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Lycoris radiata  作者: 緋泉ちるは
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幹部VSファイアーアント

 結果から言うと戦いは直ぐに終わった。


 まずは、一番近くで戦っていたモカだが。


 「宿り木よ、その種を植え、対象を支配せよ。 パラサイトシード」


 指で小さな種を弾き、蟻の頭に当たると種は発芽し蔓が頭を突き刺した。蟻は一瞬だけ痙攣をすると、体の向きを変え、もう1匹の蟻に噛みついた。


 どうやら、あの種で蟻の行動を操っているようだ。


 足と足が絡み合い、団子のように地面を転がる蟻にモカが止めをさす。


 「全てを呑みこみ、捕食者を溶かせ。グラトニーシード」


 蟻の頭上に影ができ、大きな口を開いた植物が蟻を丸呑みにした。ウツボカズラのような見た目をしている植物は村より南に生息していた食虫…食魔物植物だ。


 本来ならば、木々の間に蔦を張り通りすがった魔物を頭上から丸呑みをする植物系の魔物に属するらしい。


 モカの戦い方は独特だった。様々な種を持ち歩き、植物操作によりその場にあった種を使い分けている。私とコハクが前に出ることが多くなりそうなので、回復も出来るモカは後方から戦える手段を考えたようだ。ただし、ただの中衛だと思って狙ったら痛い目にあうけどね。


 次にココアとフラットだが……。


 「ちゃんと動けているね」


 合体した二人は玉を動かしながらも蟻の攻撃をしっかりと避けていた。体の所有権はどうしているんだろう。


 だが、それもすぐにわかることになる。


 「この攻撃じゃ、効果は薄いか」


 「みたいです。ココアさん少しの間お願いします」


 「あぁ、わかった」


 「水よ……凍てつき雨となれ」


 浮遊していた玉が形状をかえ、鋭くひし形の槍へと変化を始めた。


 「ココアさん代わります!」


 「わかった。 内に燃える炎を目を覚ませ!」


 「「凍てついた炎!」」


 無数の槍が蟻の骨格を貫き、傷口が燃え上がった。氷の中に炎を閉じ込め、氷が突き刺さった時に炎が体内を燃やしているようだ。


 魔法を練るときに所有権を移しあっているようで鍛練の成果が見てわかった。


 「びりびりする!」


 「いい加減なれてよー」


 緊張感の薄い声の方を見ると、尻尾を逆立てた狼の姿があった。


 静電気が弾けるように体の周りで音をバチバチとならしている。


 「いくよー!」


 ラテ達の姿が消える。


 今回は高速思考を最初から使用していたので見失う事はなかった。


 木々を足場にし飛び跳ね、崖を駆け、縦横無尽に動き回っている。蟻に対して明らかにスピードオーバーだ。現に二人を見失った蟻のタゲが他の人に向かおうとしている。


 「いかせないよー」


 「いたっ!」


 爪が足を引き裂き、尻尾が蟻の体を叩きつけ壁へと吹き飛ばす。アールは体をぶつけて攻撃してみたいだし、捨て身みたいなものか。


 それでも、バランスを失ったりしない辺りそれも鍛錬済みなのだろうか……不憫だ。


 「アール、あれやるよー」


 二人が空中へと飛び上がる。


 「ちょっと待てって! 心の準備がーー」


 空中でもバランスを失わない様にアールが小刻みに尻尾を揺らす。


 「待てないよー。 黒き稲妻をその身で知れ……サンダーボルトー」


 締まりのない詠唱でもイメージさえあれば発動する。


 「あばばばば!」


 尻尾が蟻の方へと向くと、そこから眩い青い光が放たれた。


 ドカンッ!


 断崖を削り、稲妻が弾ける。激しい埃が晴れるとそこには赤い甲殻が四散し、辺りが黒く焦げていた。派手なうえに高火力、4人の中で一番火力のある攻撃だろう。汎用性で言えばココア達の方が高いだろうが。


 「勝利ー!」


 「まだびりびりする……」


 合体を解いた二人の姿は極端だ。


 ラテの合体前の整った姿に比べ、アールは金髪が静電気であちこちに跳ねている…不憫だ。


 「アールも魔法使えて嬉しいでしょー?」


 「違う……こんなの魔法じゃない」


 終始ラテのペースに振り回されているアールだが実際はどうだろう。


 少し前に、鍛錬の進行具合を確認するために二人の繋がれた手に向かって木刀を振ったことがあった。

 その時にアールはラテの手を引き、抱きしめるようにその攻撃を避けていた。普段はラテに合わせているだけで、見えないとこではもしかしたアールが引っ張っているようにも見えた。


 どちらにしてもいいカップr……じゃなくてコンビになっていくだろう。


 派手な戦闘の隣では地味な戦いが演じられていた。


 「か、硬い!」


 鉄のショートソードで戦うコハクは硬い甲殻をもつ蟻とは相性が悪そうだった。


 決定打がないというだけで、戦闘自体はコハクが優勢に事を運んでいる。


 迫る来る顎を剣でいなし、弾き、足に隙を見てダメージを加えている。


 守りを徹底させた成果は現れている。その証拠に未だに無傷で戦闘を行っている。


 名付けによる成長も見て取れた。一番の課題であったスタミナは体が成長すると共に大幅に増えた。モカとの模擬戦でも1時間を超えても平気なほどだ。


 しかし、精神面はすぐに成長できるものではない。明らかにモカよりも格下相手に若干ながら息を切らしている。


 命のかかった戦闘は安全が約束された模擬戦とは緊張感が違う。


 「コハク、体に力入りすぎ。無駄な体力を使わない事」


 「はい!」


 本番中にアドバイスするのは間違っているかもしれない。しかし、実践こそ一番己を知る事のできる機会でもある。みすみす成長の場を逃す方が勿体ない。


 コハクは敵を前に、目を瞑り剣を下げた。


 その隙を見逃すほどファイアーアントも馬鹿ではない。コハクくらいなら簡単に切断できる強靭な顎が迫る。


 大丈夫。コハクの肩から力が抜けている。模擬戦の時と同じ気負いすぎていない姿だ。


 目を開くと、迫りくる顎を紙一重でよけ、同時に触角を切り落とした。


 蟻の触角は、熱・光・空気・音などあらゆる感覚を集めている。これを失う事は蟻としては終わりだ。

 コハクは戦っている最中に気づいたようだ。相手の攻撃を避けた際に、目ではなく初めに触角が反応していることに。


 ファイアーアントの体がフラフラと揺れている。バランス感覚がとれない、私達で言う脳振とうのような状態か。


 最後の抵抗で暴れまわるファイアーアントの攻撃を避けながら、首に何度もダメージを蓄積させていく。触角を失い、予期せぬ行動も落ち着いて首を的確に切る。


 何回目かわからぬ攻撃の末、ようやくファイアーアントの首が地面へと落ちた。暫く体をフラフラと揺らした後、ようやく全てのファイアーアントの討伐が終わりを告げた。

いつもお読みいただきありがとうございます。


少し短めです。


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