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Lycoris radiata  作者: 緋泉ちるは
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鳥人族との出会い

「この度は我ら部族をお助け頂きまして誠にありがとうございます」


ファイアーアントを討伐後、私達は鳥人の住む穴の中へと案内された。

 入口自体は自然に出来たものに見えるが、中は人の手が加えられているように見える。長老だという男の部屋から何本もの横穴が繋がっているのがわかった。


 「被害はなさそうなので安心しました。申し遅れましたが私はココアと申します」


 今後の事も考え、会話はココアに任せる事にした。


 「名前持ちですか……珍しいですな」


 長老は立派な顎髭を撫でながら関心を示した。この辺の獣人に名づけの文化がないのは本当らしい。長老の横に控える若者たちも驚きに目を見開いている。


 「私達の村の者たちはこちらのミナモ様より名を頂戴しておりますので、さほど珍しいものではありませんよ」


 ココアに紹介され、軽く頭を下げる。


 「これは……高貴なお方だ。力強い魔力が溢れでているのがわかります」


 鑑定持ちか。私の体ににピリっとした感覚が走った。干渉されているということがわかる。目がいい種族とは聞いていたが、本質を見極める事に長けているという意味合いでもありそうだ。


 「それで、本日ここを訪れた理由ですが」


 ココアが私と長老の間に割り込み話を再開させた。私が鑑定された事がわかったのだろう。こういった辺りココアに任せて良かったと思う。


 「交流ですか……」

 「交流といいましても、今回のような有事に助け合いが出来る関係を築く事を目的としております」

 「ファイアーアントの襲撃すら対応出来ない我らがお役に立てるとは思いませんが」


 長老の眉間に皺が寄る。感触としてはよろしくない。


 「私達は翼を持たぬゆえに森の情報には疎いです。ですが鳥人である貴方たちの上空より森を観察できる翼、遠くまで見通す長けた目は私達が何よりも欲しているものです」


 戦いは起こる前から始まっている。

 情報があれば対策をたて、実行に移すことが出来る。エリアボスを撃破した時も、警備隊が先にエリアボスを発見を出来た事で被害が出なかった。しかし、毎回安全に発見できるとは限らない。

 情報の重要性を幹部たちには説明してある。それを提示しつつ、交渉に相手をあげつつ鳥人の必要性を説明するのは素人にしては上出来じゃないだろうか。


 「なるほど……」


 長老は少し考えた。


 「決断とは行きませぬが前向きに検討させていただきたい」


 前の世界では、断りの上等文句だが……この世界ではどうだろう。


 「わかりました。もう一つ提案なのですが、私達の村を知っていただくために、そちらから数人、私達の村に暫く住んでみませんか?」


 これは事前に打ち合わせした通りだ。話すよりも見て知ってもらえる方がいいと私が提案した。


 「ふむ……それは構いませぬが」

 「では、私が行きます」


 黒い翼の少女が名乗りをあげた。ファイアーアントに襲われていたあの子だ。


 「良いのか? 危険があるかもしれぬぞ、娘よ」

 「父上、それは助けてくださった恩人に対して失礼ですよ」


 確かに、立場としては私達が鳥人達を救った形だ。しかし、それはそれ。私も村長だ、仲間の安全を第一に考える長老の発言は理解できる。

 ココアもお気になさらずと言っている辺り理解しているみたいだ。

 長老の娘は張り切っている。危険な状況を救ったのを一番まじかで見たのでそれなりに信頼は得られているようだ。

 長老は迷ったあげぐ、お付きを男女一人ずつつける事を条件に交流を娘に許した。


 「姉上、行って参ります。チビも姉上の言う事をちゃんと聞いてね」


 彼女は3姉妹らしく、姉と妹がお見送りに来ていた。


 「妹をよろしくお願い致します」

 「ばいばーい」


 年はそれなりに離れているらしい。姉は純白の翼が印象的で、妹の方はまだ生えそろっていない翼を背中につけ、よちよちと歩いている。うん、天使みたい。


 「お待ちください」


 外に出ようとした時、長老に呼び止められると手に輝く鉱石を渡された。

 「恩人をこのままお返しになる訳には行きませぬ。先ほど鑑定を行ったところ、貴女は鍛冶のスキルを持っておられるようですな。ならばこの鉱石を扱いえるやもしれませぬ」

 見た事のない鉱石だった。見た目の割にずしりと重い。


 〈この鉱石はアダマンタイトです〉


 武器や防具に使われる有名な鉱石として、ミスリル、アダマンタイト、オリハルコンなどが存在する様だ。

 特徴としては、ミスリルは魔導伝達に優れ、魔法を付与しやすくアダマンタイトは魔導伝達には低いが、非常に頑丈で魔法を扱えない者が好む鉱石らしい。頑丈な分、ミスリルよりもかなり重いらしが。

 そして、オリハルコンはミスリル以上に魔導伝達に優れるうえに、アダマンタイト並みの頑丈さを持つのに二つの鉱石より軽いという特徴を持つ。

 その分、入手難易度は高いのでお目にかかることはなかなかないようだ。

 ちなみに、私の双刃剣の素材はヒヒイロカネというらしいが、オリハルコンよりも少し希少のようだ。流石に、女神が創った武器なのでノアの知識でも全ては理解できないらしい。


 「有難く頂戴致します」

 「いえ、先ほどは前向きにとお話ししましたが、この交流が有意義になる事を期待しております」


 本音と建前ってやつだね。わざわざお見送りに来てくれたのだ、こっちが本音と捉えても良いだろう。

 長老のお見送りを受け、私達は村へ戻る事になった。


 「改めて、自己紹介するね。私はミナモ、一応村長をやっています」

 「ミナモ様ですね。よろしくお願いします」

 「様はつける必要はないよ。私達はもうすぐ村を離れる事になるし」

 「そ、そうなのですか……」


 今後の交流の事を考えると私達が居なくなることは早めに伝えておいた方がいい。いざ、交流が始まり、私達が居なくなって宛が外れたとなれば詐欺みたいだし、その後の関係に影響が出る可能性もある。

 それを伝えると、少し残念そうにしているのが気になるが、助けてあげたくらいしか関わりないし、変な展開にはならないよね。

 それぞれ、自己紹介をすまし。帰りながら反省を行う事になった。

 モカは勿論、ココア達とラテ達の成長は順調だろう。まぁ、アールに関してだけは不憫としか言いようがないが、本人がそれで良しとしているのなら特にいう事もないだろう。

 問題は、コハクか。


 「今回の相手でコハクの攻撃力不足が露呈されたね」

 「僕もそう思います」


 硬い相手に対しての攻撃手段が乏しいのは問題だ。甲殻キラーを取得するのも一つの手かもしれないが、硬い相手はそれだけではない。

 この森に生息していないゴーレム系の魔物や金属の鎧を身に着けた相手と戦う事も考慮しなければならない。


 「この鉱石で武器を作るのもありだけど……」


 問題は重量だ。鍛錬で力をつけたとはいえ、あまりにも重い武器は取り回しで苦労しそうだ。

 「武器と心を通わせれば扱えるものだとわかりました。なので僕が頑張れば大丈夫だと思います」

 コハクの戦い方は、アグレッシブな戦いはしない。相手の攻撃を捌き、守り、反撃。無茶をしない確実な王道スタイルだ。速さを求めるのならば軽い剣は有用だが、コハクのスタイルならば重くても扱えさえすれば大丈夫かもしれない。


 「それじゃ、帰ったらコハクの武器の制作に取り組もうか」

 「お願いします!」


 そのやりとりを鳥の少女が羨ましく見ているのに私は気づいた。


 「どうしたの?」

 「いえ、名前があるのも良いものだと思いまして」


 実際便利だしね。娘や妹と呼ばれるのが当たり前だったとしたら、名前で呼び合う私達は新鮮に感じるだろう。

 それに、お互いの距離が近く感じるのかもしれない。


 「残念だけど、村の住民にしか名前はつけない様にしてるから、そこは理解してね」

 「わかっております。一つの文化として参考にさせて頂こうと考えていただけですので」


 参考にして大丈夫なのかな。普通の人が名付けを行うのは危険ではないだろうか。


 〈ただ、呼び合うだけの名付けでは問題ありません〉


 なら、大丈夫か。

ちなみに、お供の人たちは上空を飛びついてきている。私達とその周囲を2重に警戒をしているようだ。いきなり無警戒で馴染んでこないあたり逆に信頼できる。

 こちらとしても、交流を行う価値がある相手であるのか見極める必要がある。頭の足りない相手と交流する必要もないからね。

 上空を飛んでいるにも関わらず、お供の人たちは私達を見失わずに村へとついてきたところを見ると、思った以上に優秀な目を持っているようだ。

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