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case.17 天空主神ゼウス

※サタール視点

「その女共は、俺の事を嗅ぎまわってたみたいでな。調べたら、貴重な存在だと分かった。だから供物にさせてもらった」



 ナ……二……をっ……!

 身体が引き裂かれる様な熱い痛みに耐えながら、俺は何とか手を動かそうとする。


 ルインと、アスモフィを助けないと……!



「無駄だ。その女共はもう既に死んでいる」



 は……?もう、死んでいる?

 何を……言っている?



「―――降臨の……現界の準備が完了致しました。いつでもいけます」



 マーリンは、アーサーにそう告げた。

 アーサーは頷き、そして言う。



「マーリンよ、始めろ! ゼウス様降臨の時だ!」


「ハッ」



 アーサーの言葉を受け、マーリンは手に持つ杖を天に掲げた。

 その瞬間、俺たちにかかる痛みが大きくなり、少し気を抜けば意識が飛びそうだった。


 隣を見ると、レオン達は既に気を失っていた。



「ア"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ア"ッ!」



 俺を襲う痛みはさらに激しくなる。



「マーリン、早くしろ。あの魔王を黙らせろ」


「……フッ……!」



 そこで、マーリンはさらに威力を上げる。俺は何とか耐えようと、頑張ったのだが、流石に耐えきることが出来なく……そして……



 ―――意識を失ってしまった。







「ようやく終わったか。さあこれで! ようやく! 降臨の時だ!」



 5つの生贄を得た魔法陣は、虚空へと消え去る。

 そして代わりに現れたのは、一つの巨大な魔法陣。



 俺、サタールはそれを、静かに見守ることしか出来なかった。


 と、いうか、動くことが出来なかった。


 何にも出来なかったじゃねぇか……!


 戦いだけが俺の取り柄だってのに……!




 大きく地面が揺れる。酷い揺れだった。


 ……来るッ……!



 俺の全神経が、危険だと告げていた。


 今までにあった事の無い、とても危険な気配。その証拠に、俺の筋肉が悲鳴を上げている。



 その時、魔法陣から光が現れた。光り輝く球体。


 あれが、ゼウス神……?



「フハハハ! キタキタキタキタキタァ! これが、我らの悲願! 神の降臨だァ!」




 アーサーは高らかに笑いながら、叫んだ。




 俺しか……居ないのか。戦えるのは、俺だけなんだ。

 大将も、小娘も……クソ女も居ねぇ。もう死んだかもしれねぇが……信じるしかねェ。いつもいつも、大将たちは奇跡を起こしてきたんだ。


 だから……!



「やっぱ、殺るしかねェよなァ!?」



 自分に言い聞かせるように、叫んだ。


 刀を引き抜き、その光球に矛先を向ける。



「貴様一人で何が出来ると言うのだ。私も、マーリンも、それにゼウス様も現れた! だから、貴様が勝て―――」



 アーサーが、そこまで言った時だった。



 ―――アーサーが、喰われた。



 光球に。いや、ゼウス神に。




「あ、アーサー王ッ! 何故……何故ですか神ゼウスよ! 何故―――」



 続けてマーリンも、光球に喰われた。


 おいおい、何だよあれはよ……。

 そう、困惑している時だ。



 光球が、徐々に人の形へと変わっていった。



 とても大きな人型へと変わり、そこで変化は終わった。




「……我が、人間如きに呼び出される事になるとはな―――」




 ゼウス神が、最初に放った言葉はこれだった。

 とても、屈辱に塗れた言葉。




「鬼の子よ。我が何故呼び出されたか、解るか?」



 鬼の子……俺の事だよな。

 俺は、その光り輝く神に向かって答える。



「解らねェよ……。だがな、アンタは俺の大切な奴らを喰ったんだ……俺がアンタを殺す理由には、それだけで充分だろう?」


「我が、汝の大切なモノを……。そうか、それは済まない事をした。だが、これは我の意思では無いのだ。それに……こうして呼び出された以上、我は貴様と戦わなければならない。そうなれば確実に我が勝つだろう。それでも……我と戦うか?」



 ……正直、怖えよ。神と戦うなんて、前代未聞の出来事だろうからよ。


 でも、やらなきゃいけねぇ。俺しか、動ける奴が居ねぇんだ……!



「やるさ。いや、殺るさ・・・! アンタを倒して、せめてもの弔いとする!」


「そうか……いいだろう。我と……我を存分に楽しませてくれ!」



 ……どうする。勝てるのか……


 いや、勝てるか勝てないかじゃねぇか。


 やるしかないんだ!だから……!




「最初から全力で行くぜェ……! “鬼神化”……!」



 鬼神化……俺の最大級の全力だ。

 これで、神に届かなきゃ、俺の負け……。



「届け……届きやがれェェェェエッ!」



 刀をただ一点に集中させ、突貫する。

 貫け……穿け……俺の刃ッ!



「“牙突天翔がとつてんしょう”―――」



 飛べ、翔べ……届けッ!



 ……だが、俺の刃は―――




「脆いモノだな」



 ゼウスの大きな指で弾かれてしまう。




 ―――届かなかった。



 俺の、負け……?

 何にも出来てねぇのに……。



「済まないな。人間。我の為に、死んでくれ―――」



 クソがよ……ッ!

 大きな手の平が近づいてくる。


 もう、死の瞬間も近いのか―――



「クソ……クソッ!」



 涙が止まらねぇ。情けなくてしょうが無い。何も出来ない自分が、情けなくて。



「“天空神之裁ゼウスインパクト”」



 その、最期の瞬間だった。




「どぅおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!“マノンインパクト”ォォォオォォォォォォォォッ!」


「グフォァッ!」




 すげぇバカでかい声で、叫びながら神に向かって攻撃する馬鹿野郎が現れたのだ。


 名を、マノンと言う。


 魔帝八皇の中で、1番の戦闘狂。ロリ巨乳のあだ名が定着しつつある(と噂の)マノンだ。




「マノン……?」


「ああ、おれだァ!!!」


「テメェ、何でココに……?」


「あぁ? 何でだよ!」


「そりゃ、だって。大将が、お前が急に消えたって呟いてたからよ」



 そう、急に消えたらしいのだ。海底での戦いの後で、突然。



「あ、ああそれか。悪かったな! 勝手に消えちまったのは謝る。ちょっと訓練したくてさ」


「訓練、ねェ……まあいい。それよりも、だ」



 俺は視線をゼウス神に移しながら話す。



「愚かな。薄汚い獣風情が、我に傷をつけるとは」


「久々に、強い奴が敵だからよぉ! 気分上がっちまったんだ!」



 ヤケに好戦的な様子のマノン。

 相手が神だと言うのに、怖じ気が全く無い。すごい。



「さて、さっさと魔王助けようぜ! アイツらは生きてっからよ!」



 その時、マノンから放たれた衝撃の言葉で、俺の視界には一気に光が広がっていった。



 大将が、生きてる……!

 それだけで、力が湧いてくる気がした。



「……カカカ、面白えじゃねえか。神に捕らわれた大将を助け出す。ついてこれるか、マノン!」


「お前、誰に向かって言ってんだ。さっきまでへなちょこ野郎だった癖に」


「う、うるせぇな! いいからやっぞ!」



 俺は、図星を突かれた照れを隠すように、ゼウスに向けて、再び刃を突きつけた。



 さあ、さあ、始めようか。

 大将救出ミッションの開始だ!

戦闘狂コンビの活躍にご期待あれ―――

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