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死 狂 壊 神

力尽きた(俺が)






「白夜、月夜。お前たちは一旦ここで待機しててくれ」


「ど、どうしてですか!?」


「いや、まずは俺が行って状況を把握してこようと思ってな。何が起きたのか……そして今のイヴの状態―――あとは俺の新しい力とかな。諸々確認してこようと思ってる」


「で、でも一人で行くなんて無防備過ぎますよ……!」


「大丈夫だよ。危ないと思ったらすぐに戻ってくる。だから、まずは俺一人に行かせてくれ」



 言いながら俺は、一歩前に歩み出た。



「アニキッ!」


「どうしてもお前が引かない、ってんなら―――ごめんな」



 それでも俺を止めようとしてくる白夜に、俺は手をかざした。

 そして―――



「―――『陽神アポロン』。“天ノ鎖ヘブンズ・チェーン”」


「うぐっ……! な、何を……っ!」


「月夜……すまないな。お前の兄を、ここで見ていてくれ」


「うん……分かった、よ……」



 光の鎖で白夜を縛り付け、その場に拘束した状態で俺は月夜に後を任せた。

 月夜の方は状況を理解してるのか、俺に反抗はせずに言葉に従ってくれるみたいだ。



「おい……! 月夜! なんで……どうしてアニキを一人で行かせちまうんだよ……っ!」


「にぃ……ごめんね。今のにぃは……何だか危なかっかしくて……絶対、嫌な目に合うから……だから、今はお兄ちゃんに任せて、少し冷静になろう? 自分の役目を……思い出してよ、にぃ……!」


「……ッ。つ、月夜―――」



 どうやら、月夜は本当に色々と理解しているみたいだ。

 二人の様子をそこまで見届けた俺は、振り返らないまま、



「それじゃあ俺は行ってくる。少しだけ、様子見てから戻ってくるから、俺が戻ってきた後に―――俺たち三人で、アイツをブッ潰してやろうぜ。それまでには、考えを纏めておいてくれよ……二人とも―――」



 そう言い残した俺は、赤い空に浮かぶ一つの禍々しい球体―――変わり果てたイヴのもとに向かって飛び去っていくのだった。







『世界ノ―――終焉ヲ―――』



 禍々しく、毒々しい。

 そんな、謎の球体がそこには浮かんでいた。



『敵ハ―――殺ス』



 どうやら俺を視認したらしい。

 イヴ―――だったモノは黒い小さな魔力弾をガトリングガンの様に連発してきた。



▶どうやらアレは、当たると即死の超濃密な“死”の魔力の弾らしいな……フン、あれくらい貴様なら避けずとも耐えられるだろう?



(んな無茶な事言うなって……!)



「“炎魔天えんまてん”ッ!!」



 俺はその死の魔力弾に対抗して、“炎天”のさらに強化された物を放って相殺しようと試みるが―――



「チッ……消えねぇのかよ……ッ!」



 俺の魔法までもを喰って、死の―――仮に“死弾”とでもしておこうか。……は、俺を追尾してきていた。



▶それなら我が力で分身を召喚するといい。それを身代わりにするのだ!



「なるほど……ッ! ―――『冥神ハーデス』、“分身体”ッ!」



 俺はその提案を速攻で受け入れて、自分の分身を目の前に何体も召喚した。

 すると“死弾”は、俺の分身体を狙って攻撃し始め、一つの弾が一体の俺の分身を喰うと、両者ともにその場から消滅していく。



▶フン……上手くいったようだな。


▶まあ困ったら我の運命操作の力を使えばいいだけの話だ!


▶お前ら……いつもコイツの中でこんな騒がしくしてんのかよ……



(まあ、ポセイドンは慣れないだろうな……。てか前はもっといたんだぞ……?)



▶そりゃ……ご愁傷様だな。


▶フン、随分と聞き分けが良くなったものだな。ポセイドン。


▶う、うるせぇな。今はそんな事より目の前の敵に集中しろよ魔王!



(何で俺に!? ま、まあ分かってるけどさ!)



 何故か俺に攻撃対象が変わったのは解せないが、事実は事実だ。白夜にああやって言った手前、深追いはするつもりは無いし、攻撃パターンをちゃんと把握したら一旦帰還しようとは思っている。


 だからこそこちらからはあまり仕掛けずに、俺は奴の周りをぐるぐると回転しながら飛行していた。



『破壊―――執行』



 するとそんな言葉と共にポウッ……と空に火が灯るような音がして、再びあの“死弾”は現れた。


 これの対処法ならさっきと同じで大丈夫なはずだろう。

 そう思っていると、さらに死弾に加えて新たな攻撃方法を、イヴは仕掛けてきたのだ。



『殲滅砲―――破壊執行』



 直後、球体の前面部が展開され、その中心に魔力が充填されていった。



「あれは絶対やばいだろ……ッ!」



 多分レーザー砲だろう。だがそれにしては感じられる魔力の量が異常だ。さらにそれに付け加えて“死弾”と同じく多量の死の魔力も感じ取れる。

 かすりでもしたら、誰だって無事では済まないだろうな。


 さて、問題はその攻撃がどれくらいの範囲で、どこまで追ってくるかだが―――



『執行』


「(来た……ッ!!)」



 ほぼ一瞬でチャージは完了し、“死弾”と共にレーザー砲は放たれた。



「これなら避けれ―――」



 思ったよりも遅いレーザー砲に余裕で飛行していた俺だが、そんな油断しきったところに想定外の事態が起きたのだ。



「―――なッ……! “死弾”が邪魔で避けれない……ッ!?」



 やられた。

 レーザー砲自体は、マラソン大会で後ろの方を走っている奴くらい鈍速で近づいてくるのだが、死弾の方は先程と同様にガトリングガンのような勢いでやって来るため、それが俺の行動を阻害してレーザー砲から逃れられないようにされていたのだ。



「チッ……! こうなったらゼウスの力を使うしか―――」



 ゼウスの運命操作の力なら、あらゆるピンチを絶対に回避する事が可能だ。だがこれは一日一回しか使えない、クールタイムがかなり長い力らしいからこれを使うのは本当に命の危険を感じた時だけにしておこうと思ったのだが―――



「(仕方ない……かッ!)」



▶おい、まあ待てよ! ―――まだその力を使うのは早いだろうから、ここは俺の力でどうにかしてみるといい。向こうが破壊の力ならば、こちらも同じ力で対抗してやろうじゃねェか!



 覚悟を決めた時、俺の中ではポセイドンがそう提案してきたのだ。確かに破壊の力同士なら相殺し合ってくれるだろうが……



「ポセイドンの力で―――?」



▶ああ! イメージするのは全てを飲み込む大海だ―――海で全部を喰らい尽くしてやる、そんなイメージだなッ!



「う……ん。よく分からないけど……とにかく流れてくるお前のイメージ通りにやってみれば大丈夫だよな……ッ!?」



▶ああ。やれ!!



 俺と一体化した事によって、意識すれば俺の中にいる神たちが考えていることは簡単に分かるのだが……。

 そんなポセイドンの考えていることは、かなり大雑把で説明が下手なのがうかがえる。

 

 だがそこは俺の補正力が物を言う時だ。


 イメージするのは、海で全部を喰らい尽くす様子―――。

 破壊の力で、全てを打ち消す……そんな様子だ。



「行くぞッ―――! “破壊ノ大海グラットン”!!!」



 手を下から上へ払う様に、そしてその手の流れから海の魔力が勢いよく放たれるような強いイメージを持って俺はそれを放った。


 すると海王神という名前の通り、自然に水が発生し、一瞬でそれは大海へと変化すると俺の周囲を埋め尽くしていったのだ。

 そこへレーザー砲がようやく現れるが、それも俺の放った海に飲み込まれて消えていった。


 が、やはり死の魔力というの強力な力らしく、相殺しきれなかった魔力が俺の大海を突き破ってきていた。



「(おい……あれ、マジかよ……?)」



 相殺しきれなかった、ということはそれだけ濃密に凝縮されているということだろう。

 本当に当たればただじゃ済まないのが、瞬間的に理解できた。



「そろそろこっちからも仕掛けるか……ッ!」



 向こうがどれだけの硬いのかを理解しておく必要もあるだろうからな。こちらから仕掛けるのも多少は大事だろう。


 そして向こうにする攻撃だが、やはりここのポセイドンの力が便利だろうな―――



「ならッ! ―――“分身体”ッ!!」



 まずは、ルインのように無数の分身体を生み出して、それをイヴの周囲に配置した。

 続けて、



「行くぞ―――“弐壊槍デュアルブレイクランス多重創造マルチクリエリト”ッ!!」



 『破壊シヴァ』と『創造ブラフマー』、そして『破壊ポセイドン』の三つの力を併用して俺の分身体に二本の槍を持たせた。


 分身体は俺の動きとリンクするようになっている。

 なら、あとは俺が動くだけでこいつらは一斉に攻撃を仕掛けてくれるって寸法だ。



「(さあ……行こうかッ!!)」



 槍を二本同時に投擲する構えを取り、イヴが何も仕掛けてこないこと確認すると。



 俺たちは一斉に槍を撃ち放った。




「“弐壊槍デュアルブレイクランス破壊デストロイヤー”ッ!!!」

来週完結の目処が立ちました、ありがとうございます

あと少し……お付き合いくださいませ!


最弱姫プの方もよろしくお願いいたします!

それではまた来週!

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