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Lycoris radiata  作者: 緋泉ちるは
16/34

精霊の名1

 蝋燭の灯りを消す。


 精霊さんの知恵でハチの巣から蜜ろうを入手し、それを蝋燭として作った。夜でも部屋に明かりを灯せるので重宝している。


 家を出ると、モカが外で待っていた。


 「話は聞いていた?」


 「途中からですが」


 「そう、なら話は早い。明日、この子をみんなに紹介するからその手配を頼む」


 「わかりました。ミナモさまはこの後どうなされますか?」


 大変な一日だった。出来ることなら今すぐ眠りたい。しかし、やることと確かめたい事が山済みだ。


 「中央の櫓で警備にあたる」


 「わかりました」


 「子供が中で寝ているから起したくない。悪いけど、今日は他で休んでもらえる?」


 「想定していたので、問題ありません」


 「ありがとう、助かる」


 モカと別れ、中央の櫓へと向かう。


 櫓はこの村の象徴となっている。


 周囲の警戒ではなく、帰還の目印として建てたものだ。


 森の中は視界が悪く、似た場所も多い。遠く離れれば自分の居る位置を見失う事もあるかもしれない。

 元は野生の狼達なのでそれはないと思うが、万が一の為に、木の頂上まで登ればこの櫓をみつけ、村の方向がわかるかもと思い作る事にした。


 その他にも、食事の合図や昼間のように緊急の警報をならしたりする鐘を取り付けている。


 「お疲れ様、今日は私が警備をするから休んでいいよ。他の警備の子らにも伝えてくれる?」


 櫓を登ると一人の青年が警備にあたっていた。


 「ですが、ミナモ様もお疲れなはずです。これくらいどうってことありません」


 「いいの。普段なまけているからね。一日くらい村の為に頑張りたい気分なの」


 「わかりました。辛くなりましたお呼びください」


 青年は一礼すると、櫓を降りていった。


 いなくなった事を確認し魔力感知を広げ、村全域を覆う。


 ようやく落ち着いた時間がとれそうだ。


 (精霊さん)


 〈はい! 新たなスキルの情報ですね!〉


 (ザリガニの件と比べて察しがいいね)


 〈それは言わないでください!!!〉


 頭の中で精霊がぶんぶんと飛び回るイメージが浮かぶ。これも、新しいスキルか?


 〈共にエリアボスを倒したことにより、主人様と私の繋がりが強化されました。その影響だと思われます〉


 (繋がりか。その繋がりが強くなると、最終的にどうなるの?)


 〈共有スキルの伝達と意思疎通が早くなり、主人様の私のイメージがはっきりとされるかもしれません!〉


 精霊の本来の姿は知らない。


 私の中の精霊のイメージはとあるゲームで主人公を【ナビ】する球体に光った羽のある……妖精だ。


 色々説明してくれるのがあの要請を彷彿させてしまったから仕方ないよね。


 (じゃ、スキルの確認をしようか)


 尻尾を獲得すると魔力が増えるとともにスキルも増える。


 〈獲得したスキルは物理防御結界と鍛冶です〉


 今回は守りに特化したスキルを獲得できたようだ。


 防御結界は体の表面に薄い結界をはり、打撃は吸収し、斬撃は弾くというものらしい。正し、物理とついているので魔法は通してしまうので過信はできない。


 ロッククラブの放ったシャコパンチからの衝撃波も吸収できるらしいので、当たりスキルかもしれない。


 難点といえば、結界を張っている間は魔力を消費することくらいか、そこまで消費はしないらしいが、戦闘が長引くと響きそうではある。


 防御結界の魔力消費は新しい尻尾に充てる事にした。折角獲得したのに何か±0な感じがするが防御が上がったからプラスではあるか。


 次に鍛冶スキルは。


 鉄や鋼など一般的な鉱石から武器や防具は勿論の事、鉄を使った道具の制作や修復などを正しい知識で実行できるという物だった。


 滞っていた鉄の文明が解禁された。


 (もしかして、スキルの獲得条件は獲得した状況に応じてかわるのかな)


 〈尻尾が増える条件が不明なので、その可能性が高いと思われます〉


 魔力感知は視界が悪い森の中を動くのに不便と思っていたら獲得した。


 料理スキルは美味しい食事に飢えていて望んだら手にいれた。


 鍛冶スキルはロッククラブを倒し、大量の鉄の含んだ岩を獲得し扱いに悩んでいたから手に入れたのかな。


 防御結界はロッククラブの一撃が全て即死に繋がる事から生まれたのかもしれない。


 最初の数本は年齢を重ねるだけで増え、生活をするのに便利なスキルを獲得した。


 しかし、今回はエリアボスを討伐した事により尻尾が増えた。


 その時に、自信に足りなかった所を補うために獲得したのかもしれない。もし、魔族相手に苦戦をしたら魔法結界を手に入れ、水中相手に苦戦したらその類のスキルとか?


 何にせよ、尻尾の増える条件と獲得スキルの方向性が見えた気がする。上手くいけば選んで獲得するのも不可能ではなさそうだ。


 〈今回、防御結界を手に入れた事により各種のスキルを統合したいのですがよろしいですか?〉


 (うん、任せた)


 能力のグレードアップは任せてあるが、重要なスキルと私が暇している時はここぞとばかりに報告をしてくる。


 戦闘スキルは自分の能力を把握することにより優位に進められるために聞くようにしている。


 〈防御結界と主人様の肉体では使えない、スライムボディとロックゴーレムの硬質化を統合し、物理攻撃耐性EXを獲得しました。

 そして、物理攻撃耐性EXを獲得したため、別系統の魔法耐性(小)を獲得し属性耐性各種を統合し、魔法耐性(大)を獲得しました。尚、魔法耐性と物理攻撃耐性EXは結界と異なり肉体付与のため魔力は消費しません〉


 何でもありだなー…。強くなりすぎじゃない?しかも、防御結界じゃなくなったお陰でさっそく尻尾に空きが出来たし。


 (物理攻撃耐性EXの効果はどれくらい?全ての攻撃に対して有効する?)


 〈物理攻撃であればその攻撃を7割カットできます。ロッククラブの攻撃も致命傷が鼻血程度に軽減できます。ただし、吹き飛ばしはされます。また、攻撃が物理ではなく魂に与えるものであった場合や相手が耐性を無効とするスキルを持っていた場合はダメージを受けるのでご注意ください〉


 肉体と魂は別物。


 例えるのなら肉体は入れ物であり、魂はその中に詰められている水。


 肉体のダメージはなくても中の魂を攻撃されればダメージを受ける理屈らしい。


 HPが肉体であればMPが魂や魔力。


 そのどちらかが0になるとゲームオーバーになる。魔力の使い過ぎが命に関わるのはそういうことだ。

 どちらにしても、かなり有用なスキルが手に入った。攻撃スキルが欲しいとこだったが、武器を手に入れたので今回はなさそうだ。


 〈他にも防御結界を媒介に各種耐性が強化されました〉


 手に入れたのは、状態異常無効と精神操作耐性だった。


 〈精神操作耐性は奴隷の首輪の解析により手に入れました〉


 確かにそのスキルは大事だ。自分自身が操られたらとんでもないことになりそうだ。完璧に防げるわけではないが、無いよりはあった方がいいスキルだろう。


 (精霊さんありがとう)


 〈これからもお役に立ちますので、見捨てないでくださいね!〉


 (考えとく)


 冗談だけどね。精霊さんが居なくなって困るのは私だから。だけど、精霊さんが困る様子が可愛いので仕方ないよね。


 しかし、ふと疑問が浮かんだ。


 (そういえば、精霊さんはどうして私にそこまで協力してくれるの?)


 〈……女神様のご命令、ですので〉


 歯切れが悪い。何か隠し事をしている?


 (本当にそれだけ?私を強くして、魂の繋がりを強くして最後に私を乗っ取るつもりとかない?)


 精霊のイメージが鮮明になったとき、精霊との同化が進んだ気がした。同化が進んだ時、最後に残る意識はどうなるのか。私の物なのか精霊の物なのか、それとも別の人格が生まれるのか。


 〈そんなことはしません! 私も私なりの目的があるのです!〉


 必死に否定するところが怪しく思えるが、嘘や偽りもないように思える。


 (これまでお世話になったし、これからもお世話になるだろうし。私は信じるよ)


 〈主人様ぁ!〉


 光の球体のなかで、感動したように手を胸の前で組んでいる。私のイメージだが。


 (そうえば、お世話になってるのに、いつまでも精霊さんは悪いよね。名前とかあるの?)


 何年も一緒にいるにも関わらず、未だに精霊さんと呼んでいた。慣れてしまって当たり前だが流石にこのままというのも変だろう。


 〈名前はありません!〉


 (それなら、呼びやすい名前つけて大丈夫?)


 〈もちろんです! 後悔しませんか?後悔しても遅いですからね!?〉


 何だろうすごく不安だ。だけど、精霊の中では名づけは決定事項なようで、頭の中をぶんぶんと飛び回っている。正直鬱陶しい。


 (それじゃ、名前を付けるけど……)


 名づけって苦手なんだよね。


 先入観というか、知識が邪魔をする。何よりもセンスがない。


 頭の中で浮かぶ名前が【ナ〇ィ】で占領されてしまう。それじゃいけない…。


 (よし決めた、困難な時も共に歩み、導いてくれる精霊さんのイメージから【ノア】なんてどうだろう?)


 〈気に入りました! 私はノア。これからも主人様をサポートする存在として頑張ります!〉


 精霊にも名付けの影響は出るらしい。しっかりと尻尾一つ分の魔力を持っていかれた。


 勿論、名前の由来はノアの箱舟からだ。


 神の指示に従っていること、私を助け、導いてくれること。オリジナルではないけど割と合っているのではないか?


 「これからも、よろしくお願いしますねマスター!」


 いつの間にか少女が足を伸ばして楽な姿勢をしていた私の上に座っていた。重さは感じないのに人間の温かさが伝わってくる。


 いや、人間というより…。


 「え、エルフ!?」


 この世界では初めて見たが、ブロンドの髪、尖った耳は私のよく知るエルフの姿と一致する。正し、グラマーなエルフと違って小さい、はっきりいって幼女だ。


 「名づけにより、マスターと魂の繋がりが強化され、新たなスキル【分身具現化】を獲得しました」


 分身具現化とは、文字通り分身を具現化するスキルで、魔力を消費することで、自らの分身を理想の姿に体現できるというスキル。フォレストウルフが覚えた人化の上位スキルだ。


 本体であるノアは私の中から出られないため、分身体を作ることにより外で実体を持つことが出来るようにしたのだと。勿論、感覚も共有できる。

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