case.18 姉・色欲・復活
さあ盛り上がってきました
「アスモ……フィ?」
目の前に立っていたのは。
そう、アスモフィだったのだ。
「はい、おねえちゃんです☆」
良かった……ナイスタイミング過ぎるだろ……!
僧侶であるアスモフィがこのタイミングで帰ってきてくれるとは……!
これで助かる―――
「ア……? お前……今……な……んて?」
そう、苦しいながらも何とか切り出せた俺。
そんな俺の質問に答えながら、アスモフィは近づいてきた。
「ですからぁ、おねえちゃんに殺されてください!」
―――やっぱり。俺の聞き間違いじゃなかった……!?
「クク……クハハ……クハハハハハハッ! 仲間割れとは面白い! 愉快だッ!」
「―――ハヌマーン、まさかお前……ッ!」
「いいや? 我は何もしていないぞ?」
何だと……?
じゃあ何でアスモフィは俺の事を……
「いいから黙って殺されてください!☆ 死ねば分かります!」
そう言いながらアスモフィは、手に持つ杖を掲げた。
「おい……待て……!」
「待ちません☆」
俺の静止も虚しく、アスモフィは無慈悲に杖を俺に突き刺してきた。
「―――ガ……ハッ……!」
「あ……るじ……さまっ!」
やばい……もう……
な……ん……で…………?
「アハハハハハハハハッ! 愉快だ愉快! 仲間の裏切りで死ぬとはなァ! ギャハハハハハハハハハハハハ! あー、面白くてしばらく眺めてたくなっちまったぜェェエ!」
俺が意識を失う直前に聞いたのは、ハヌマーンのその言葉だった。
―――俺の視界は暗転していく……。
■
目が覚めると、俺は暗くて寒い空間に一人居た。
そう、目が覚めると、だ。
しかもこの空間には見覚えがある。
ここは……
「“大罪の間”……?」
『ハァ……どうやらそうみたいだぜ』
『―――先程の我はどうかしていた……』
……やっぱり。ってことは……ここにも?
『なァ、魔王。あのお嬢ちゃんはなんの罪を背負ってたんだ?』
「罪……」
そうか……そうか!
全てが、全てが繋がった!
アスモフィが俺を殺したのは……あのままだと……だから……!
『すまない……今の我では思考がうまく纏まらん……説明してくれ』
ベルゼブブ……?さっきからお前どうしたんだ?
『―――気にするな』
……分かった。
俺はさっき、ハヌマーンに殺されかけた。
まだ、この時の俺は死んでなかったよな?
『当然だろう』
そう、まだ死んでなかったんだ。
そこに、恐らく目的を終えて帰ってきたアスモフィが駆けつけてきた。
あの空間を見て、頭のいいアスモフィは一発で気づいたはずだ。
俺とルインが、顔のイカれた猿に殺されそうになっているところを。
そして、アスモフィは俺を殺す事を決意した。
『それは何故だ? あの娘はオマエの仲間ではないのか?』
いいや、仲間だ。仲間だからこそだ。
アスモフィは、俺の『転生』のスキルを知っていた。
俺が魔帝八皇の皆には教えたから。
そしてあの状況で俺が死ねば、ただ『転生』が発動し、そのままの状態でこの場に戻ってくる事も分かったのだろう。
だから彼女は俺を殺す事で、俺をこの空間に送り込んだんだ。
『そう、今まで俺の【憤怒】を背負ったサタールって鬼と、テメェの【暴食】を背負ったベルゼリオって竜人が魔王を殺したときに、そのスキルが発動して、俺達と出会ってるからだな』
その通りだ。
どうやら俺は、魔帝八皇……いや、正確に言えば七つの大罪の【罪】を背負ったヤツに殺される事でお前たち始祖に出会う事が出来るらしい。
しかも都合のいいことに、スキル『転生』がしっかりぴったり噛み合っているんだ。
『―――なるほどな。完全に理解した。それで……あの娘の罪は何なのだ?』
ああ、アスモフィの罪は……
「―――ボクだよボク! ボークーだーよー」
俺が答えようとしたその時、目の前からその声が聞こえてきた。
暗闇の中から現れたのは、一人の男。
まるで天使の風貌をした、美少年という感じの男が。
『あー、声で分かった。もういい、我は寝る』
「えー、ひどいよオジサマぁ? 寝ないでよぉ?」
『Zzzzzzzzzzzz…………』
あ、ガチで寝てるやん。
と、いうことはベルゼブブが苦手な相手なんだな。それも相当。
『おう、久しぶりだなアスモデウス!』
「おひさー、リーダー!」
アスモデウス……!
やっぱり、か。
アスモフィの罪は【色欲】。
【色欲】といえば七つの大罪では、アスモデウスという悪魔が始祖として有名だ。
今までの流れから言って、こうなるのは大体予測できた。
「早速だけど、キミについていくよ? もう詳しい事話す必要は無いよね?」
本当に唐突に、彼はそう言ってきた。
理由はなんとなく分かる気がする。
「―――暇だったんだろ?」
「ぴんぽーん! だいせいかいです!」
こんな暗い空間で一人、長い間一人……だ。
そりゃ暇だよな。
「それじゃキミを強化しつつキミの中に住ませてもらうね!」
「強化……。お前はどんな強化をしてくれるんだ?」
今までがどんなだったか覚えてないが、まあレベルアップとかしたから、強くなるのは覚えている。
あとは焉魔法の習得とかな。
「んーっと、ボクはねー……。スキルを一個あげるよ!」
「スキルを……?」
「うんうん! 何でもいいから、一個プレゼントしてあげる!」
「何でも……? 今なんでもって―――」
……っとと。危ない危ない。使い古されたネタを引っ張り出してきてしまった……。
と、思いとどまり俺は口を手で塞いだ。
「なんでもいいよー」
「そうか……? それじゃあ……」
と、俺は今まで欲しかったあのスキル……いや、そのスキルの種類を言ってみた。
「回復系のスキル……とかお願いできるか?」
「回復系……? それならなんでもいいの?」
「ああ、回復が出来るなら、な」
ずっと欲しかったんだ。
自分で回復できるようになりたかったんだ。
これは、千載一遇のチャンスだった。
「おっけー! 任せといて! それじゃあ失礼しますよー」
そう言って、アスモデウスは俺の中へと入ってきた。
すると、早速俺の身体には変化が起き始めた。
レベルが上がる。
▶レベルが200になりました。
▶レベル上限が300にまで解放されました。
それに伴い魔力が増える。
さらに身体的特徴にも変化が。
髪が、伸びたのだ。
それも腰の辺りまで、ぶわっと、一気に。
▶スキル『天使』を獲得しました。
▶スキル『悪魔』を獲得しました。
■
“焉魔法 伍裏/福音”
“焉魔法 伍/焉光”
を解放しました。
■
スキルが……二つ……?
これは……
『ふぃー、これからお邪魔しますね!』
『邪魔だ邪魔!』
『……チッ』
……一体俺の中はどうなっているんだ……?
いや、それも気になるが、早く現実に戻らないと……!
『あ、もう戻る? じゃあ飛ぼう!』
え、飛ぶ?
『うんうん、ぴょーんと!』
え、あ、ああ。分かった。
俺は言われるがまま跳ねた。
『はい、じゃあワープしま〜す!』
すると突然、視界が暗転して、すぐさま光点した。
■
全てが……今まで全ての出来事が早く動きすぎて、目まぐるしい。本当に目まぐるしい。
だが、俺は……俺は帰ってきた。
戻ってきた。
目の前には、ハヌマーンが。
横には、アスモフィが。
さらに逆横には、ルインが。
「―――おかえりなさい。主様……! えへへ……」
「待ってたぞ〜? もう遅いんだから……」
そう言う二人に、俺は一言。
「―――待たせたな」
さあ、これがファイナルラウンドだ。
「魔王……生きていたのか……ッ!」
「ああ、俺には死ねない呪いがあってな! フハハ、不死の魔王。いい響きだろう?」
「―――ふざけるな……ッ! もう……それでは……ッ!」
それでは―――その言葉の続きは無かった。
しかし、もう言わなくても分かる。
―――俺は、最強だ。
もう誰も、傷つけさせない。
「―――神を滅ぼす。まずはお前が一柱目だ。死の準備をしておけ―――」
そう言う俺の姿は、まさに“魔王”そのものであった。




