case.18 ルインVSマノン(4)
―――決着。
力が漲るのを感じる。
私はこの一瞬で、強くなったのだと実感できた。
「アァもうダリィ! 俺をここまで手こずらせるとはなァ! その強さは認めてやる。だがもう手加減はしねぇ! 1分だ。それでケリをつけてやる」
「……その言葉、そっくりそのままお返しします。1分でケリをつけましょう」
お互い、目で語るかの如く、鋭い眼光を向けあっていた。
辺りに訪れる、一瞬の静寂。
「“電光石火・獣弐式”ッ!」
先に動いたのはマノンだ。
今までと同じ、ただ常人じゃ見えないスピードで動いて、普通に攻撃をする技。
この技はもう何度も見た。
動き方、攻撃、全てに癖があるのも見抜いた。
だから私は―――
「コレを仕掛けられたッ!」
ガキガキガキガキガキガキガキッ!
「グァァッ!」
マノンはダメージを受け、後退する。
何が起きたか、少し説明しよう。
私はこの“電光石火”という技を何度も見て、その攻撃の癖を見抜いていた。
マノンは攻撃する際、私のギリギリ近くまで来るのだ。離れて攻撃する時は魔法だけ。それ以外は長い腕……(今は脚かな?)があって、リーチを持っているというのに、ギリギリまで近づいて攻撃してきているのだ。
そこで私は、自分の目の前の地面にとある魔法を仕掛けておいた。
罠魔法、“氷山”。
コレを仕掛けられた場所を踏むと、自動で罠が発動し、踏んだ場所から氷の針山……まあ略して氷山とするが、それが現れるのだ。
マノンは予想通り、ダメージを喰らって、そして勢いよく後退した。
「痛ぇな……まさか罠を張っているなんてなァ……?」
「ふふふ……!」
私はつい、笑いをこぼしてしまう。
何故か。それは事が思い通りに進みすぎているからだ。
「テメェ、何がおかしい! 笑うな!」
「じゃあ貴女、後ろを見ても同じことが言えますか?」
「ァン……? うおっ……んだよコレ!」
そこに居たのは、無数の死霊たち。
スキル『死霊』。さっき使えるようになったスキル。
自分でも、分からないのだが、直感が使えると叫んでいた。言われるがままにスキルを使うと、本当に使えてしまったのだ。
それにこのスキル、何故だが手足のように使える。
だからこんな事も出来てしまう。
「“死霊爆弾”、起爆!」
刹那、会場に響く轟音。
いや、爆音?
死霊兵たちは、次々と自爆していき、爆発攻撃と瘴気、毒を辺りに撒き散らして消えていく。一体が爆発すれば、周りの死霊兵たちも誘爆されて、流れるように全ての兵が爆発していく。
「グッ……何だよコレ……!」
咄嗟の事で、スキルを使う暇がなかったのだろう。全てのダメージを受けているマノン。
それに、瘴気……身体に悪影響を及ぼす空気と毒も多く吸ったようで、脚がぷるぷるしている。
もうすぐ、終わりだ。
「スキル『変幻』発動。“暗影之地”」
スキル『変幻』……幻を操るこのスキルは、暗殺者職の固有スキル。効果は調べてきた。でもまさか私が、この戦いで暗殺者になれるなんて、思いもしなかった。
私はこのスキルを使って、自分の幻を幾つも生み出した。
「分身魔法か……? チッ……頭が回らねぇ……」
魔法、“暗影之地”。
文字通り、一定範囲を影で包み込む魔法。これも暗殺者御用達の魔法らしい。暗殺者にクラスアップしたことで、使用できるようになったみたいだ。
ちなみに、私は魔法の天才らしく、練習なしで魔法が使える。
そのせいで、私は昔から一人ぼっちだったんだけど……
その話はまた今度に……。
「“影陰”」
私は思考を切り替え、フィールド中の影に全ての分身を隠す。もちろん自分も。
「アァ……クソ……前が見えねぇ……。クソ……クソ……こうなったら……! “天地雷鳴”ッ!」
マノンは、力を振り絞って範囲魔法、天地雷鳴を放つが、それは私に当たることはもちろん無かった。
「あぁ……あぁ……! 負けたく……ない……のに! 父さん……俺はただ飛びたかっただけなのに……ッ! 死にたく……ない……! 怖い……怖いよ……父さん……父さん……」
マノンは、その瞳に涙を浮かべながら、呟いていた。
しかし、それは私に聞こえてる筈も無く。
「これで決着です。“急所突き”ッ……!」
影から全ての私が飛び出て来て、その全てが手に持つ短剣で……毒のついた短剣でマノンの全身を刺した。
■
「決着だ。勝者は、魔王の側近……ルイン……!」
サタールによる勝者のコール。
だが、会場は静寂に包まれていた。
かくいう私……アスモフィもただ息を呑むしか出来なかった。
ルインちゃんの戦いが見たくて、すぐ神殿で寝るのをやめて、会場に戻ってきたのだけど……。
何が起きたのか。
驚くべき事は色々あった。
まず“マノンの獣化”。そして“マノンのスキル『身代わり』”。そのスキルの犠牲となった魔王ルミナス。
さらに“覚醒したように強くなったルインちゃん”。
本当に色々あった。
ルインちゃんが勝ったのは素直に嬉しい。
だけど、正直喜べる状況でもなかった。
試合が終わった直後、私とルシファルナ……あと叩き起こしたリガーテ、リガルテはルミナス様とマノンを連れて魔界へと飛んだ。治療の為だ。
そしてサタールと……ルインちゃん、海王ムルは海底に残った。
これは海王様のお願いだったのだ。
「この子と決着をつけたい。」そう真面目にお願いされた。
私は反対したけど、ルインちゃんが了承した為、しぶしぶ3人を残して帰還したのだ。
治療室にルミナス様とマノンを寝かせた私たちは、治療に専念することにした。
もちろん勝負は気になる。だけど、この2人が死ぬのは絶対に駄目だ。
それに、この2人を救えるのはもしかしたら私しか居ないかもしれない。
ここでおねえちゃんの意地を見せなきゃ!
僧侶の名が廃るってもんよね!
そう、自分に言い聞かせて、魔法を展開し始めるのだった。
いわゆるBADENDという奴?




