幹部たちの乱入
「アナタ達……どうして?」
〈私が呼んでおきました。コハクの話は聞かれていないのでご安心を〉
ノアはいつの間にか私の中に戻っていた。
魔力感知をノアに任せていたので気づかなかった。感動の瞬間だったはずなのにその空気は消えさっている。
「ミナモちゃん。言いたいことははっきりと伝えるってみんなに言ってなかった?」
「言っていたけど……」
「それじゃ、ミナモちゃんも言わなきゃダメじゃない?」
宴会の席や普段から提案や意見は言って貰うようにしている。ステラに言われるとお母さんに叱られているような気がしてならない。
「そうですよー。ミナモ様は相談もしてくれないですし、全部一人で抱えようとします」
「そうだな。ロッククラブもモカ様やステラが行くと言わなきゃ一人で倒しに行っただろうし」
うぐ……。痛い所をつかれた。アールとラテは競い合ってるくせにこういう時は息を合わしてくる。
「それに、私には子供の面倒をさせたがるのは何故ですか! 胸ですか?母性でもあると思っているのですか!? 私も戦闘は得意なのですよ! もっと信頼して欲しいです!!」
そういう訳じゃない……けど、どうしても幹部の中では適任だと思ってしまって。
「それと、モカ様もですよ。伝えたい事をミナモ様にしっかりと伝えないから悪いのです」
ココアの矛先はモカに向かった。その姿は見た目的にも姉に怒られる妹に見えてしまう。
「でも、ミナモさま困らせたくない」
「その程度でミナモ様が困るとでも? 確かにミナモ様は立派です。ですが、時々抜けています。だから、旅に行かれるのならサポートする人が必要になります」
さり気なく失礼な事言っていないか?多少自覚があるとはいえ、ちょっと傷つきそうだ。
「でも……村が」
「わかりました。それなら私達の誰かが代わりに付き添います」
「だめ!」
モカが珍しく大きな声を出し、ココアも珍しく小さく笑った。
「では、しっかりとミナモ様に伝えなければだめですよ」
「うん……」
モカは頷いた。すーっと大きく息を吸込む。
「みなもさま、ご迷惑かもしれませんが私も共に連れて行ってください。必ず役にたちます」
悩む必要はない。幹部たちにここまでお膳立てをして貰ったのだから。
「モカ……約束したよね。モカが私を守ってくれるって、傍に置いてくれって。あれは嘘じゃないよね」
「勿論です。ずっと……どこまでもついていきます……!」
「わかった。コハク」
「は、はい!」
話の蚊帳の外だと思って油断していたな。反応が遅れて驚いている。
「さっき言った、ここを出るという気持ちに変わりはない? 今なら、撤回することもできるけど」
「迷いはありました、けどみんなのお陰でその迷いは消え、前に進みたいです」
「わかった、その旅に私達も同行したいけど構わない?」
「来ていただけるのなら……とても心強いです」
私は頷くだけで意思を示した。
「では、次にアナタね。私が離れる間、村を任せても大丈夫?」
「「「「お任せください!」」」」
4人の声が重なり、私の前に跪いた。こんなこと教えたことないのだから、本能から飛び出したのかもしれない。その姿をみると安心感が生まれた。
「ステラ、今後の食事を全て任せることになるけどそれは?」
「余裕さ。万が一、私に何かあっても後継者は育ちつつあるよ」
「その方面の面倒も頼んだ」
「了解さ!」
そうと決まれば……。
私は次元収納からある物を取り出した。
「呑もうか」
いつか大事な時に呑もうと思っていた、ノア監修の元作ったお酒をとりだした。
門出を祝う……とは違うけど新たな目的を持った人たちが集まったのだ、今飲まないでいつ飲むというのだ。
それに、幹部たちだけで酒盛りをするのは初めてだったりする。この機会を逃すわけにはいかないだろう。
「だったら、摘みが必要だね!」
ステラは勢いよく飛び出していった。
「では、私達は器を用意しましょう」
「ミナモ様、もちろん朝までですよね!あたしはいつ寝ても大丈夫のように毛布とってきます!」
ココア達は食器をとりに、アールは本当に朝まで飲むつもりか毛布をとりに向かった。
「みんなを起こさなきゃいいけど」
「本当です。張り切りすぎです」
そういうモカもわかりにくいが楽しそうな表情をしている。
「僕は、嬉しいな。この村に出会ってよかったです」
そんな会話をしていると、幹部たちは直ぐに戻った。
狭い部屋に大人数が集まったため、机はどかし床に座り込んだ。こんな生活をしていると、汚れるのは日常茶飯事のなので誰も気にしない。
軽く乾杯をし、各々が酒盛りを始める。
「このお酒、ちょー美味しんですけど!」
「ミナモ様がこのようなお酒を隠しこんでいるとは…」
「あたしはこのくらい強いのがちょうどいいな」
お酒は好評だった。そりゃ、ノアの知識と私のスキルを使った特別なお酒なのだから当たり前だ。
「僕は……果実水の方がいいかも」
進化祝いとしてコハクにも許可を与えた。だが、味覚は子供なのか、ちびちびとゆっくり飲んでいる。
「ミナモさま……暑いです」
「モカはちゃんと服を着ていようね」
途中モカが例の如く脱ぎそうになったりすれば。
「あ、零しちゃいました……」
「くっ……また強調してる」
「違います!そんな憎らし気に見ないでください!」
フラットがお酒を零し、それを見ただけで怒られることもあった。
楽しい宴会は話が進み、楽しい時間はあっと言う間に時間が過ぎた。
コハクに続き、モカ、フラットと順番に酔いつぶれベッドや床に眠りについていく。
最後まで頑張っていたアールもついに脱落し、ラテのお腹を枕にいびきをかいて眠ってしまった。
「みんな寝ちゃったね」
「仕方ないさ。私から見れば子供達さ」
私とステラだけが起き、静かにお酒を飲んでいた。
「この生活、楽しかったよ」
「私もさ。けど、すぐではないんだろ?」
「うん。もうすぐ冬が訪れるからね。それが過ぎたらを考えている」
準備期間は必要だ。スキルも習得しなければならない。
「そうか、淋しくなるね」
「へぇ、ステラでもそう思ってくれるんだ」
「当り前さ!私からしたらまだまだ手のかかる子供が居なくなるんだからさ」
「私は村長だし、子供扱いは心外だけどね」
「それなら、私に甘えるのは控えるこった。子供じゃないならね」
私のお母さんはステラしかいないと思う。実の両親は顔すらわからないし、前世にあたる世界の両親も覚えていないしね。
「んー……それは考えとく」
だからこう答え、ステラの膝を枕に寝転がった。
「ったく。いつでも帰ってきな。この村の村長はいつまでもミナモちゃんだからね」
ステラに頭を撫でられる。普段は私がやる側に回るので今回は存分に甘えさせてもらった。
お酒もかなり回っていたのか、ステラに撫でられる度に眠気を誘われる。
「子供は寝て育つんだよ」
「子供じゃないし……」
「はいはい。おやすみ」
「んー……」
限界だった。昼間にあれだけ眠ったはずなのに耐えられなかった。
またいつか、みんなと楽しめる日々がくればいいな。
心地よい気分の中、ひっそりと私の意識は夢の中へと消えていった。




