表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lycoris radiata  作者: 緋泉ちるは
11/34

討伐からの帰還

 〈エリアボス討伐により個体名ミナモに新たな力が付与されました。〉


 精霊ではない。世界の言葉が頭に響く。


 言葉を受け取ると、使った魔力が補充され、尻尾が新たに増え5本となった。


 「せっかくなら疲労も回復してくれればいいのに」


 魔力は回復したものの、死闘を演じた体にはガタがきている。


 その分得るものは多かった。


 尻尾は勿論、新たな武器と新たなスキル。


 何よりも戦闘経験が大きい。


 反省点は数知れない。


 焦りと緊張で力は余分に入っていたし、スキルの配分ももっと上手くできたはずだ。


 何よりも油断。


 勝利の道筋を見つけた瞬間、魔力感知を発動しているにも関わらず拘束を許した。併用していた危険察知も解いていたしダメダメだったな。


 (もっと強くならなきゃ)


 〈共に成長しましょう。私も強くなります!〉


 (うん、ありがとう。これからもよろしく)


 〈はい、お任せを主人様!〉


 決意新たに立ち上がる。


 いつまでも、村のみんなを心配させる訳にはいかない。


 ロッククラブの亡骸を収納し、周囲を確認する。


 激しい戦闘は周囲に結構な影響を与えていた。


 数多くの木はなぎ倒され、岩は割れ、一部地も抉れている。


 そういえば……!


 回復した魔力を贅沢に使い、魔力感知を広範囲に広げる。


 居た!


 森移動できない私は枝を伝い、背の高い木を登っていく。


 目を覚ましても落下しない様に、蔦で枝にぐるぐる巻きにされていた。


 子供はショックからか今はぐっすりと眠っていた。


 剥ぎ取り用のナイフで蔦を切り、その蔦を使い子供と私に巻きつけない様に固定する。


 蔦だけだと子供に負担がかかるので立て抱っこをするように左腕でお尻を持ち上げる。


 起さない様にゆっくりと枝を伝い地面へと降りる。


 「この子……獣人ね」


 頭の上に楕円形に耳、毛のすくないすらりと伸びた尻尾、くせ毛のショートカット。


 どれも白をベースに少し黒が混ざったような色……模様をしている。恐らくは虎か豹か…いや縦じまは虎だったか。


 そんな事は今はいい。気になるのは細い首にはめられた首輪だ。


 一部破損しているようだが、未だに効果を発揮しているようで魔力を感じる。


 〈奴隷に使用される物だと思われます〉


 なるほど。


 ロッククラブにやられた人間は奴隷商か何かで、この子は連れていかれる途中だったのかな。


 〈少し時間を頂ければ解除できますが、実行しますか?〉


 (命に関わるようなら優先し、そうでないのなら村に戻ろう)


 〈破損しておりますが、命に関りはないと思われます〉


 (わかった。精霊さんは魔力感知で周囲の警戒をお願い)


 〈お任せを!〉


 子供に負担をかけないように、移動するのは神経を使う。なので、私は子供に集中し、周りの事は精霊にお願いした。


 村に帰るまで行きの倍近く時間がかかった。


 ロッククラブとの戦闘が昼過ぎに始まったが気づけば日が落ち始めている。


 村の近くまで来ると、閉じられていた門が開き、人が飛び出してきた。


 「ミナモさま、無事で……よかったです」


 普段は無表情なくせに瞳に涙を溜め、モカはくしゃりと顔を歪めた。


 嗚咽を漏らし、俯いたので頭を撫でて安心させる。


 「ただいま。モカも無事でよかった。ステラをよく守ったよ」


 普段からそれくらい感情豊かなら……いや、たまに見せるこういう仕草がいいのか。ギャップ萌えってやつ?


 モカに続き、警戒組3人が駆け寄ってきた。


 「お帰りなさい。ご無事で何よりです」


 3人を代表し、ココアが前にでた。


 「みんなも警戒ご苦労。異変はなかった?」


 「はい、問題なく。と言いたいところですが、ステラさんとモカ様が傷つき戻られたときは焦りました。その際に警戒組全員で応援に駆け付けるか、警戒を続けるかで口論が少し……」


 ココアは肩を竦めちらりと後ろをみた。


 私が視線を送るととラテとアールが露骨に視線を逸らす。


 「まぁ、心配かけた私たちにも責任がある。今回はお咎めなしってことで」


 二人から安堵の息が聞こえた。


 「フラットはいる?」


 「ここに!」


 3人の後ろに控えていたらしい。小さくてわからなかった。


 「フラットの方はどうだった?」


 「は、はい!住民に必要最低限の携帯食料のみ持たせ南門に避難。その際に住民の人数確認に手間をとりました。改善と対策が必要かと思いまふ!……うぅ……」


 慣れない報告で最後に噛んだ。


 顔を紅くし、恥ずかしそうに俯く。


 可愛いなぁ……。私はポンポンと軽く慰めるように頭を撫でる。


 「わかった。いきなり任せた割には上出来だと思う。よくやった」


 羨ましそうに3にんはフラットを見ている。ココアは後で褒めてあげてもいいだろう。他の二人は……口論したからこれくらい差をつけてもいいよね。


 「後、この子をお願い。私の部屋で休ませてあげて、そして見張りを一人つけるように」


 「獣人の子供ですか? わかりました」


 体に巻き付けていた蔦を切り、子供をフラットへと渡す。


 フラットが村の中へと子供を抱えて走っていった。


 後は、村の皆に報告かな。


 「それじゃ、みんな戻ーー」


 モカが背中に抱きついてきた。


 それに続くように、ラテとアールが。少し躊躇った後にココアも抱きついてくる。


 子供を抱きかかえていた手前、我慢していたようだ。


 普段から無表情なだけで甘えん坊のモカは通常通りと言っても差し支えない。ラテとアールも隙をみると甘えてくるので驚かなかったが、クールなココアまでも甘えてくるのは意外だ。私よりも背が高いので、逆に抱擁されているが。


 各々、不安があったのだろう。結果よくやってくれた。ラテとアールは甘えさせるつもりはなかったがこれくらいいいだろう。


 「よし、英雄のご帰還だ!」


 突然、アールが私の股の間に首を突っ込み持ち上げた。肩車だ。


 「ちょっと、恥ずかしいって」


 「そうです! 私もやりたいですー!」


 「ラテ危ないから揺らさないで! あぁもう! モカ、ココアこの子達をどうにかしなさい!」


 「ミナモさまは村を守ったのですから。これくらい当然です」


 「そうですね、止める理由はないですね。それに、村のみんなも手を振っていますよ」


 いつのまにか村のみんなが集まり手を振っていた。


 「もう、仕方ないな」


 開き直って無事を知らせるために大きく手を振るう。それだけで歓声が大きくなった。


 仕方ないと言いつつも笑みが止まらない。


 門を潜るとみんなが集まり祝福される。


現金な奴かもしれないが今回の結末は終わってみれば、皆が無事で成長も出来た。


 初めてのエリアボスとの戦いは最高の形で幕を閉じたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ