case.1 森ノ大国へ
第6章開幕!
今回の章は短めです!
「それで、クサナギ。まずお前には二つ聞きたいことがある。とりあえずそこへ座ってくれ」
「は、はい!」
俺がそう言うと、クサナギはビシッとした姿勢のまま、綺麗なフォームで椅子に腰掛けた。
「まず一つ目だ。お前、何処で何をしていた?」
そう、クサナギは今回の戦帝国襲撃で活躍しなかったのだ。と、いうかそもそも居なかったのだ。サタールの所に居ると思ったんだが……。
どこにいるかすら分からなかった。
それが気になっていたのだ。
「あ、あのそれは―――」
「そいつァ俺から話すぜ、大将」
クサナギの言葉を遮って、サタールが立ち上がった。
「ああ、何か事情があったのか?」
「勿論。じゃなきゃ俺がコイツを外へ出したりはしねェさ」
「ほう? では何があったのか聞かせてもらおうじゃないか」
「いんや? そんな必要は無いと思うぜェ?」
「……? それはどういう?」
「多分だが、大将が弟子に聞きたいことの二つ目と内容が一緒だろうからよォ」
俺の聞きたい、二つ目のこと……。
ああ、そうか。なるほど。全て合点がいった。
「―――勇者と巫女、だな?」
「ご名答だ。俺ァこの前、レオンの野郎が小声でボソボソとこう言ってるのを聞いちまってなァ……『勇者が―――巫女が―――グンシンが―――』とか言っててよ」
レオンが……?
てか、そういえばレオンも何処へ行ったんだか。
とりあえずちょっと呼び戻す命令を出しておくか。
“今すぐ我のもとへ来い”
簡潔に命令を出した。……支配が切れかかってきてるのか……?何故アイツは居なくなっていた……?
そう思っていると、レオンはすぐ会議室へ入ってきた。
「あ、レオン。お前何処に居たんだ……?」
「私は……魔王の間に……」
あっ。
そう言えば、放置したままだったか。
……何か変な濡れ衣着せちゃったな……。申し訳ない。
「……こほん。話を戻すが、その勇者と巫女について詳しく聞かせてくれ」
「……かしこまりました」
そう言ってクサナギは話し始めた。
「まず、そもそも《勇者》と《巫女》についてなのですが、魔王様はご存知ですか?」
「……すまない。文字通りのイメージしか想像できないな」
魔王を討伐して世界に平和をもたらすのが《勇者》。
神社とかで神の使いとして働いているのが《巫女》。
こんなイメージしか湧かないが……。
「それでは説明致します。《勇者》というのは、必ずしも《魔王》の敵であるという事はないのです」
「ほう?」
「かつてこの世界には、魔族の勇者様がいらっしゃいました。その時は、勇者様も魔王軍の傘下となり、魔王と共に世界征服を企んでいたのです。しかし、その時代は《巫女》が強大な力を持っていて、その力で二人を倒し、この世界に平和をもたらした……そんな時代もありました」
魔王と勇者がタッグを組んだのか。
……それは、冷静に考えればありえない状況だが、この世界では常識は通用しない。
だから、そんなありえない事が平気で起こっても何も不思議はないだろう。
「《勇者》というのは、己の敵を全て滅ぼす使命を持つ者のことを指します。生まれた時から、世界に唯一の《勇者》として生まれ、スキルは最低でも五つは所持しています。恵まれた才能と身体能力で、幼い頃から『誰を敵とし』、『誰を救うのか』を考えさせられる……と聞いたことがあります。そんな選択が出来るのが《勇者》という職業なのです」
どの世界でも、《勇者》ってのはこう優遇されているのは何故なんだろうか。
しかし、まあ大層な使命を背負っているんだな。誰の勇者になるか選べるなんて、贅沢なヤツだ。
「そして《巫女》。これは神クラスのスキルを一つ以上、通常のスキルも合わせてこちらも五つ以上のスキルは持って生まれることが分かっています。自らが選んだ主神に使える《巫女》として、日々の雑務をこなしたり、修行をしたりする職業です」
俺の想像してたのと、あんまり大差はないが……巫女もスキルを最低五つとはな。しかもその内一つは神クラス確定ときた。
クソ……優遇され過ぎだろ正義サイド。
「そして、そんな二つの職業を持った二人の人物が、《森ノ大国》にて確認されました。それがついさっきの事です。……正直目を疑いました。突然、現れたのです……本当に突然」
「何故、分かったんだ?」
「私も、以前に聞いたことがあるのです。帝王ゼリド様が、“勇者召喚”がどうとか、そういう話を」
……またゼリドか。
「それをサタール様に話したところ……偵察に行ってこい、と」
「アァ、そういうこったァ。勇者サマとくれば、最初に思いつく単語は敵だ。魔王軍の敵になるなら、先に動かないと負けちまう可能性があるからな。それが怖くて、先に行動を開始させたってワケよ。しかもそんときゃァ状況が状況だったから、なかなか言えなかったんだよ。わりいな、大将」
……あー、つまり今の話を纏めると。
クサナギは“帝王ゼリド”から、サタールは“レオン”から《勇者》と《巫女》の単語を聞いた。
それを危険視したサタールが、クサナギに偵察の命令を出した。
そして先程、クサナギは《森ノ大国》でその存在を確認した、と。
しかも、それは突然現れた……らしい。
「あー、うん。大体理解した。それで、クサナギは何故、それが森ノ大国に現れるって分かっていたんだ?」
そう。分かっていないと、そもそも観測できないはずなんだが。
それが少しだけ気になっていたのだ。
「……私のスキルを使いました。スキル『直感』……ホントに使えないスキルなのですが、今回は何故か機能しまして……」
スキル……か。まあ、何でもありな世界だしな……。
『直感』……文字通りの意味なら、まあそういうことだよな。
「しかし……突然現れた、ってのが気になるな」
「はい、そうなんですよ。光と共に、突然現れまして……」
森ノ大国に現れた、勇者と巫女か……。
二人同時に現れて、しかも神襲撃の直後に……か。タイミングが出来すぎている気がするな。
「これは、調べてみるしかなさそうだな。ありがとう、サタール、クサナギ。お前たちのお陰だ」
「気にすんな大将。俺たちの敵になる可能性があるなら、調べておかないといけないことだしな」
「私も、報告せずに勝手に動いてしまって申し訳ございませんでした……」
「え? あ、ああ気にしなくていいぞ。別にこちらに損は無かったしな」
俺は、頭を下げるクサナギに顔を上げるように手を動かしながら、そう答えた。
「さて……それじゃあ、その勇者と巫女とやらの調査に行こうと思うが……行きたいやつはいるか?」
全員でぞろぞろ行くわけにもいかないし、少数精鋭でいいだろう。
「はい! 私は主様と一緒に行きたいです!」
そう言って手を上げたのはルイン。
「オーケー。ルインと……あとは二人くらいか」
四人いれば充分だろう。何かあった時でも対処出来そうだ。
「そんじゃ俺っちも行こうかねェ?」
今度はサタールが手を上げた。
「よし、オーケーだ。あと一人、行きたいやつは挙手をしてくれ」
と、俺が言った直後、
「はいはいはいはいはいはい!!! 私が行ってもいいでしょうかッ!」
と大声で手を上げたのは、クサナギだ。
「お、おう。勿論いいぞ」
「あ、ありがとうございますッ!」
食い気味のクサナギに困惑しつつも、俺は了承の返事をした。
「よし、それじゃあ……ルシファルナ・ベルゼリオ・マノン・アスモフィはここで待機。好きなようにしてていいぞ。ただ、これだけは守ってくれ。“俺たちに害を成す者は確実に排除しろ”。いいな?」
俺のその言葉に、魔帝八皇の四人は、
「ハッ」
「了解致しました」
「ういーす」
「任せなさい!」
と、四者四様の反応を見せたところで、俺は頷いてからマントを翻して歩き始めた。
「さあ、行こうか。目的地は《森ノ大国》。目的は《勇者と巫女の調査》と……」
俺は“あること”を思い出して、それもちゃんと付け加える。
「あとは……忘れていたが、森ノ大国に行くということは、アイツに会えるかもしれないな」
「アイツ……?」
と、俺の言葉にルインが首を傾げる。
そんな反応を見たサタールは、俺の言いたいことが分かったのか、俺の代わりにそれを言ってくれた。
「ああ、そういうことかい。―――レヴィーナだな?」
「あっ」
サタールのその言葉を聞いて、ルインもハッと驚いた表情になる。
そう、森ノ大国にはレヴィーナがいるのだ。
残る魔帝八皇の二人の内、【嫉妬】を司る弓使い、レヴィーナ。
彼女と以前遭遇した時に、“森ノ大国”という言葉と“神に気をつけろ”という言葉を残して去っていった。
そして、それを騎士親子のリガーテ、リガルテに言ったら、彼らは飛んで行ってしまった。
だから、今回はその三人の捜索ってのも目的に入るだろう。
「と、言う訳で。レヴィーナ・リガーテ・リガルテの捜索も同時に行う。それでは出発しようか」
「はいっ!」
そうして、俺たちはルナ城を旅立って行った。
“神には気をつけろ”……レヴィーナのその言葉が唯一の疑問点だが、まさかまた神に襲われるなんてことはないよな……?
▶フハハ、どうだろうな? 魔王に恨みを持つものは少なくないから、今回も我同様襲ってくる神が居るかもしれんぞ?
……おいハヌマーン。冗談でもやめてくれ……流石に連戦はキツイっての。
まあ……そんときはそんときか。
やるだけやるしかないだろう。
俺は、そんな期待と不安を胸に、森ノ大国へと転移開始するのだった。
ダブル主人公になるの!(๑•̀ㅂ•́)و✧




