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Lycoris radiata  作者: 緋泉ちるは
33/34

コハクの武器と弓

 「ただいま戻りました。開門をお願いします」


 ココアが門番に声をかけると、私達の姿を確認した警備隊が仲間に声をかけ、門が開かれる。

 普段はそこまできっちりしている訳ではないが、初めての客人が来るかもしれないと伝えてあったので打ち合わせ済みだ。


 「何度か上空より見させて頂いてましたが、この村はすごいですね」


 周囲の事を把握するのは当然か。この場所に村が出来たことは鳥人族も知っていたようだ。遠目から時折観察していたらしい。

 そう考えると、露天風呂も改良の余地ありかな。

 案内はフラットにお願いした。

 外交はココアに任せるとし、村の案内は村の事情を幹部の中で一番理解しているフラットが適任だろう。

 ラテとアールは…戦術指南でもすればいいかな。なんせ、幹部の中でも脳筋だし。


 「ここの2棟は食糧庫になります。鳥人族の方々が食料に困っても融通できますので相談してくださいね」

 「それは、助かります」


 冬場となれば食料の調達は難しい。もし、秋に貯蓄が出来なければ少ない食料で冬を越すか、危険を冒して食料を探さねばならない。

 危険な理由は言わずもがな。冬に森を徘徊する生き物は同じく食料に困った生き物が多いからだ。

 フラットの説明に任せて大丈夫だろう。説明を聞いている鳥人族達の印象も悪くはない。まぁ、メリットばかり説明していれば当然だが。

 一応、モカにフラットの補佐を任せ、私とコハクは長老に頂いたアダマンタイトの加工の為、工房へと向かった。


 「まずは、鉱石の解析からだけど、貴女は村を見なくてもいいの?」


 フラットの説明を他の鳥人に任せ長老の娘は私達についてきた。


 「私達の知らない文化を知る事はとても大事なことですので」


 真面目か!


 「まぁ、見られて困る事でもないから構わないけど、邪魔だけはしないでね」


 鉱石の扱いは何よりも集中力との勝負だからだ。といっても今は武器を作る為の段階と言っていい。

 鉱石を解析し、コハクが扱う武器の考案もしなければならない。いきなりこの鉱石を使って武器を作るのは無計画もいいところだ。


 「鉱石の解析は…………に任せるとして、コハクはどういう武器で戦いたい?」


 今日の戦い方を見る限り剣術の型と守りをある程度ものになっている。どの武器を扱うにも基本が出来ているのなら次は応用だ。

 試し打ちした試作品をコハクの前に並べる。

 今、コハクが使っているショートソードは西洋刀に近い。刀とは違い、両刃刀ではあるが、切る事よりも叩きつぶすという意味合いの方が強い武器だ。

 それを除き、コハクの前に並べたのは以下の種類。

 日本刀

 バスターソード

 レイピア

 フランベルジュ

 ツヴァイヘンダー

 素材は木で出来ている為、姿だけだが自身が降るイメージだけでも持ってもらうのは大事だ。

 まず、手に取ったのは日本刀だった。


 「切るという点では良いかもしれませんね。こちらは、細くて不安です……」


 元日本人として日本刀を手に取てくれたのは嬉しかったが、しっくりこないようだ。レイピアは護身用に用いられる武器なので一応作ってみただけだ。

 武器を持ち替え、振り心地を確かめていくうちに候補は二つに絞られた。


 「見た目はこっちがかっこいいですが、使いやすさをみたらこっちですね」


 刀身が波うつように作られたフランベルジュを見て目を輝かせていたが、ツヴァイヘンダーを振るとしっくりきたようで頷いている。

 私の作ったツヴァイヘンダーは全長150センチほどの長さがある。コハクの身長とあまり変わらないが刀身の根元には刃をつけていない部分がある為、そこを握ることにより操作性が上がる仕組みになっている。


 「後は、もう少し刀身の幅を広げてもらえると助かります」

 「流石に重すぎて振れなくなるかもしれないけど、大丈夫?」


 アダマンタイトはさっきも言った通り、鉄に比べるとかなり重い。全く同じ武器を鉄とアダマンタイトで作ると倍近い重さになるようだ。

 なので、まずは鉄を使いコハクの要望の武器を作ることにする。作って扱えませんでしたでは話にならないからだ。

 鉄のツヴァイヘンダーの制作を弟子たちに任せ、ノアが鉱石の鑑定が終わったというのでそちらの話にうつることにした。


 「ふむふむ、なるほどね」


 アダマンタイトを手に取りあたかも自分で解析したかのように振舞う。気づかれると思わないが、一応ノアの存在を隠す為の処置だ。


 「扱い方は鉄岩石と同じで大丈夫かな。だけど、コハクの武器をコレだけで作るのには足りないかな。鉄と混ぜつつ、刃の部分とか重要なところをアダマンタイトを使えばいいかも」


 ちょっと待って。そんな事を私がやるの?鍛冶スキルがあるからって難易度高すぎやしませんかね?


 〈私がマスターの補助に入るので問題ありません〉


 だそうだ。これは骨が折れる作業になりそうだ。一度鍛冶の作業に入るとそれに集中するために身動きとれなくなるがコハクの為だし仕方ない。


 「アダマンタイト……父が持っていた鉱石はあの辺りで時々とれるので良ければ交流の品としてお渡ししましょうか?」


 それは助かる。しかし、全てアダマンタイトで作ったら果たしてコハクが扱えるかが問題だ。


 〈数年後、体がもう少し成長すれば可能かと。ただし、今のままでは戦力としては低下します〉


 それならば、却下だ。


 「ありがとう、その辺りは物々交換として今後お願いするかもしれないかな」


 必要ならばココア達が交渉するだろう。


 「わかりました。一応、父には報告だけしておきます」


 制作の方針は決まったので後は準備だ。とりあえず、鉄の試作品が完成するにまで最低一週間はかかるだろう。その間に作業工程を練らなければならないし、他にもやることあるので時間は長いようで短い。

 何よりも、後数か月しかこの村に居る予定はないのだから。


 「何か気になるのあった?」


 ノアと軽く打ち合わせをしていると、村長の娘が工房に飾られている試作の武器を見て回っていた。


「勝手に申し訳ございません。このような物はとても珍しくて」

 「ゴブリンとか倒したことないの?」


 普通に生活していたとしても鉄の剣などを持ったゴブリンに遭遇することはさほど珍しくはないだろう。


 「私達は安全の為にそういった魔物には近づかない様にしていましたので、間近で見る機会はありませんでしたので……」


 断崖に暮らしていればゴブリンの襲撃もないだろう。


 「その辺にあるのなら適当に持っていっていいよ。性能は保証できないけどね」

 「ありがとうございます。ですが、どれも私には扱えそうもないので、お気持ちだけ頂きます」


 よく出来た子だ。この子の爪の垢を煎じて飲ませれば、幹部たちも少しは礼儀正しくなるだろうか。忠実と礼儀正しいは違うという事を理解してもらいたい。何か私の扱いが雑になってる気がするしね、最後に「ミナモ様ですから」で終わらせればいいと思ってるみたいだし。


 「それなら、これなんてどう?」


 村で扱っている弓を幾つかを並べる。

 日本の弓道でよく見られる和弓に、機械弓とも呼ばれるクロスボウ、日本の和弓は長弓の部類に入るがその逆の短弓である遊牧民が使っていた複合弓やアーチェリーという競技に使われる世界的に最も普及しているというコンパウンド紹介した。

 剣などは見た事はあるようだったが、弓という物を見るのは初めてだったらしい。手に取り珍しそうに眺めている。

 しかし、使い方はわからないようなので、矢を番えないでお手本を見せてあげることにした。


 「こうやって、弦を引いてみて……離す!」


 パシュンッ。

 張られた弦が元に戻り鋭い音をたてる。

 見よう見まねで村長の娘も弓を引き……離す。


 「きゃっ!」


 ひっくり返った。弓にも反動はあるので素人が知らずにやればこうなるのは仕方ないよね。


 「大丈夫?」

 「はい、醜態を晒してしまいまして申し訳ございません」

 「気にしなくていいよ。最初はそんなものだからね」


 その後も弓が気に入ったのか様々な弓を引いていた。


 「どう、気に入ったのあった?」

 「はい、これが凄く手になじむ気がします。しかし、これはどういったものなのですか?」

 その説明がまだだったか。


 「それじゃ、少し外にでようか」


 お付きの鳥人に村を少し離れることを伝え、森の中を二人で歩く。コハクは弟子たちにお願いし作ってもらった木刀のツヴァイヘンダーの鍛錬の為に離れていった。


 「この辺でいいかな」


 村からそう遠くない場所で試し撃ちをする事にした。


 「使い方はこんなかんじ、矢を番えてさっきの用量で……放つ!」


 カコンッ!私の矢が一本の木に刺さる。


 「おぉ……」

 「こんな感じかな」


 感嘆の声をあげてくれたが、実は弓を扱う私のセンスは皆無だ。実は、矢が刺さったのは私が狙っていた隣の木だ。突風でも吹いたのかな?


 「わかりました」


 矢を渡し、見よう見まねで弦を引き狙いを定めて矢を放つも矢は木にすら当たらず森の中へ消えていった。


 「難しいですね……思った以上に反動がありました」


 そりゃそうだ。何事も積み重ねが大事。一朝一夕でーー。


 「あ、当たりました!」


 見てしまった。村長の放った矢が私の放った矢に当たるのを。もしかしてそれを狙ったのかな。


 「次は飛行状態を試してみたいと思います」


 羽を広げ羽ばたくと体が5メートルほど浮き上がる。羽が動くたびに状態も上下しているので体を固定することは出来ないだろう。

 流鏑馬など馬に騎乗して放つよりも難しいのではないか?何よりも飛んでいることにより、地上に居るときよりも枝や葉が視界を悪くするだろうし。


 「ーーーーーッ!」


 先ほどよりも強く引かれた弦を離すと同時に空気を裂く音が通り過ぎる。


 「外してしまいました」


 残念そうに地上に降りてくる村長の娘だが。

 失敗?とんでもない、刺さった矢を狙ったとすればそこから2センチとずれていない。


 「驚いた。うちの誰よりも上手いと思うよ」


 制止した状態であれば、同じ精度を誇る警備兵もいるかもしれない。しかし、あの状態でその精度を披露するのは無理だろう。


 「そう言って頂けると自信がもてます。ですが、慢心せず鍛錬に励みたいと思います」


 褒めても調子に乗らないところも評価できる。幹部たちはモカを筆頭にやたらと褒めてもらいたそうにするからね。

 そこは種族の差なのかもしれない。犬は褒めてもらうのが好きみたいだし。

 矢は消耗品なので撃ち尽くした所で村に戻る事になった。まぁ、私は一発も撃たなかったけどね、実力の差が露呈されて惨めな気持ちになるだけだし。

弓は鳥人族の子に渡した弓の事でした。

コハクは小さいので大きい武器を渡したいですからね。

小さい子に大きな武器……自分は好きです。

皆さまはいかがでしょうか?

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