これからのこと、私は……。
「そもそも、獣王の種を得た者を探すのは可能なのかな?」
コハクが見つかる事を前提で話していたが、根本的にどんな状況であっても隠し通せば問題はないはずだ。
「可能です。鑑定のスキルがあれば、取得したスキル、加護などを見通す事ができます。鑑定のスキルは政治を行う上で欠かせないのでそのスキルを所持した者が獣王の配下に居るのは確実でしょう。私も習得しているくらいなので」
だそうだ。となると、そのスキルを持った人が訪れれば見つかるのは時間の問題か。
「なので私はまず、鑑定スキルを誤魔化すスキルを獲得することをお勧めします。もちろんマスターもです」
「そんなスキルがあるんだ」
スキルの名前は【擬態】というらしい。
「ステータスを誤魔化すスキルは他にもあります。鑑定を遮断する【隠蔽】や鑑定の邪魔をする【阻害】など。しかし、お勧めは間違ったステータスを表示させる擬態が良いかと」
隠蔽したり阻害するのはやましい事があると言っているようなものか。擬態なら堂々としていても問題ないというわけか。
「それで、スキルはどうやって習得すればいいの?」
「スキルの習得は進化や成長により得られます。しかし、進化や成長では得られるスキルはある程度は個体により決まっているので難しいでしょう。なので、今回はボーナスを狙う方法をお勧めします」
進化や成長はある程度は望んだスキルを習得できると聞いた。しかし、自身に関係しないスキルの習得はできない。
モカがいい例だろう。
モカは元はフォレストウルフという魔物であったが、人間の進化の歴史を辿れば人間も元は猿などの動物だった。もっと遡れば微生物だった時代もある。
なので、進化の可能性の話としてはありえる範囲と言えるようだ。
しかし、進化と退化は表裏一体で何かを得れば何かを失う。進化によって失われていったスキルは得ることはできないということだ。
魚から進化して地上にでた生物が鰓呼吸を忘れたように。
そこで、進化で得られないスキルをどうやって得るかというと……。
「欲しいスキルを持った魔物を数多く倒すことで倒した魔物のスキルやキラーなどの加護を習得することができます。それがボーナスです」
だそうだ。
ただし、その魔物の身体的特徴を活かした固有スキルは得られないらしい。
例えば、ポイズンボアという蛇の魔物がいるのだが、固有スキルは【毒牙】と【丸呑み】だ。しかし、私達は毒を生み出す毒袋を持っていないし、同サイズの生き物を丸呑みできるほどの口は持ち合わせていない。しかし、ポイズンボアが持っている、【熱源感知】は魔力で代用出来る為、それは習得することはできる。
「それじゃ、擬態を習得するのにはどれくらい倒せばいいの?」
「はい、300~500ほど…運が悪ければ1000を超える場合があります。逆に運が良ければ1体で済みます……確率です」
適当すぎる……確率とかゲームかよ。いや、あの女神の事だから十分その可能性はあるか。システムを盗んできたとか言ってたし。
「わかった。どの魔物を倒せばいい?」
擬態というからには隠れるのが上手い魔物かもしれない。見つけるのが苦労する魔物であれば途方のない時間がかかりそうだ。
「大森林で確認した魔物であればほとんどが持っています」
それはよかった。
「一つよろしいですか?」
モカがすっと手をあげた。
「はい」
「私もそのスキル欲しい。できる?」
「モカさんは倒す必要はありません。最初から習得しています」
なんだって!いつの間に……。
いや、元はフォレストウルフという魔物だったのだからその名残か。
「モカ、自分のスキル確認してみたら?」
そう進言すると、ノアが首を振った。
「マスターそれは難しいです。新たに得たスキルであれば世界の言葉により知ることが出来ますが、世界の言葉が重要だと判断しないレベルのスキルを知る事は鑑定しないとわかりません」
「え、ウィンドウを確認すればわかるでしょ?」
「それはマスターが転生者であるからです。普通の人はできません」
なんと、これも転生者の特権だったのか。改めて自身の事を見つめなおす必要がありそうだ。今みたいに常識だと思ていたのが私だけというのがありそうだ。
「モカさん、スキルの鑑定したいのですが、よろしいですか?」
「うん、よろしく」
「僕もお願いしたいです」
「わかりました、では鑑定にはいります」
まずは、モカの鑑定から始まった。ノアがスキルの名前を読み上げ、モカが真剣に頷いている。私には及ばないもののモカのスキルも多かった。まぁ、私の前にリーダーをやっていたくらいだし有能なのは間違いないか。
それに比べると、コハクのスキルは少なかった。それは仕方ないか、戦闘経験は皆無に近かったのだから機会もないのは当たり前か。
「以上です」
モカに比べ、圧倒的にスキルが少なかった事にコハクは項垂れていた。
「まぁ、これからスキルは増やせばいいし、気にすることはないよ。出来る事ならスキルに頼らないで戦えるのが一番だしね」
「はい、精進します。落ち込んでる暇などないですよね」
その通りだ。今後の課題を考えると落ち込んでいる暇などない。
「では、明日からの方針はコハクと私のスキル集めかな」
「はい!」
「では、山岳地帯に向かうのが良いかと。あそこにはロッククラブ幼体がいますので鉄岩石の収集も兼ねる事が出来ます」
「わかった、それでいこう。問題があれば方針を修正していく感じで」
コハクの件は解決の兆しが見えた。少し肩の荷が降りたきがする。
が、問題はそれだけではなかった。
「ミナモさま……」
「どうしたの?何か問題があった?」
モカが暗い顔をしていた。私は思わず聞き返してしまった。
「ミナモさまは……今後どうするのですか?」
そうだった、モカにとって一番聞きたかった事だろう。コハクの事でいっぱいになっていたのでそこまで気が回っていなかった。
私のことは一切解決していない。モカを引き留めたのもその話をしなければいけなかったからだ。
「モカ……」
「いえ、わかっております。わかってて…受け止める覚悟ができていませんでした」
モカは私の話を遮った。
「ミナモさまは……村の事、私達のことを一番に考えてくださってます。なので、私達もそれに甘えていました」
私が便利に暮らしたい、その為にやっていただけなのだが、モカの目にはそう映っていたらしい。
「だから、ミナモさまはコハクと共に行かれるべきです」
「モカ……気づいていたんだ」
私の中で村をでてコハクと共に旅をしようと思っていたことを。それは遠くない未来であるということも。
「ずっと傍にいたのですから当たり前です」
「モカ……ごめん」
「いえ、私がミナモさまの代わりを務められるかわかりませんが……ミナモさまが帰られたときに失望しないように頑張ります」
泣いているのにモカは悟られない様に笑った。
「ありがとう……」
モカを引き寄せ抱きしめる。頭を撫で、落ち着くのを待つ事にした。
バーンッ!
その時、家のドアが勢いよく開けられた。
「ミナモ様、話は途中からですが聞かせて頂きました」
開いたドアの先にはココア、ラテ、フラットにアールとステラまで集まっていた。




