case.8 【暴食】降臨
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「俺は……俺は……オレはオレはオレは負けない!」
威勢の良いことだ。
だが俺は負けない。それはコチラのセリフなのだ。
「さて、それでは始めようか」
「来いよ……! 『掌握』!」
バキッ……バキバキッ!とレオンの身体の節々が盛り上がっていく。恐らく、さっき言っていた筋力を増強させたのだろう。
と、いうことはレオンは接近戦がご所望ということだ。
「いいぜ、受けて立つ」
俺は“魔剣”を両手に生み出し、構える。
「行くぞ? “疾風”!」
“疾風”で俺は瞬時にしてレオンのもとへ詰め寄る。そしてそのまま、
「“蝶の舞”」
新技、“蝶の舞”。相手を翻弄する動きをしつつ、身体の一部を切り裂く技。俺が狙ったのは筋肉がすごいことになっている腕だ。
俺は剣を突き付けるが、刃が通らない。
「固っ……!」
「いた……くない! はは……ハハハ!」
レオンは痛みが無いことを喜びながら、俺を振り払う。
クソ……あのスキル。思ったより厄介だな。
鉄壁の様に固く盛り上がった筋肉……だが対照的に貧弱そうな胴体と首から上。腕と脚以外は脆そうなのだ。
それなら、狙うのは奴の急所。首と心臓。
だが、まだ殺しちゃいけないから……
「いっぺん腹でも殴って気絶させるか」
ああ、でもそれでも駄目か。なるべく早く始末したいから……。
どうしよう。早めに聞いておくか。
「なあ、お前って本当に《転生者》なのか?」
「は、ハァ?何だよ、疑ってるのか!?」
「それに、特異って何なんだ。特に強いスキルでもないくせに」
「……あぁもう……。ダリいなァ。全部本当だよ。嘘じゃねぇ! いいから黙って俺に殺されろよ!」
コイツの豹変ぶりには毎度驚かされるが、まあ今のも急なこって。
それに、全部本当のことだと?なら聞きたいことはあるな。
時代とか、転生してきた時のこととか。
ユニークスキルについてとか。
だがまずはコイツを黙らせないといけないな。
「行くぜェ?! オラオラオラオラ!」
さっきので自信がついたのか、正面から突っ込んでくるレオン。
もう魔法も使っていいよな?うん。いいだろう。
「“獄炎”」
黒い炎。それが俺の手から次々と発射されていく。そしてレオンに当たっていく。
「ウァァァッ!」
「“雷墜”」
「ギャァァァァァァ!」
次々と魔法を放ち、それを全て受けるレオン。
だが、意外にもこの男……耐久力が高く、なかなか倒れない。
「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……」
「“風刃”ッ!」
「ビャァァァァァァァァッ!」
チッ、しぶといな。
そろそろ決めにかかるか。こっちだって殺さない程度に威力を抑えてるんだから、そろそろ限界なんだよな。気を抜くと、ついうっかり殺してしまいそうになる。
「クソ……クソ……クソ!」
レオンは、今にも倒れそうによろけているが、現状まだ立っているのだ。その耐久力……忍耐力は評価に値するだろう。
なんて思っていると、
―――ダァン!と壁に何かを打ち付ける音がした。何事だと思い、音のした方を見ると、サタールがデブ……ダレスに刀を向けていた。
「大将、こっちは片付いたぜ」
「ああ。こちらもそろそろ終わる」
軽く一言交わす。
何か、ダレスはすげぇ最強みたいなみたいな言い方してたから、もっと苦戦するものだと思って、3人を仕向けたんだが、見た感じサタール一人でどうにかなったみたいだ。
と、いうことはコイツらはスピードに弱いタイプのスキルってことか。
「さて、こっちもそろそろ終わらせようか?」
一歩ずつ、歩み寄る。
歩きながら俺は、“魔剣”を生み出す。そして、こういう状況で持っていると一番カッコいいものをイメージして、それを“魔剣”に反映させようと、試みる。
剣……じゃなくてイメージしたのは“鎌”。それも死神が持っているようなイカツいタイプのヤツだ。
……どうやら成功したみたいだ。両手の剣は鎌へと早変わりし、俺の纏う黒い服装とベストマッチ。その姿はまるで死神そのものだろう。まあ自分では見えないからなんとも言えないが。
「ひっ……や、やめろ! 近づくな!」
「まあ、殺しはしないから。安心してくれよ」
そう言いながらも、俺の顔には笑みが隠しきれていないのが自覚できるくらい、気分が高揚している。
「さぁ、貴様の人生を刈取ろう」
……ヤバい。これは決まった。俺カッコよくね?
なんて、自分で自分に惚れている時だった。
「―――あまり調子に乗らないことだ。刈り取られるのは貴様だ、新たなる魔王よ」
刹那、空中からの攻撃。気配は隠していないようで、俺はそれに気づくことが出来た。
「誰……だッ!」
右手に持つ鎌で、振り下ろされた剣を受け止め、そのまま払う。
そして、俺に攻撃を仕掛けてきた主を見てみる。
見た目は……騎士。全身に鎧を纏い、大盾と片手用の剣を両手に構えている。これだけなら普通の人間に見えるだろう。だが、おかしい点は二つ。一つは俺のことを魔王と呼んだこと。そしてもう一つは、背中に生えた2枚の翼と、長く、地面についている尻尾。
この感じは初めてじゃない。これは、リガーテに出会った時と似ているものだ。つまり、この男、竜人族……!
そして俺のことを魔王と呼ぶ、ということは……
「魔帝八皇……?」
「ふむ、どうやら考察力は高いようだ。その点は大いに評価しよう」
随分と、上から目線な態度だな。
何だコイツ。何故俺たちの邪魔をした?気まぐれか、それとも狙っていたのか。
「俺の名は、魔帝八皇が一人。【暴食】を司る七つの大罪、大悪魔ベルゼブブの子孫。騎士のベルゼリオという。以後お見知りおきを」
「そのベルゼリオが、何故俺たちの邪魔をする」
「ああ、事情は説明できないが、そこの男たちを殺されるのは非常にマズイのだよ。私は彼らを守護するように、雇われた人間でね。いや、人間ではないか。私は竜人であるからして、」
そう言うベルゼリオをしっかりと見据えながら、サタールは言った。
「おいおい、騎士サンよォ。テメェ、魔帝八皇のくせに、魔王以外の人間に雇われた、だとォ? ナメんなよ」
カシッ、と刀を壁に突き刺し、ダレスを逃げないようにした。それに、アスモフィが何か魔法を行使しているようで、ダレスが何か仕掛けてくる心配もないようだ。
ルシファルナに関しては、ほぼ立っているだけだが。
「サタール、か。久しいな。先代の死後ぶりか」
「煩え、俺は昔話がしてぇんじゃねぇんだ。とっととテメェの雇い主を話しやがれ」
「それを言えるわけが無いだろう。申し訳ないが、時間が無いのでね。今日はこれでお暇させてもらうとするよ」
……?この状況で、レオンたちを回収してお暇するだと?
そんなこと、出来るはずが……
「ッ! おい大将! ベルゼリオのスキルは『時間停止』だ―――」
そう、サタールが言った時だった。
「もう、遅いですよ。それではさようなら」
一瞬にして、レオンとダレスがベルゼリオの両腕に回収されていた。
そして、そのまま窓から飛び去っていった。
「チッ、逃げられた……!」
「追跡します。蜘蛛糸・追跡獣」
ルシファルナが、見たこともない技を使って、無数の蜘蛛を生み出していく。そして、蜘蛛たちは窓の外に出ていく。
“追跡”、するのだろう。ルシファルナもそう言っていたし。
それにしても、ここで魔帝八皇が一人現れるなんて……。一体、レオンたちに何があるっていうんだ……。
静まり返った部屋の中で、俺の疑問は深まる一方だった。
余談ですが、新作の0話が書き上がりました。来週の土曜日辺りから動き出しますので、どうぞご期待下さい。




