case.1 【嫉妬】降臨
「レヴィーナ……!?」
俺は驚いた。
まさか、向こうからこちらへ赴いてくれるなんて。
シュッ、クルクルッ、スタッ。
そういう効果音が付きそうな感じで、どこからともなく現れたレヴィーナ。
レヴィーナの容姿はとても整っていて、まるで輝いていた。
まず顔。顔は隠しておらず、その長い耳や、キリッとした目つき、さらにショートボブ、というのか?短めの髪で、なんともボーイッシュな感じに仕上がっている。
次に脚。履いている服が、ショートパンツの為、すらーっと伸びた長い綺麗な脚が異様に目立つ。
最後に胴体だが。腹出しの服を着ていて、すごくエロい。
そのキュッと引き締まったお腹が、美しい。
そして肝心の胸だが……
ハァ……まあ、うん。
「何よ。何よ何よ! 何故魔王は私の胸を見てため息をついているのッ!」
どうやら俺の視線に気づいたらしいレヴィーナが、怒りの声をあげた。
うん、サッと一言だけで伝えよう。
―――何もない平原……。
を、連想するといいかもしれない。
「魔王……今何かすごい失礼なこと考えてるでしょ」
「い、いやー。特には……?」
クソ、感がいいな。
「ハァ、もういいわ。それよりも、よ!」
「お、おう」
「今日はね、貴方と話し合いをしに来たのよッ!? それなのに何なの! あの体たらくはッ! 女とイチャイチャ、女とネチャネチャ、それに男まで! あーもうみててもどかしかったのよ!」
突然、人が変わったように言葉を撃ち込んでくるレヴィーナ。
だいぶイメージと違うキャラなんだが。
「……まあいいわ。今日は気が変わったから、また今度出向く事にするわ」
そう言って後ろに振り返って歩き出すレヴィーナ。
いや、ちょっと待ってくれよ。
「待て待て待て!」
「? 何よ」
「もうこの際だからハッキリと単刀直入に言うけどな、お前ここまで来たんだったら魔王軍に入れ!」
俺は、もうそろそろゆっくりと休みたかったので、ハッキリと言うことにした。
これで、仲間になってくれるのが、一番楽なルートなんだけど……。
「嫌よ」
ですねぇ……。
一筋縄じゃ行かないとは思ってたけど、やっぱりかぁ……。
「一応、理由を聞かせてくれないか」
「嫌よ。私はあまり語らない女なの」
そう言いながらスタスタと歩いて行ってしまうレヴィーナ。
さすがに、ここで何のヒントも無いまま逃す訳にはいかないと思い、俺はレヴィーナを呼び止める。
「ちょっと、待っ―――」
すると、俺の言葉を遮ってレヴィーナは一言だけ、俺にこう言った。
「―――森ノ大国、よ。神には気をつけなさい」
そう言い残して、レヴィーナは転移していった。
「一体、何だったんでい……?」
「フム、事情は分からないが、森ノ大国に行けば分かるという事だろうか」
「ハァァ!? あの女マジでダリぃな!」
「いやいやマノン、仕方ないでしょう? 私達だって最初はそうだったんだから」
「ハァ!? 俺はちげぇし!」
「あっ、そうだったわね」
「カカカッ! まあまあ、落ち着けやお二人さん」
そう、魔帝八皇達が会話に花を咲かせる中、俺は考えていた。
それは何か、勿論今後の事である。
レヴィーナを取りに、森ノ大国へ行ってもいいのだが、そろそろムルの陸づくりの仕事も終わっている頃だろう。
ここらでそろそろ俺たちの国をつくっても良いのかもしれない。
『だけどよォ、いいのかい? 先に国をつくったら周りの国が何て言うか分からねぇぜ』
『そうだな。それに貴様が求めるピースも、全然揃っていないではないか』
そう。俺が求めている物は実は全然揃っていない。ベルゼブブの言う通りだ。
まず、各国支配の為の魔帝八皇はあと少しでコンプリートする。【嫉妬】と【怠惰】だ。もう一枠、暗殺者ナキリも、一つ仲間に引入れられないか考えている。
そして次に、その国を支配する為に、各国に取り入ること。ここが一つも出来ていない。ここ、護王国シュデンと聖皇国ラーゼなら、王不在の今、媚を売るチャンスではあるのだが。
そして最後に、俺が……というよりは俺の中に居るサタン達のお願いなのだが、残りの大罪メンバーを集めて欲しい、という物だ。
あれは、俺の意思に関係なく、死んだときに会えるみたいで、集めてくれと言われて簡単に集められる物でもないから少し悩みどころなのだ。
さて、今やるべき事は見えてきたか。
「おい、皆。聞いてくれ」
俺はレオンの意識ももとに戻し、茹でダコの様に座り込んでいるルインとその他魔帝八皇の皆にこれからの事を話すことにした。
「俺たちはこれから、国を造り始めようと思う。やっとだ―――」
「やっ、やっとなんですね、主様!」
「ああ、やっとだ。俺たちの念願がやっと叶いそうだな」
この世界に来て、ルインと出会って。
最初に決めた約束。これが、ついに叶いそうなのだ。
「そして、そこで魔帝八皇達……特にこれはベルゼリオとアスモフィにお願いしたいのだが」
「俺に出来る事ならば」
「私もそれなら!」
よし、この役はこの二人じゃないと無理だからな。そう思いながら、考えを話した。
「二人にはそれぞれ、シュデンとラーゼを支配してきてほしい」
「「国を……支配」」
「あぁ、王不在の今しかチャンスは無い。貴族が現れる前に、お前たちが支配するんだ。力で、ではなく、国民に支持されるような支配だ。出来るか?」
世界を支配するのに、なるべく敵は少ない方がいい。
だから国民達には、逆らう気が起きないようにしときたいのだ。
ベルゼリオとアスモフィはしばらく考えたが、やがてベルゼリオから口を開いた。
「いいだろう。魔王が臨む世界を俺も見てみたい。先代とは違うところを見せつけてくれ」
「私も……ルミナス様がそう言うなら、やる! それに、先代の……ニルマトリアとの約束だもん……やる、やるわ! おねえちゃんに任せなさい!」
「二人とも……ありがとう。早速行動に……と、言いたいところだが、流石に連戦続きで、もう休みたいだろうから、また明日以降という事にしよう」
まあ本音を言えば、俺が休みたいだけなのだが。
「確かにそうだな。一度魔界へ帰るとしようか」
そう、ベルゼリオが言ったのを皮切りに全員が「休もう」と言い始めてくれた。
よし、これで遠慮なく寝れる!
ああああああああああ、やっとの休みだ!
「それじゃ、門を開きますね」
ルインが、テキパキと“魔界之扉”を開く。
「よし、それでは……。一時休憩……だッ!」
「「「「おー!」」」」
俺たちは久々の休憩を取るべく、魔界へと消えていくのだった。




