戻ると夕飯の支度は整っていた。宴会ではないが、客人をもてなすためにいつもよりも豪勢な食事ではあった。

 その甲斐もあったのか、食事はお付きの人たちにも喜んでもらえた。

 お酒も提供したのだが、こちらも好評なようで何よりだ。…明日大丈夫かな?

 急な提案により露天風呂の準備は出来なかったがそれでも印象としては十分だろう。

 その後、もしもの為に用意しておいた客家?を案内しそこで休んでもらう事になり、ようやく長い一日が終わり、休めると思った矢先だった。


 〈万が一の事を考え、今日の警備はマスターが行うのが良いかと〉


 ノアが不穏な空気を感じ取ったのかもしれない。その進言を受け入れ、中央の櫓で過ごすことを決めた。


 「周囲の警戒は私がやりますので、マスターはその時までおやすみください」


 分身体を出したノアは当たり前のように私を背もたれに足の間に体を入れてくる。


 「もしかして、これが目的?」

 「何の事でしょうか?」


 白々しい。ノアの事だから二人になる時間を作りたかったのだろう。不穏な空気を感じ取ったと思ったのは私の勘違いのようだ。


 「流石に、この時期は冷えるね」


 熱変動耐性よもっと仕事をしてくれ。


 「そんな時はコレです!」


 ノアは毛布を取り出し、私の体に巻き付ける。こうなるから仕事して欲しいんだ。


 「まるで、マスターに抱擁されているようです……」


 ただ、一緒に毛布にくるまっているだけなので勘違いしないで貰いたい。


 「ところで、マスターあの鳥人の子には名付けはしないのですか?」

 「するつもりはないよ。村の住民ではないからね」


 コハクが特例なだけで、特例を重ねるのはよくないだろう。


 「そうですね。でも、もし名付けをするのであればどんな名前にするのですか?」

 「名づけは苦手なんだって。うーん……そうだなぁ」


 特徴としてはあの黒い翼だろう。黒い翼を持つ鳥と言えばカラスが真っ先に思いつくが、毎度そのパターンというのもなぁ。

 その時、ふとあの子の妹の事を思い出した。小さな白い羽を持った天使のように可愛かった子だ。

 白い羽の天使と黒い羽のあの子は…。


 「堕天使ルシファー…ルーシーなんてどうだろうね」


 流石に堕天使とは失礼か。礼儀正しいあの子に合わないかな。


 〈名付けに成功しました。鳥人族、鴉種は個体名ルーシーに命名。鴉種は八咫烏へと進化します〉


尻尾が一本消えた。

 振り向くと、そこには村長の娘がいた。


 「私が呼んでおきました」


 にっこりとノアが微笑んでいる。実に悪い笑顔だ。

 何度目の失敗か、ノアに周囲の警戒を任せると碌なことが起きないとわかっていたはずだ。

 ノアの本当の目的はこれだったに違いない。私に警備を進言したのも、具現化して二人きりになって甘えたのもカモフラージュだったのだ。


 「変な声が頭に響いたのですが……」

 「ごめん、ちょっと手違えで名付けちゃったみたい」


 説明しようがないよね。既にノアは私の中に逃げ込んでいるし。


 「名を授けてくださったのですか?」

 「うん、そういうことになるかな」


 これは、怒られても仕方ないよね。親でもない、しかも出会って間もない私に名付けされ、世界の言葉に認められてしまったのだから。

 ルーシーは体を震わせている。


 「ごめん。進化とか影響は多少出るかもしれないけど、無理して名乗る必要はないからね」

 「…………私はルーシーと言うのですね。ありがとうございます!」


 ルーシーは頭下げ、腰を90度に曲げ綺麗におじぎをした。


 「私……村長の娘と言われていますが、私だけ羽が黒く、皆から影では忌み子だと言われて来ました」


 忌み子とは望まれず生まれてきた子を指す言葉でもある。


 「私以外の家族は白い羽です。私だけが、黒い羽を持ち不吉な存在と言われていました。

それに加え、父の後を継ぐ子を求められている時に生まれたのが私でしたので尚悪かったのでしょう。女は姉一人で十分だと散々言われましたので」


 コハクほどではないにしろ、この子も苦労していたんだな。


 「それじゃ、妹も大変な目にあっていそうだね」

 「妹、ですか?」

 「うん、ルーシーがチビって呼んだ子」

 「あれは弟ですよ」


 どうやらまた勘違いしていたようだ。

 この世界の子供は区別がつきにくい、男の子だと思っていた子が女の子だったりするしね。

 割とつい最近のことだが。


 「最近よく考えていました。父の後を継ぐ弟が生まれた事により、私の存在意義は何だろうと。……と言いましても周りからの風当たりが少し強いだけで父や姉は良くしてくれてますけどね」


 味方でいてくれる家族の存在は大きいだろう。それだけでも、良かったと思える。


 「ですが、少々過保護すぎる面もありまして、今回の交流も恐らくですが父が心配してお供を付けたのだと思います。私も子供ではありませんし、もう少し自由が欲しいものです」


 思春期なのだろう。愛されたい、だけど自由は欲しい。そうやって自分の心と折り合いをつけて成長していく。一番多感な時期だ。


 「なので、今の私の気持ちはミナモ様に感謝の念しかありません」

 「だから、様はいらないよ」

 「いえ、ミナモ様には私の自由となるきっかけと存在意義を示していただきました。こればかりは譲れません」


 礼儀正しいと思っていたけど、もしかして思い込みの激しいタイプだったりするのかもしれない。

 私はそんな大層な存在ではないので崇拝するような目で見ないで頂きたい。


 「ですので、私を配下とし、旅のご同行をお許しください!」


 これも全てノアが悪い。一体私にどうしろというのだ。


 〈後衛職が少なかった為、安全を考慮致しました〉


 責任逃れをするつもりか、私が精霊さんと呼んでいた頃のような喋り方をしている。それも出会ったばかりの頃のだ。


 「それは、私の一存では決めれない。ルーシーにも家族がいるし、旅の主導は私ではなくコハクだしね」

 「わかりました。明日にでも父を説得しますので、ミナモ様はコハク様に説明をお願いします」


 なんか、私が協力することになってるけど、これが責任の取り方というものなのか。

 ちなみに、ルーシーがコハク様と呼んだのは、旅の主導がコハクと言ったのが原因らしい。ルーシーは私の配下なのでコハクも同じ立場にあると言っていた。あくまで私の配下ではあるらしいが。

 進化の影響のため、睡魔が襲い始めたルーシを送り届ける。


 「配下の私がミナモ様よりも先に休むなどできません!」


 などと、最後まで言っていたので無理をする仲間は旅には連れていけないと言ってようやく引き下がってくれた。

 仲間とか安易に使って大丈夫だろうか。

 その夜、ノアに具現化するように言ったが姿を現さなかったので、私が眠くなるまで永遠と説教をしようやく一日を終えた。

現在別の方

攻撃魔法は苦手ですが、補助魔法で頑張ります!

を集中して執筆しているので、こちらの更新は微妙なところです。

よろしければ、そちらの方もお楽しみください。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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