case.20 謳え、常世に降り立つ死の神よ
そういえばこの作品にはツンデレなキャラが居ない気がしてる
この短期間で三つのスキルを得た。
スキル『天使』。
アスモデウス曰く、このスキルは、
“ありとあらゆる光を操り、攻撃から回復まで使える万能スキル”だという。
さらに、このスキルを所有する……できる種族が“天使”しか居ない……はずの為、今こうして“半神”てある俺がこのスキルを持っているのは異常だと言う。
俺がこのスキルを所有する事で、何が起きるかは想像がつかないが、ベルゼブブ曰く、
“このスキルを所有し続ければ、いずれ真の神へ近づけるか……もしくは天使になれるかもな”、との事だ。
スキル『悪魔』。
これは『天使』の真逆と言えば想像しやすいだろうか。
“ありとあらゆる闇を操り、攻撃から妨害まで使える万能スキル”、らしい。
このスキルも、所有できる種族が“魔族”しか居ない事から、このまま俺がこのスキルを所有する事で、いずれは“魔神となるか、悪魔となるか”……と言われてしまった。
スキル『死神』。
このスキルについて分かることは一つも無かった。気づいた時には手に入ってて、誰も聞いたことの無いスキルだし、ステータス画面からも調べられる事は出来なかった。
しかし、恐らく俺のこの手に握られている鎌が関係しているのだろう。
じゃなきゃおかしい。
だが。
……俺の脳内には、自然とこのスキルの使い方が浮かんでくる。
このスキルだけじゃない、今までに獲得したスキルが、全て……俺に使ってほしいと懇願するように疼いている。
頭の中に、スキルの使い方が勝手に思い浮かんでくる。
『ねぇちょっと待って!?!? ボクは!? 【色欲】はぁぁぁ!?』
あ……そうだった。
スキルは四つ手に入れてたんだった。
スキル『色欲』。
まあ……効果は分からん。
また今度調べる。
はい。
『適当だなー、早く死んじゃえばいいのにー』
……辛辣だな。
ってか……いい事思いついたぞ……?
……唐突かもしれないが。
それも飛び切り派手なヤツを……!
なぁ、どうだろうか。
俺は俺の中にいる大罪達にそう語りかけた。
すると、
『面白ェ! 今の魔王ならそれも可能かもな!』
『フン……我らを、な。面白いじゃないか』
『いいねーいいねー! やっぱりキミ面白いよ!』
フフン……我ながらいい作戦だ。
どうやら、最終決戦は派手に幕を閉じそうだぜ……?
「さあ早速決着を―――」
そう、言いかけた時だった。
「ちょっと待ったァァァァァァッ!」
叫びながらこの広間に突撃してくる人影が三人……。
この状況で三人ってことは……まさか……!
「サタール様と、そのお供二名の参上だぜ!」
「お前たち……! どうして此処に!」
「いいから黙ってコイツを受け取りな!」
そう言って、サタールは剣を一本投げつけてきた。
飛んできたのは、俺が創った剣……“神剣・神滅”だった。
さらに、それに続いて、
「俺も返すぜ魔王!」
マノンが一本の杖を投げつけてきた。
それは、これまた俺の創った杖……“黒神覇杖”だった。
「私も一度返却させて頂きます!」
さらにルシファルナも、俺の創った弓を投げつけてきた。
“合神器伝承弓”だ。
「ソイツらも使ってやんな! 武器達の創造主は、紛れもないアンタなんだから!」
……サタール、カッコいい展開を作ってくれるじゃないか……!
いいぜ、使ってやるよ……。
神を殺すには、派手すぎる舞台にしてやるさ。
「―――ようやく……死ねるのか」
突然、ハヌマーンは悟ったようにそう言ってきた。
「そんな事言うな。最後の最後まで、全力で戦おうぜ?」
「貴様は、やはり面白いな。我のこの顔を見ても、何とも言わなかったんだから」
「そうか……? 気にしたら負けだと思うが」
「我も、そう簡単に割り切れたら……な。しかしもう良いのだ。我はこの肉体を現界させるのに、老害の身体や、その他兵士達の肉体や魂を生贄として使ってしまった。だから、もう引き返せないのだよ」
「ハヌマーン……」
俺は、今からコイツを殺す。
慈悲は、過去に全て捨て去った。
―――はずだ。
そのはずなのに……どうしてか心が痛む。
やらなくちゃ……殺らなくちゃいけないんだ。
それなのに……
「……そんな悲しそうな顔をするな魔王よ。いいのだ、我の末路には丁度良すぎるくらいだからな。色々と迷惑をかけたな」
―――何だよ……。
「死ぬのは怖くない。今までに何度も死んでいるからな。別に、神は死なないし……な。死ねばまた復活して、神の世界で退屈な日々を過ごす。ただそれだけだ」
―――クソ……。
「クハハ……楽しかったぞ。本当に色々騒がせてしまったな」
―――情緒不安定にも……程があるだろうがッ!
「今の俺には……」
―――お前を殺す事が出来ない。
そう、言いたいのに。言えなかった。
ハハ、俺も大概だな。情緒不安定だ……俺もアンタも。
クソ……どうも落ち着かない。
一体どうすれば……!
「……我も、神として最後まで使命を全うしようじゃないか……。ああ、そうだ。我は貴様を殺して新たな顔を手に入れるんだ……! 魔王を殺せば……アダム神は喜ぶッ! 我もこの醜い顔とおさらばできるッ! だから戦う! さあ魔王! コイ……! 来いよッ!!!」
―――だが……ッ!それじゃああんまりにも……
「フン! 貴様が来ないなら我から行こうッ! “猿神之膜雷”!」
ハヌマーンは、ルイン目がけて攻撃をしてきた。
ルイン……にだとッ! 俺じゃなくて、ルインにッ!?
「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」
ルインは、ハヌマーンが放った雷の網に捕らわれてしまった。
そしてルインを捕まえた雷のネットは、ハヌマーンによって広間の天井に吊るされる。
「主……様ッ!」
クッ……ルインッ!
クソ……!ルインを人質に取られるとは……ッ!
「さあ……全力で来いよ魔王ッ! 貴様が我と戦わなければ、この娘は死ぬぞッ!」
……ッ!!
―――ルインが……死ぬ……?
「良いのか? 貴様の一番大切なモノを失っても?」
―――俺の……大切なルインが……?
「居なくなるんだ。貴様の前から、未来永劫……な」
―――ルインと……未来永劫……。
「我を殺すか、娘を殺すか。好きな方を選べ」
そんなの……どっちも助ければ―――
「ああ、ちなみにどっちもは無理だぞ? 我を救おうとした時点で、我はこの娘を躊躇なく殺す。さらに言えば、この戦いはアダム様が見ておられる。……アダム様が、この戦いを見るのをやめた時、我はアダム様の加護を失い……やがてそのまま消えていくだろう」
「……」
「だから、戦え。我と、戦え」
……どれが本当のハヌマーンなんだ。
全部が本物で、全部が偽物。
そんな気がしてならない。
……俺はそんなコイツに翻弄されて、悩んで、回りくどく助けようとしてしまった。
……ハァ……俺もまだまだだな。
まだ……全然子供のままだ。
だけど……ルインが居なくなるのは……許さない……。
ルインだけは、絶対に失いたくないんだッ!
ああいいさ、殺ってやるよ。
お望みどおりな……!
「すまない、皆。少し、気の迷いができちまったみたいだ」
俺は鎌を置き、代わりに“神滅”を手に持った。
「ハヌマーン、テメェは最初っから情緒不安定だった。俺は、そんなお前に翻弄され続けた。だから突然優しくなったテメェに、気を許しそうになったが……もう、それも終いだ」
俺だって引き返せないところまで来てるんだ。
今まで何人も殺してきた。
皆、それぞれ心はあったはずなんだ。
だから、ここまで来て引き返すワケにはいかない……ッ!
『―――慈悲を捨てろ』
ああ、いいぜ。
魔王として、神として。なにより死神として……慈悲なんてもんはキレイさっぱり捨て去ってやる!
『―――己だけを信じろ』
……俺は、俺と……俺の信じた仲間だけを信じる!
それが、“王”だと思うから!
『―――己の罪を受け入れろ』
ああ……分かっているさ。
前にも言っただろ?俺は、もう三つの大罪を背負っているんだ。
今さら一個や二個、百個だって増えようが関係ねぇ!
『『『―――叫べ、我らの名を』』』
『『『―――祝え、我らの復活を』』』
『『『―――謳え、死の絶望を』』』
「―――そう、それでいいのだ」
「これが、俺の……俺たちの新たな力だ」
俺は地面に手をかざし、そこに魔力を集めた。
そして、大きな声で……こう叫んだ。
「“大罪焉喚”ッ!」
刹那、眩い光が辺りを覆った。
しばらくして光が消えると、目の前には三つの人影が佇んでいた。
「「「―――我ら七つの大罪。ここに降臨」」」
そこに居たのは、紛れもない三体の悪魔達だった。
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