転生せし『魔王』は世界を支配する
終幕―――
「―――白夜」
俺を守って、倒れてしまった。
俺が油断していなければ、こんな結果にはならなかったはずなのに。
「―――月夜」
お前のお陰で、俺はまだこうして戦えているんだ。
二人には、本当に助けられてしまっているな。
本来なら俺が助ける立場だってのに。
『クックック……! お前らが、俺を再び目覚めさせてくれたんだぜェ……?』
正面で巨人の心臓部に入って、巨人を操作していたのはイヴだった。
俺はその言葉を、周囲を見回しながら聞いていた。
『残念だったなァ? 他の仲間は全員気絶してるみたいで』
「……問題ないさ。お前なんて、俺一人で十分だ」
『随分と舐めたこと言ってくれるじゃねぇか。いいぜ。なら―――やってみろよ、魔王』
もう、終わりにしよう。
長く続いたこの戦いに、終幕の鐘を鳴らそう。
「(力を、貸してくれ―――)」
手をかざし、『支配』の力で周囲の武具たちに呼びかける。
『まずは一撃―――喰らえや。ウオオオオオオッ!!!』
先程よりも肉が削げた分、鋭く素早い一撃が俺に迫りくる。
しかし感覚が鋭くなっているのは向こうだけではない。
俺も同様に、強くなっているのだ。
「―――喰らうか。“猿神之天雷”ッ!」
『グァァッ……!!』
雷で巨人の腕を退けると、俺は神速の速さでイヴまで詰め寄った。
「そこから動くな―――“天ノ鎖”」
『クッ……! これはアポロンの―――』
「ついでだ。“月光花毒”ッ!」
そして二種類の術でイヴの巨体を封じ込めると、さらに俺は追撃を加える。
「―――“分身”」
『グッ……! 毒に鎖……それに分身まで……ッ!! 厄介な―――』
「喰らえッ……! “二重破壊魔天)”」
畳み掛けるんだ。
俺は両手にそれぞれ別の【破壊】の力を宿し、そのまま“魔天”にその力を込めて撃ち放った。
空からは巨人めがけて一斉に魔天が集中放火されていく。
『グゥッ……ゥゥゥゥッ!!!! なんの……これしきッ! 俺は負ける訳には行かないんだァッ……!!』
しかしそれにも怯まず、イヴは巨人の右腕を再び突き出してくる。
「そんな遅い攻撃じゃ―――」
『よく見てみろよッ!』
「……なるほど」
突き出された右腕の周りには、黒くて小さな魔力の塊が。
あれは―――凝縮された死の魔力。“死弾”、か。
だが、それなら。
「分身体―――」
『させるかよッ! ウオオオオオオッ!!』
分身体を出そうとすると、イヴは左腕を大きく振るって俺の行動を阻害してきた。
そして俺が分身体を出せずにいると、そこに右腕が迫ってきて―――
「―――“神帝武流・神速”ッ……!」
『逃がすかよッ! “死天”!』
何とか回避しようと試みるも、それはイヴの“死弾”を使った攻撃によって妨害されてしまう事に。
目の前まで、死弾が迫ってきて。
俺の視界は、黒に染まった。
「……まず―――」
『これで終わりだ……ッ! お前諸共、世界を滅ぼしてやるよォッ…………ぁ?』
だけど。
そう簡単にやられてたまるものか。
限界まで、抗ってみせるさ。
それが、俺の“役目”なんだから。
『んで……当たったのに消えてねェんだよ……ッ!!』
「―――俺が、そういう運命の下に居たから。そう答えれば分かるか?」
『チッ……ゼウスの力で―――』
「そこまで分かったのなら、もう説明は要らないな……ッ!?」
運命操作。その能力で俺が“死弾”によって消え行く運命を変えた。これでもう、完全に後には引けない状態になってしまった―――が、何も問題は無い。
何故ならば。
「ここで仕留めるからなァッ!!」
『させるかよッ! ウオオオオオオッッ!!!!』
その右ストレートは何度も見ている!
何度その腕に“死弾”を纏わせようとも、もうそれは俺には通用しない。
させてたまるかよ!
「開け―――“分身体・群喚門”ッ!」
刹那、俺の背後一面には無数の魔法陣が展開される。
そこからは“俺”が次々と召喚されていく。
そして召喚されていく俺は、迫りくる右腕に向かって高速で飛行を開始する。
『ハンッ! 何体召喚しようが所詮はコピーだ。なら全員纏めて殺してやるよ―――“死天”ッ!』
再び放たれる死の雨。
しかし、そう簡単に終わらせるか。
「今度は喰らわないぞ―――“絶対守護”ッ!!」
【守護】の力と『絶対ノ権能』によって発動された、絶対の防御の力が俺の分身体、その全てに付与された。
となれば当然“死の雨”ですら“絶対”の前には無力と化してしまい―――
「―――来い。“双月”ッ!!」
分身体たちが、死の雨をもろともせずにイヴに向かって突っ込んでいく中、俺は手元に一つの武器を呼び寄せた。
『小賢しい……ッ! だがこれならどうだ―――“死ノ熱波動”ッ!!』
直後、イヴの巨人の身体の全面部が、まるで機械のような挙動でオーバーヒートした身体の熱気を、死の魔力と共に波動攻撃として広範囲に放ってきた。
「クッ……!」
『クハハハッ!! これは流石に対処出来なかったようだなッ!』
俺の分身体の大半がやられてしまうが、再び俺は魔法陣を展開した。
『チッ……手数だけは多い、か……ッ! ならッ!』
「させるかッ!」
今度は両腕で、展開された魔法陣を狙ってきたイヴ。
俺はそれを守るように立ち塞がると、さらに新たな魔法陣を空中に広く展開した。
「“神器複製召喚”ッ!」
小さな魔法陣が無数に展開されていき、そこからは一本の黒き短剣が顔を覗かせた。
「さあ……奴の血を喰らえッ! ―――“呪狂剣雨”ッ!!」
それを一斉に、イヴへ向けて撃ち放った。
呪狂剣の効果は、一本でも敵の血を吸えば他の全ての剣にも特効能力が共有される最強の効果だ。
『グッ……ァァァァァアアア!!!』
最初に刺さった“双月”がイヴの血を吸い、特効能力を他の剣と共有した事により、後から刺さる“双月”には全て神特効の高火力な攻撃となって襲い来るのだ。
当然イヴにはそれだけ大ダメージが与えられる事になる。
『ゥ……ァアアア』
巨人の肉体はもう既にボロボロで、かなり中身も見えている状態でかなりグロく、しかし逆にそれがイヴを限界まで追い詰めているのだと理解することもできた。
まもなく―――戦いは終わるのだ。
最後の……畳み掛けといこうか。
「来い―――“レリーフレインズ”」
そう呟くと、手元には一つの弓が。
魔力の矢を生み出して構えると、俺はそこに【破壊】の力を込めた。
「穿て―――“破壊ノ一矢”」
シュン―――
ほとんど音も無く放たれた矢は、巨人の眼球を確実に狙っていた。
『ゥ……グ……ァァァ……!!』
ザシュッ……!
そんな鈍い音がして、俺の放った矢は巨人の右眼を潰していた。
「次はお前だ―――“黒神覇杖”」
今度は魔法だ。
“レリーフレインズ”と“黒神覇杖”を持ち替えると、俺は再び先程のように背後に無数の魔法陣を展開する。
「―――“流星爆魔弾”ッ!!!」
そして放たれたのは、まさしく流星。
煌めく無数の弾丸は、イヴの前方からまんべんなく迫っていった。
「『爆ぜろォォッ!!!』」
起爆。
煌めく流星はイヴに着弾し、誘発するように次々と連鎖爆発を巻き起こしていた。
さらに俺はすかさず新たな武器を構える。
「来いッ! “神滅”、“絶盾”!!」
地面から俺の元まで高速でやってくる二つの武具。
左手に盾を構え、右手で剣を持った俺は、最後の畳み掛けに俺自身が近づいていった。
『グッ……ウゥ……ウオオオオオオッ!!!! “死ノ熱波動”ッ!!!』
イヴは先程の波動攻撃を仕掛けてくる。
あれも“死弾”と同様に当たると即死だろう―――だが、それなら当たらなければいいだけの話。
全てを、超えればいいのだ。
「“超越”―――」
『死ねェェェェェェェェエエエエエエエ!!!!』
「悪いな―――死ぬのは、お前だ」
直後、俺は全てを“超えて”イヴの巨体の左腕を付け根から切り落としていた。
『ウゥッ……アアアアアアアアアアアアアア!!!』
痛みか、それとも怒りか。
はたまた最後の足掻きか。
イヴは残った左腕を、流れるように高速で突き出してきた。
だが、俺には効かない―――
「“絶対防御”―――」
左手に構えた“絶盾”をそのまま突き出して、絶対の防御の力でイヴの攻撃を防いだ。
そしてそのまま盾を捨てて刀を構えると―――
「“神威斬”ッ!」
イヴの、右腕までもを切り落としたのだ。
『ウ……ァ……グガアアアアアイアアアアアアアアアアアアアウァイイイイガアアアアアッ!!!!!』
痛みで叫びをあげるイヴ。
神殺しの力が付与されているこの刀で斬られたのだ。神であるイヴには既に相当なダメージが入っているはず。
「これで、お終いにしよう―――」
『ァ……グ……ァ……ア』
言葉にならない声を発し、もう抵抗する様子も無いイヴ。
俺はそんなイヴに近づいていく。
『コ……』
「……?」
『コ―――ロ――シテ―――――クレ』
“殺してくれ”、か。
まさか、コイツからそんな言葉が聞けるなんてな。
殺すさ。
俺をこんな事に巻き込んだんだから。
絶対に、許すわけが無い。
「―――ッ」
“神滅”を巨人の心臓部にいるイヴの、さらに胸元に突きつける。
しかし、なかなかそこから手が動かない。
このまま、殺してもいいのだろうか。
いや、何を躊躇っているんだ。
俺が、殺さなくちゃいけないんだ。
全ての元凶を、ここで断つんだ。
さあ、刀を突き刺せ。
殺せ、殺すんだ―――
『―――主様っ! 私達魔族の為に、世界を支配してくれるんですよねっ!』
……ッ。ルイ……ン?
『―――キミの力は、何の為にあるんだい?』
―――そ、その声は……
『思い出すんだ。これが、最後のチャンスだよ』
最後の……チャンス?
『ああ。―――その神を殺して世界の管理者となるか。その神を操って、自分は大切な仲間たちと共にいるか。それとも―――元の世界に帰るか。生かすか、殺すか。それ次第で、キミの運命は大きく変わるんだ』
……俺の……目指す未来は―――
『僕にできる“操作”はここまでだ。あとは、キミが自分の意志で掴み取るんだよ』
―――俺の、意志で……
『コロ……シ……テ―――』
「―――殺さない。俺は、世界の管理者なんて面倒くさそうな事はやりたくないからな」
だから、俺が選ぶのは。
俺が俺である為の力で。
この戦いの全てに、決着をつけようと思う。
「―――俺の、傀儡となれ。未来永劫に、な!」
▶スキル―――『支配』を発動します。
次回、エピローグ。




