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Lycoris radiata  作者: 緋泉ちるは
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モカ看病

初めての予約ですが、上手くいっているでしょうか?不安です。

 「みなもさま……申し訳ありません」


 意識はあるようで何よりだ。


 「いいよ。気づいてあげれなくてごめんね」


 「いえ……立ち上がるまでは大丈夫だったので油断しました」


 急に立ち上がると一気に血圧がさがり、一時的に脳の血流量が不足するんだっけ。お湯に浸かるのは初めてだし知らなくて当然だ。


 「お水飲める」


 「はい……」


 上半身を起こし、ごくごくと喉を鳴らし水を飲んでいく。ここまで意識もはっきりしているし大丈夫だろう。


 「ありがとうございます」


 「いいえ、何かしてほしい事ある?」


 「それじゃ、手をおでこに当てて欲しいです」


 それくらいならお安い御用だ。


 「ミナモさまの手、ひんやりしてて気持ちいいです」


 さっきまでお湯に浸かっていたので冷たくはないだろう。それとも、濡れたタオルを用意している間に冷めたのかな。


 「暫くこうしていてあげるから休みなさい」


 「それなら、手を繋ぎたいです。ラテとアールみたいに」


 「はいはい」


 手を握るとぎゅっと握り返してきた。


 つい先日の事が思い出される。今度の事で話し合ったあの夜だ。


 あの時は、私もモカも悩んでいたっけ。


 だけど、今思えばこうなるのは必然だったような気もする。モカとは他の幹部よりも深い繋がりを感じ、手を握り合うモカと離れるとは思えない。


 これからも一緒にいるのかな。


 村を出るのは少し寂しい。しかし、それを上回る期待とワクワク感が膨れている。


 目的もない、今日みたいな些細なトラブルも沢山あるだろう、それでもモカとコハクが近くにいれば自分たちの旅の目的がいずれはっきりするかもしれない。


 その時に訪れる困難も笑って過ごしたいというのは贅沢か。だけど、失敗して苦しんでも最後には笑っていられればいい。


 全てが終わったら、また村でみんなで暮らすのもいいだろう。


 始まってもいない夢が膨らむ。


 〈マスター、私も忘れないでくださいね!〉


 (わかってるよ、頼りにしてる)


 ノアが望むならノアの封印を解くのもいいかもしれない。


 〈私はこのままでもいいですよ?〉


 そう言っているが、ずっとこのままという訳にもいかないだろう。


 何にせよ、やることは沢山あるだろう。今は英気を養いつつ旅への準備を進める。


 静かに寝息を立て始めたモカを見つめながらそんな事を考えていた。


 




 モカが眠り初めて暫くたった後、幹部たちも順々に上がってきた。


 1時間くらい浸かっていたんじゃないかな。それぞれお風呂を堪能してくれたようだ。


 「これで寒い時期に水浴びしなくて済むので助かりますね」


 「そうですね。冬場に備え、住民にも普及させるといいかもしれないですね」


 それは難しいかもしれない。


 お湯を張るのは大変だ。鉄岩石とココア達のスキルがあってようやく叶えられたくらいだしね。


 〈マスターの記憶にある五右衛門風呂というのはどうですか?〉


 (できそう?)


 〈毎日は無理かもしれませんが、ローテーションを決めれば可能かと〉


 それも要検討かな。私が旅立つ前に出来るだけやれることはやってあげたいし。


 「コハクとステラは?」


 上がってきた中に二人の姿は見えなかった。


 「二人は気に入ったようで、まだ浸かっております」


 「なるほどね、気に入ってくれたならよかったかな」


 コハクはわからないが、ステラならのぼせる事もないだろう。


 「ちなみにフラットはどうだった?」


 「え、何で私にばっかり聞くのですか!?」


 いや、旅のリポーターとして?


 「まぁ……よかったです」


 私が居なくなったとも使う事を許可しておいた。流石に私が居なくなったらあおの大きさでは水の確保が大変だと思うから区切りを作って少人数で入るようにすれば幹部たちだけならやっていけなくもないだろう。


 その日はモカがダウンした為、解散することになった。いつまでも、私もタオルを巻いたまま看病する訳にも行かないしね。


 着替えようと離れようとしたらモカを起こしてしまったけど、そこは仕方ないだろう。


 「ミナモさん、モカさんの様子は大丈夫ですか?」


 脱衣所に戻ると、ちょうど二人が上がってきたところだった。


 「うん、水飲んで寝てるよ」


 「モカちゃんも無理するところあるからねぇ。ミナモちゃんがちゃんと手綱握ってなきゃだめさ」


 「うん、気を付ける。それより、長かったね」


 幹部たちが上がってから30分くらいかな。長湯しすぎると流石に心配だ。


 「はい、ステラさんが色々な昔話をしてくれて話しこんじゃいました」


 「ステラ、変な事話してないよね?」


 身に覚えのない昔話もあるからなぁ。


 ステラは面白おかしく話し兼ねないので結構不安だ。口が軽いって訳じゃないけど、近所のおばさんみたくついつい一言多かったり。


 「さぁねぇ。些末な事しか話してないさ。それよりコハクちゃんがー」


 「ステラさん!」


 「おっと。ごめんごめん、ついねぇ」


 こりゃわざとだな。


 だからコハクに変な事を言っていないか不安になるんだよね。


 「ステラ、コハクをからかうのもほどほどにね。コハクも言いたい事あるなら遠慮せずに言ってね」


 「は、はい!」


 直立不動になってるけど、何の話なんだろう。まぁ、本人が言いたくないのなら無理して話す事でもなさそうし放っておいてもいいだろう。


 「顔も赤いし、二人とも水分はとってね。知らない間に汗をかいてるからさ」


 気づいていなかったのか、コハクは顔を両手で押さえ、ステラは笑っている。普通の事を言ったつもりだんだけど。


 「ミナモちゃんはまた行くのかい?」


 「んー。着替えようと思ったけど、最近夜は冷えてきたしもう一度温まろうかな」


 冬の気配近づいているのか、昼間は暑さを感じるが夜になれば肌寒く感じる日が増えてきた。


 タオル一枚で過ごしていたので体が冷たくなっているのがわかる。


 その辺り、熱変動耐性は不便だったりもする。害のないと判断した熱さや寒さには適応されない。そのお陰でお風呂を堪能できる訳だけど。上手く調整できればいいのに。


 「コハクちゃんも行ってきたらどうだい?」


 「ぼ、僕は十分温まりましたので!?」 


 心の準備がー……。と呟いているが、散々お風呂に浸かっていたのに今更じゃないかな。


 「無理しなくていいよ。みんなで入るのも楽しいけど、一人で浸かるのも悪くないしね」


 結局、二人はあがっていった。一人で露天風呂を味わう事ができるのは少し得した気分だ。

自分自身、長風呂が苦手なのでお風呂に長く浸かることがあまりありません。


しかし、この時期にお風呂に浸かるのは悪くないとは思います。


皆さまも体調管理に気を付けてくださいね。

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