これからのこと2
「誰って、コハクです!」
「えっと、うん。コハクだよね」
「他の誰に見えるのですか!?」
誰って、コハクの面影を残した…女の子?
悩んでいた事が全て吹き飛ぶほどの衝撃だった。
背はモカよりも小さいくらい……150センチくらいだろうか、小学生低学年くらいにしか見えなかったのが一気に背丈を伸ばし、小学校高学年くらいまで成長している。
それになかったはずの胸を密かに主張をしているのがわかる。
性格が明るければ少しやんちゃな男の子にも見えた顔はあどけなさを残した可愛らしい女の子になっている。
「コハクが…………」
「え……何かあったのでしょうか?」
「コハクが女の子になっちゃった!」
「元からちゃんと女の子です!!!」
顔を赤くして怒っても迫力が薄い。混乱する頭で整理するように少しずつ質問をすることにした。
「最初から女の子だったの?」
「そうですよ! 何だと思っていたのですか?」
男の子だと思っていました。なんて言えるはずもない。これ以上言ったら本気で怒ってしまいそうだ。
「モカは知っていた?」
「知っていました。でなければミナモさまと同じ布団で眠る事を許しはしません」
モカが残念な子を見る目をしている。モカにそんな目をされるのは初めての経験だ。けど、普通にしゃべれてよかった。
「まぁ小さい子供だったし、気づかないのはしかたない。何よりも一人称が撲って言うのも紛らわしい」
もし、一人称が私だったのなら、私も気づいたかもしれない。先入観で男の子だと思ってしまうのは誰にでもある事だろう。
「それは、奴隷にされた時に強要された癖が抜けないからです…何でも女の子が僕って言うと需要があがるらしく……」
そこに関しては奴隷商グッジョブだ。
獣人撲っ子女の子ってかわいいよね。
「ミナモさんが直せと言うならすぐにでも直します」
「いえ、そのままで構わない」
直したら勿体ないので却下だ。
「ただし、使い分ける事は大事かな。気の許した相手にならともかく、初対面の相手に使うと変に思われると思うよ」
「わかりました。気を付けます」
「それにしても、驚いた。けど、年相応の見た目にはなったんじゃない?」
「ちなみにですが…ミナモさん僕の事を子供といつも言っていましたが、何歳だと思っているのですか?」
「ん。8か9歳くらいじゃないの?」
進化する前の見た目を考えればその辺が妥当だろう。
「やっぱりそう見えていたのですね……撲、ミナモさまと二つしか変わりませんよ!」
〈マスターは現在15歳で、冬が明けた頃に16歳になります〉
だそうだ。なので2つ引くとー…。
「13歳ってことっ!?」
「春先に14歳になりました!ひどいです……」
「成長が遅いとは聞いていたけど、流石にそこまでとは思わなくてね…モカもそう思うでしょ?」
「私はミナモさまの名付けにより獣人化したため、元から獣人であるコハクの成長速度が速いか遅いかの判断ができません」
モカはこの話に興味がないようで、救いを求めても助けてくれなかった。
そうだった。驚いて忘れていたが、こんな話をする為に戻ってきたのではない。
「まぁ、成長の話はいったん置いておこうか。今から今度についてと世界の言葉について話さなければならないからね」
話題を無理やり変えたように思ったのか、少し不満げに頬を膨らますがコハクは頷いた。
進化前なら、話が逸れた事に謝っていたのに、進化したらこの態度だ。進化して表情と性格にも少し影響が出たのかもしれないな。
飼い主に似るって?知らないな。
「では……大事な話だと思うので私は外にいます……」
空気が引き締まり、私とコハクの話を邪魔してはいけないと思ったモカが一礼して外に出ていこうとする。
だけど、それはダメだと思った。
「待って!…………モカも居て」
思わずモカの手を掴んでいた。モカは驚いた顔で振り向いた。まさか、呼び止められるとは思っていなかったのだろう。
「…………はい!」
握った手がぎゅっと掴み返してくる。たったそれだけなのに、これから話す事の不安か悩みか…それがが薄れるような気がした。
実際、私自身気持ちの整理がついていない。だからこそ、今この時に二人と話さなければいけないと思った。
「まずは……世界の言葉の方がいいかな」
ベッドに腰かけ、楽な態勢で話す事にした。
いつも3人で話をする時もこんな感じなので私たちには違和感はない。
私の隣にモカが座り、隣のベッドにコハクが座っている。
「世界の……言葉ですか?」
モカが不思議そうに訪ねてきた。
「うん。モカも進化する時に聞いたと思うけど、コハクに名前を与えたときに世界の言葉が響いたの」
「あの……不思議な声ですね」
あの時の事を思い出しモカは頷いた。
「多分ね。私も世界の言葉が何なのかはっきりとわからないけど、その声がコハクに【獣王の種】と【獣王への祝福】を授けると言ったの」
私の説明にコハクが頷いた。
「僕も聞きました。だけど、その意味がわからず戸惑っています」
そうだろうな。転生して、ノアの知識を得た自分でようやく憶測を立てれたくらいだし。それすらも間違っているかもしれないしね。
ノアからのアドバイスもないし、ここは私の憶測で話すしかないだろう。
「私の憶測だと、獣王の種というのは獣王になれる素質を手に入れたのだと思う。祝福は……加護みたいなものだと思うけど……」
自分の言っている事が解決にも進展にもつながらない事に気づいた。なので、思わず言葉に詰まってしまった。
獣王の種も獣王への祝福も二人なら何となく理解できるだろう。問題はそれを知ってどうしたいかなのだから。
「一つ……ミナモさまに聞いてもいいですか?」
「ん。なに?」
「ミナモさまは…どうして私たちの知らない事をたくさん知っているのですか?一緒に育ったはずなのに……」
モカはずっと疑問に思ってはずだ。だけど聞いてしまうと私との関係が崩れるかもしれない。
聞いてはいけないこととしてずっと押しとどめていたのだろう。
「僕も……ここに来て感じていました。ミナモさんは此処にいるのに、別のとこで生きているように感じる時があります」
私の中では自重したつもりでいたのだが、やはり気づかれていたか。
(ノアちゃん)
高速思考を使い、ノアに話しかける。
〈…………〉
あれ、何か拗ねてる?名前を呼んだ時に、反応しそうな雰囲気はあった。わかるかな、一瞬マイクををオンにした時に、ザーっと周りの音を拾ったような感じ。
(怒ってるの?)
〈……別に怒ってないです。散々無視されたからって怒ってるわけではないです〉
あー……村を外を歩いていた時の事を根に持っているのか。
(あの時はごめんね。その埋め合わせはするからさ)
〈本当ですね?ほんのちょっとの事では納得しませんからね?〉
(わかった。それで、相談なんだけど…ノアちゃんの事と私が転生者ということを伝えたらまずいかな?)
〈アリルテウス様に確認してみます…………許可が降りました。ただし、アリルテウス様の事は伏せるようにとの事です〉
高速思考を使用していなかったら結構な時間が立っていただろう。確認に入ってから10分ほど時間が経過したころようやく許可が降りた。
アリルテウスの事まで話そうと思っていなかったから問題ない。
(OK! それじゃ、ノアを紹介したいから姿を見せてもらいたいけど出来る?それとも転生者である事を先に伝えた方がいいかな?)
言葉で説明するよりも見せた方が早いと思った。魔法の概念がある世界なら召喚するように精霊を呼んでもそこまで大きな騒ぎにならないだろう。
ノアはそこまで予想してなかったのか、嬉々とした感情が膨れ上がっている。
〈お任せください!!! 転生の事も私が補足をいれますので先に紹介してください! そうしてくれれば、埋め合わせもそれで良しとします!!!〉
そんなんで埋め合わせはいいのか。まぁ、変な要求されるよりはマシなので助かるが。
(わかった。場を整えるから少し待ってね)
「二人にそこまで気づかれているなら仕方ないか。今から私の秘密を教えるけど驚かないで貰える? 後、みんなには内緒にしてもらいたい」
二人は静かに頷いた。
「ありがとう。ノア、でてきなー……」
「紹介に預かりました、ノアです」
早いっての! しかもちゃっかり私の膝の上に座ってるし。
ノアは私を背もたれにしてべったりとくっついてきた。
「ちょっと、話にくいからどいてもらえる?」
「埋め合わせ分の為、その要求には答えられません!」
なるほど、それが狙いだったのか。
「ミナモさま……その人間はいったい?」
二人は唖然としていた。どうにかモカがノアの事を指さし声を絞り出した。
「人間ではありません……エルフです!」
「「えるふ?」」
二人はエルフという種族を知らないようだった。
大森林にエルフはいないので、外の種族であるエルフを知らないのは仕方ないか。私の居た世界ではかなりメジャーな存在だったけど。
「エルフは魔族と同等の魔力を持った人間みたいなもの……でいいのかな。今はその説明は置いといて、私達の事を説明するよ」
ノアに補足をしてもらいながら、私がこの世界に来た時の事から話始めた。
今の体に転生する前に、何度も転生を繰り返しスキルを獲得し、その時にノアを得た事。
知識は転生前の事を引き継いでいること。
他にも転生者が居て、それぞれの目的を授かったこと。
アリルテウスの事を伏せ、出来るだけ事実を話した。
その際に、どうして転生が出来たのかとは聞かれなかった。
恐らく、ノアの事と私が転生者であるという事に理解が追い付かず、そこまで頭は回っていないのだろう。
まぁ、難しい単語をノアが混ぜながら補足しているので上手く考えることをさせないように誘導しているのが一番の原因だろうが。




