三 神 一 体
再び訪れた三位一体の力
「今度はお前たちとか。よろしく頼むぞ」
「うん! こちらこそよろしくね、お兄ちゃん!」
そう元気に笑いかけてきたのは皇月夜だ。
彼女がいるエリアCに、俺とルイン、そして小さな姿に戻ったアルカナはやって来ていた。
そして、当然アイツも。
『貴様が巫女、か―――厄介な存在をよくも集めたモノだな』
「ハン! それは俺らの大将を褒めてんのかァ?」
『……そうとも言えるかもな』
全ての元凶―――イヴに食って噛み付いたのは、同じエリアに居たサタールだった。
俺たちは先程のエリアBでの戦闘によって発生してしまった怪我人たちをエリアA同様に治癒をして安全な場所に寝かせてきた。
そしてそのままイヴを追って、このエリアCまで来たのだが……
なんともここのメンツは強そうな顔が揃っていた。
だって、やたらとイヴに噛みつきそうな奴が―――
「ハハッ! 破壊神様が随分と素直なモンだなァッ!?」
『そう言う貴様も破壊神では無いのか? なァ、シヴァよ』
「わりぃが今のオレはシヴァだけどシヴァじゃねェんだよ。魔帝八皇が一人、【強欲】の魔法使いのマノンってんだ。勝手に別の名前で呼ぶんじゃねェよ?」
『ククッ……そうか、そうだったな。俺を裏切って、そんな獣人風情に成り下がったと言う訳か。実に、実に面白い話だなッ!』
「ンな事言うならコイツらだって同じだろ? ええと……何だったっけか。ヴィ……ヴィヌ……?」
『ヴィシュヌとブラフマー、か』
「あーそう。それだ。そいつらだって、今じゃもうベルゼリオとサタールって訳だろ? なら皆仲良く成り下がってるって話じゃねぇか。オレだけ責められるのはあんまし気分がよくねーよ」
『ク……クククッ! あーそうか。そうか、それは悪いことをしたな。確かにお前の言う通りだよマノン。だがな、これだけは言っておくぞ―――』
「フン。何だよ」
『―――貴様らだけは徹底的に叩きのめしてやるからな……ッ。この、裏切り者がッ!!!』
イヴがそう叫んだ直後の事だ。
「いやぁ……っ! な、なんですかこれぇっ……!!」
「や……めてよぉっ……!! 離してぇっ!!!」
地面から二本の禍々しい触手が伸びてきて、それが近くにいた二人の少女を捕らえていた。
「月夜ッ!!」
「セラさんッ!!」
この中でも、特に戦闘能力のない二人が狙って襲われてしまっていた。
それが分かった時、俺とルインは声を上げながら自然と足が動いていたのだ。
「チッ……! こりゃ俺らのせいでもあるかもなァッ……!」
「ああ。って……我は何も言ってないのだがな」
「細けーこと気にしてる場合じゃないだろっ! ほら……最初っから全力で行くぞッ!!」
「「了解ッ!」」
「『獣神化』ァッ!!」
「『鬼神化』ッ!!」
「『龍神化』……ッ!!」
しかし。
俺とルインが二人を助けに行くよりも早く、その触手の下にはマノンたち三馬鹿―――が辿りついていた。
「ヘッ……先に行かせてもらうぜェッ!!」
その中でも先行して突っ込んでいったのは鬼神化したサタールだった。
サタールは神剣・神滅を構えたまま飛び上がり、そして流れるように触手に刃を放つ。だが―――
「んだこれ……ッ! 斬れねェじゃねぇかよッ!」
『フハハッ!! アダムの力で創り上げた不滅の腕だからなァ! そう易易と壊されてたまるか!』
「それはそれは。なら、これならどうだろうな?」
直後、トンっ……と俺の背中を叩く感覚がする。
その、すぐ後の事だ。
「ッ……!? アアアアアアグアアアアアアアッ!!!?」
「あ、主様っ!?」
「魔王っ!!」
何だよ、これっ……!
痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!!!
「うっ……ううう……痛い、よぉ……っ!」
「だ、大丈夫……っ! セラちゃんは……私が、まも……ううっ!」
痛い……苦しいッ……!
何だよ……何が、起きたんだよッ……!
「アアアアアアアアアアッ!!!」
「クソッ! 何が起きてんだァッ!?」
「我が主よッ! クッ……二人はこのまま彼女たちの救助を! 我とルイン殿とアルカナ……そして―――おい、そこの天使ッ! いつまで寝ているんだッ!!」
「ふぇ……天使……? わ、たし……の事? って―――私気絶してたのッ!? なに、何このじょうきょ―――えっ……?」
「気がついたかミカエラ! 我が主が大変だ……すぐにこちらへ来いッ!!」
あ……グ……ァ……ァァァァァァッ……!?
力が……力が俺の中に流れ込んできて……力が……ッ!!!
▶耐えろ……耐えてくれッ!!
▶フン、“アイツ”も中々趣味の悪いことをするッ! この身体が保つ保証は無いというのにッ!
▶何よ、そんなにギリギリだったの!?
▶え、ええ! だいぶ危ない状態ではありました……でも、なんとか彼は誤魔化してたみたいですけど……
▶チッ、俺ですら気づかなかったぜ……
▶クハハハッ!! だが、これに耐えてこそ真に覚醒できるのではないかッ!? ―――最高天空神の力、受け継ぐことができれば……或いはなァ!
『ほう……? 貴様らは俺を放っておくと言うのかッ! 面白いッ! ならば無視できないように手数を増やしてやろうじゃないかァッ!!』
「クッ……邪魔をッ! ここは我が引き受けるッ! 我が主を頼んだぞ!」
言いながらベルゼリオは駆けていく。
サタールとマノンは謎の触手に捕らわれたセラと月夜を助けるべく。
ベルゼリオはイヴの動きを止めるべく。
ルインとミカエラは主の謎の暴走を収めるために。
「それなら私はアンタに加勢するわっ!!」
「かたじけない、アルカナッ!!」
『ハンッ! 守護神―――いや、今は龍神だったか。それに死神王まで俺の相手とはなァ! 良いだろう、先程の仕返しを貴様にはしてやろうアルカナァッ!!!』
▶これで―――収まったか?
「グッ……ァァァッ……!」
「主様……大丈夫ですかっ!」
「る、ルミナスさまっ! 大丈夫なの!?」
「だ、大丈夫……だ……っ……! だいぶ……楽に、なった……と思う」
痛みは既に引いていた。
残っているのはその感覚だけ。
多分、もう大丈夫だ。
だが、一体何が起きた……? 背中を誰かに叩かれて、その直後にアレが……。
って、そうだ。
あの時感じた力はまさか……ッ!
▶ご明察。そうだ、我が来たのだ。
(お前は……もしかしてゼウス……なのかッ!?)
▶ああ。少々強引とは思ったがな。力を無理矢理託させてもらった。もうスキルの継承はされているのではないか?
▶……ああ。神将スキル『審判』を獲得したな……
▶確率改変、それが我の力だ。まあ、お前たちとの戦いの中では使わなかったがな。
(なんだよ、それ……。確率改変ってことは、まさか自分の好きなように確率を……?)
▶その通りだ。って、こんなお喋りをしている時間はあるのか? ほら、そこの仲間たちがだいぶヤバそうだぞ?
(仲間たち―――サタールたちかッ!)
「あ、主様……一体何が?」
「済まないルイン、それにミカエラも。詳しい事情は全部終わってからだ! 今はそれよりも、アイツらのサポートに入るぞッ!!」
「そ、そうね!」
見ると、ベルゼリオとアルカナがイヴと、そしてサタールとマノンが謎の触手との交戦を続けていた。
「俺はイヴの方へ行くっ! 二人は最優先で月夜たちを助けてくれ!」
「分かりましたっ!」
「了解よっ!」
俺の指示で二人は駆け出して行った。
それを横目で確認しながら、俺はそのままベルゼリオへと指示を出す。
「ベルゼリオっ!」
「我が主! ご無事でしたか!」
「ああ。俺は問題ないっ! それよりもお前はサタールたちの方へ行ってくれ! お前らは三人揃ってた方が良いだろうからな!」
「で、ですがッ!」
「いいから早くいけっ! そんで月夜たちをちゃちゃっと助けてきてくれ!」
「―――ッ! はいっ!!」
三人揃ってひとつの神なんだろ。
それなら、一緒に戦うべきだ。
それに、イヴは俺が倒さなくちゃならないんだ。
俺が、やらなくちゃ、いけないんだ。
『またお前か……だが、クク……そうか。奴の力まで取り込んだというのか。面白い。面白いぞ魔王ルミナスッ!!!』
「この一瞬でどれだけ強くなったのか……またお前で試させてもらうぞッ!!!」
「私もやれるだけやるわよっ!」
『面白いっ!! さあ、再びかかってくるがいいッ!! 愚かな魔王共よッ!!』
◆
「ベルゼリオっ! おめぇもこっちに来たのか!」
「ああ。我が主にお願いされてな。我らは三人でいた方がいい、と」
「だなァ? だって俺らは、三体で一体の神なんだろォ? それなら、やっぱ協力してボコすしかねェよなァ?」
サタールは、剣を構えて不敵に笑った。
それに合わせるように、ベルゼリオも刀を突き出す。
「我が護る。お前たちは存分に力を発揮するがいい」
「りょーかい。任せときなァ? 俺が全部マノンに繋げられるように、うまい具合にやってやるからよォ!」
「そんでオレが最後にどかん! って寸法だな?」
「ああ。行こうぜ、お前ら……」
「私たちもサポートさせていただきますよ」
「ええ。なんせルミナス様からのお願いだからね。最優先で助けて、って言われたからね」
「ああそうか。なら、5人でとっととあの触手ぶっ壊して、大将の加勢に行くとするかァッ!」
「「了解っ!!!」」
が見れるのは次回です
昨日は寝落ちごめんなさい




