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『勇者』が守るモノと掴み取った未来

勇者の、結末




『―――終わったよ。あとは、二人に託すね……』



 月夜が、俺たちにそう告げた。

 アニキはそんな月夜を抱くと、



「……ああ。ありがとう―――ゆっくり、休んでてくれ。本当に……ありがとうな」


『えへへ……。世界を……お願いね……?』



 そんな会話をして、物陰に月夜を寝かせていた。

 月夜はいつもとは違う雰囲気だったが、それが未来の改変に成功したのだと感じさせていた。


 そうか。月夜はちゃんと成功させたのか。

 自分の役目を見つけて、それをしっかりと果たしてきた。


 我が妹ながら、見事な手前だ。

 それなら、兄である俺が同じように出来ない訳が無いし、やって見せなくちゃならないだろう。



「アニキ―――今度は、俺たちの番ですね」


「ああ。どうだ? やれそうか?」


「愚問ですよ。とっくのとうに、準備は出来てるんですから」


「だな。それじゃあ―――行こうか」



 見据えたのは空に浮かぶ、一体の赤子。

 いや―――既にあれは巨人と化しているか。だが、世界の崩壊は起こっていなかった。月夜のお陰だろう。



『ウゥオオオオオオオオオ!!!!!!』



 巨人の雄叫びが俺たちの耳を劈くが、こんな攻撃で怯んでいる場合でない。

 相手は―――真なる破壊神。しかもその最終形態なのだ。


 下手すれば、簡単に世界なんて壊れてしまうはず。

 だからこそ、油断は絶対に禁物だ。



「ヘル―――待っててくれよ。俺が必ず、お前を守ってやるからな」



 俺は、魔剣グラムと魔剣レーヴァテイン・改の二本の魔剣を構えると、



「行きましょう……!」


「ああ。行くぞッ!」



 アニキと同時に、巨人に向かって飛び出したのだった。







 勇者としての使命を負った者は、『何か』を何があっても守りぬかなければならない。

 何があっても、だ。


 そうして守り抜いた先に、世界は救われているのだから。



 そう言われて、俺はずっと悩んでいた。

 大切だと思う人はたくさん居るし、この世界も存外住心地がいい。だから今までは何となく気分でそれを守ろうとしている自分がココにいたんだ。


 だけど。月夜が覚悟を決めた時、俺もようやく気が付いた。

 俺がやらなくちゃならない事―――俺が、守り抜くべきモノ。



 それはやっぱり―――




『ウオオオオオッッ!!!!』


「白夜! 正面、薙ぎ払いだッ!」


「了解です!」



 巨人は俺たちを見つけたらしい。

 覚醒後と言うこともあり、恐らくはその反動なのだろう。若干動きが鈍い気がする。


 畳み掛けるなら覚醒し切る前の、今がチャンスと言う訳だな。



「全力……解放ッ! 『神威』ッ!」



 だったら、最初からクライマックスでいいじゃないか。

 もう、十分過ぎるくらい戦ったんだ。だから最後は、速攻で―――一瞬で終わらせよう。



「はぁぁっ……! “獄炎インフェルノ”ッ!!」



 俺は巨人の腹部に向けて、黒く燃え盛る炎を放った。



『ウオオオオッ……!』



 するとそれは、巨人の腹部にまとわりついて身体中に燃え広がっていった。



「ナイスだ白夜! それなら俺は―――」


『ウオオオオオオッ!!』


「当たるかよ……ッ! これでも喰らいやがれ―――“無限連斬インフィニティソード”ッ!!!」



 正面に向かってストレートナックルをかましてきたのをかわしたアニキは、そのまま全身を斬りつけていった。

 それに合わせて俺も飛び出す!



「燃え尽きろ……ッ! “鬼神炎渦きしんえんか”ッ!!」



 巨人の上空から、最大火力で炎を放った。

 渦巻く豪炎は、巨人の肉体を焼き滅ぼそうとメラメラと燃え盛る。



『ウオオオオオオッッ!? ウオオオオオオッ!?』



 そしてこれが相当効いているらしい。

 巨人は痛がるようにその場で暴れ始めていた。



『コロ……ス……ウォォッ……!』



『コロ……シテクレ……ウァァア!』



 ジタバタと暴れる巨人からは、そんな二つの言葉が聞こえてくる。

 今のは一体―――



「アニキ、今のって……」


「多分―――イヴだ」



 破壊神、イヴ―――この巨人を生み出した張本人にして、巨人そのものとなった諸悪の根源。

 それが、今―――助けを求めた?



「―――ッ。行くぞ……!」


「は、はい!」



 しかしそんな事を考えている時間はあまりないようだ。

 巨人は再び動き出し、今度は俺たちを掴もうとその手を伸ばしてきた。



「捕まってたまるか……ッ! “猿神之斬雷ハヌマーンスラッシュボルト”ッ!!」


「俺だって……! “断刀だんとう”ッ!」



『ウアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』



 俺たちは伸ばされた手を攻撃し退けさせると、そのまま巨人へと詰め寄った。



「もう一度喰らいやがれ……“無限連斬インフィニティソード”ッ!!」



 アニキが再び巨人を高速で斬りつけ始めていく。

 肉体が削れていき、その度に巨人は痛がるようなうめき声を上げている。


 だが―――

 


「……ッ! アニキ! そいつ、肉体を再生してますよ……ッ!?」


「ああ……斬っても斬っても、すぐに再生されちまうみたいだ……ッ!」


「でも、それじゃあどうすれば……ッ!」


「それなら……二人で再生できないくらいの連撃を与え続ければもしかするかも……しれないなッ!」



 そうか! それなら―――



「俺も加勢しますよッ!」


「ああ! 二人で決めるぞッ!」



『ウアアアアッ!! ウオオオアアアアアアアアッ!!!』



 俺がアニキに加勢し、二本の魔剣で巨人の肉体の正面部を次々と斬りつけていると、当然巨人の方も全力で抵抗してきたのだ。

 もちろんその反撃を喰らうわけにはいかない。


 ましてやアニキがやられるなんて以ての外だ。



「させるかよッ!」


『ウオオオオオオッ!?』



 薙ぎ払う右腕を、“鬼神炎渦”を放って撃退。

 さらに左腕はレーヴァテインを投擲し、突き刺す事でこちらも撃退した。



「これで……決めるッ!!」


「俺も、合わせますッ!!」



 巨人が怯んだ。今がチャンスなのだ。

 だから俺たちは、同時に決めにかかった。



「―――これで終わりだッ……!」



「世界の為に、死んでくれッ!!」




「「“神威斬かむいぎり”ッ!!!!」」




 ザシュッ―――

 巨人の心臓部は、俺たちの攻撃によってえぐり取られた。


 そしてその瞬間に、巨人の動きは完全に停止する。



「はぁっ……はぁっ……!」


「やったの……か……?」



 俺の口からは、そんな言葉が零れていた。



 巨人の肉体はボロボロで、再生も始まる様子は無い。

 それに心臓部も潰したし、ここまで条件が揃えばきっと―――



「え―――?」



 しかし。何やらまだ不穏な気配は続いていた。


 何だ? この感じは。

 何か気配がする。だが、一体何処から……?



「どうかしたのか……?」


「いや、まさか―――」



 これは……巨人の心臓部から―――?



「そんな……まさか―――」



 恐る恐る近づいて、えぐった心臓部を覗き込んでみる。

 すると―――





『クッ……クックック……!』





 そこに居たのは 紛れもなく 悪魔だった。



「(マズい……ッ!! アニキが―――!)」



 それを見た時。刹那、俺は全力で振り返り、神速の力でアニキを突き飛ばしていた。



「うぉっ……! な、何するんだびゃく―――や―――」


「ごめんなさい―――アニキ―――」




 次の瞬間。

 俺は、巨人の拳に吹き飛ばされて―――気を失った。

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