ノアと入浴
かけ湯を行い、ゆっくりと湯に浸かる。一度冷めた体に温かさが染み込んでくる。
「あー。やっぱりお風呂はいいわぁ」
「そうですね、私も初めての経験ですが良きものだと感じます」
まぁ、予想してたから驚かないけどね。あれだけ張り切っていたのは裏があると言っているようなものだ。
「ノアも温かいって感覚はあるんだ」
「でなければ、分身具現化のスキルはとりません!」
匂いもわかるみたいだし、ほぼ実体みたいなものなのかな。
「あー……マスターのお肌すべすべです~」
「さり気なく、くっつくな!」
「ゴボゴボゴボッ」
くっついてきたので遠慮なく頭を押さえて沈めてあげた。
「し、死ぬかと思いました」
「スキル解いて私の中に戻ればよかったじゃない」
「いえ、マスターとのスキンシップの為ならこれくらい何ともないです!」
具現化して二人きりになるとキャラ変わるよねこの子。その後もめげずに腕に絡みついてくるので最後は私が折れた。
「ところで、ステラとコハクはどんな話をしていたの?」
ノアが管理していたのなら、二人の話は聞いているはずだ。
「他愛のない話でしたよ。どうしても知りたいのならー…」
「なら、いいや」
ろくでもない事を言い兼ねないのでノアの言葉を遮る。少し気になっただけだしね。
「むー……」
膨れづらしていて可愛いが、この子私よりも遥かに生きている大人なんだよなぁ。
「ちなみに、ノアは今何歳なの?」
「れ、レディーに年を聞くのはご法度ですよ?」
だそうだ。
「そうだよね。そういえば、大陸が一つになったのってどれくらい前のこと?」
「ざっと500ねんーーはっ!」
「推定年齢500歳以上ってことね」
大陸が一つになる前に封印されたと言っていたのを思い出したから聞いてみたら見事に嵌ってくれた。
ノアも完璧ではない。特に分身具現化をしていると気が緩むようで簡単な誘導尋問に引っかかったりする。
「封印の間は年はとらないのでノーカンです!」
「そうだね、おばあちゃん」
最近、嵌められてばかりのようなのでたまには私がやり返すくらいいいだろう。ノアは口元まで沈みぶくぶくと悔しそうにしている。
「それで、ノアは封印を解く気はないの?」
「今の所はそのつもりはありません」
私を依代にした理由は封印を解くためと聞いた事がある。これから旅に出るのなら目的の一つとして指針の一つになっていいと思った。
「旅をしていると、目的が変わるものです。マスターを依代にした時点で私の旅は始まっていますので目的も変わっていくのは仕方ない事ですよね」
「じゃ、今の目的は?」
「マスターの生涯を共に過ごす事です!」
「封印解かなきゃね」
「そんなー……」
いや、生涯ずっと私の中(傍)にいるのもお互い困るだろう。私もいつか伴侶に出会う可能性だってあるのだから。それに。
「寿命もあるだろうし、私が封印をいつかは解かないとノアも困るでしょう?」
「マスターに寿命の概念はありませんよ?」
「は?」
何て言ったのか、よくわからなかった。
「いえ、マスターは一度死んでいますので、妖狐種になっています。妖とは所謂アンデット属にも所属します。種族名で妖や霊が入る種族は長命であったり、寿命の概念がないのです」
私って、ゾンビみたいなもんだったのか。
「いえ、どちらかというと霊です」
どちらにしても嫌だわ!
「ということは、モカも妖樹狼だけど寿命がないとか?」
「いえ、モカさんはマスターの加護を受け妖樹狼に進化しただけなので寿命はあります」
個体によりますが、300年ほどでしょうけど、と続いたが。
それでも長い。頭が痛くなりそうだ。
「ですが、寿命では死なないかもしれませんが、肉体や魂が消失すれば死にますので十分にご注意くださいね?」
不老不死って訳でもないようだ。その説明の延長で、知らない属性の事も教えてもらった。
聖属性と邪属性だ。
「聖属性と邪属性は表裏のような関係でお互いに影響を与えます。聖は邪を清め、邪は聖を闇に落とします。純粋にお互いの力がぶつかり合った場合はより力を持った方が有利に事を進めるでしょう」
光属性と闇属性とも違うようだ。
女神の祝福が聖とすれば邪神の呪詛が邪になるらしい。私の場合は女神に与えられたようなものなのだが、アリルテウスは邪神ってことなのかな?
「いえ、アリルテウス様は女神でもあり邪神でもあります。その定義は宗教により崇められかたが違うというだけです」
昔、古事記を読んだことがある。
天照大御神と須佐之男命は姉弟である。
昔、須佐之男命は高天原で乱暴狼藉の限りを尽くし、姉である天照大御神も恐れをなして隠れてしまうほどだった。しかしその後成長した彼はヤマトノオロチを倒し、国造りを成し遂げという。
また、日本の神様は、一柱の神様が相反するふたつの性格(=霊力)を有しているという。これを、荒御魂と和御魂といい、荒御魂とは、荒々しくて勇猛で、祟りをなす性格で、和御魂は温和で慈愛に満ちており、人間に平安をもたらす性格と言われている。
直にアリルテウスという女神を見た今なら神様という存在を信じられる。
日本の神様の記述ももしかしたら間違っていないのかもしれない。
聖と邪……日本の荒御魂と和御魂みたいなものか。アリルテウスがこの世界にもたらした何かを人々が知っていれば、女神とも邪神とも思えるのかもしれない。
「まぁ、ようするに邪属性を持っている私は聖属性に気を付ければいいってことかな」
「あくまで相手の力量次第ですけどね。注意しておいて損はないでしょう」
邪属性を持っているだけで悪ではないらしいし、そこまで気にする必要はなさそうだけどね。
余談だが、獣王への加護は女神の祝福にあたり、コハクはいずれは聖属性を獲得する可能性は高い様だ。
それよりも寿命か……。
「長い付き合いになりそうだね」
「そうですね!末永くよろしくお願いします!モカさんもコハクさんと楽しく冒険しましょうね!」
「まぁ、コハクはわからないよ。私達と違って妖じゃないし、別の目的が生まれるかもしれないしさ」
モカとノアはずっとついてきそうだ。しかし、コハクはどうだろう。獣王の関係でどうなるかはわからない。いい方に考えれば獣王候補として王になる可能性だってあるのだ。
「コハクさんは希少種アルビノですが、マスターの認識と違ってアルビノ種はとても強い力を持っています。虚弱と思いがちですが長命種です。更に獣王の種により寿命も延びています……500年ほどでしょうか」
コハクも長命だったのか!種から華を咲かすまで時間がかかるのでそういう風に出来ているのかもしれない。
「この世界の生き物は長命なの?」
「それは、種族によります。マスター達が特別である事を除き、マスターが考えている寿命とほぼ変わらないです」
ゲームと同じような認識で良いってことか。
魔族やエルフなどは長命で人間は80歳くらい?この世界の医療などを考えればもっと下がるかな。
「これから知っていかなきゃいけない事は多そうだね」
「サポートはお任せください!」
それは頼りにしてる。
さて、流石に長湯しすぎた。モカの一件もあるし部屋に居るだろうコハクが心配するかもしれない。
「そろそろあがるよ。ノア、戻ってくれる?」
「わかりました」
「やけに素直だね」
「マスターの命令ですから」
絶対、裏があるな。ノアの姿が消えるのを確認し、湯からあがる。
(魔力感知はきってくれる?)
〈!!!ど、どうしてですか!?〉
やっぱりな。
(当たり前でしょ、どうせ魔力感知で覗こうとでも思ったんでしょ?)
私の中にいるノアは魔力感知を使わない限り私の目を通した光景しかみれない。咄嗟に思いついたノア対策だ。
〈そんな事しません! 警戒の為に必要な事です〉
(わかった。なら四方に分身体を飛ばしてこの周りだけお願いね)
気づくのが遅れた私も悪いが、ノアが張り切っていた一番の理由はこれだったのかもしれない。散々勝手に見ただろうしこれ以上好きにさせるのもよくない。
〈マスター……〉
どうしてこう成長してしまったのか。こればっかりは私の影響ではないと思う。
これ以上ノアに見られる前に、着替えを済ませ部屋に戻ったのだった。
お読みいただきありがとうございます。
評価してくださった方、ブックマークしてくださりありがとうございます。
他作品と並行して書いていますので更新遅れる事もありますが、よろしくお願いします。
ノアのミナモの呼び方はマスターです。
ルビを振っていなかったので、精霊時代も御主人様=マスターです。
時間が空いた時にルビを振りますのでそれまで脳内変換でお願いします。




