動き出した最後の歯車
明日はお休み
「ベルゼブブ―――ガブリエル―――」
アイツらも、俺に力を託して消えていってしまった。
何度も言うようだが、アイツらは力を俺に託してから死んだ訳じゃなくて、自らの肉体を俺の中へと移動して住んでいるだけなのだ。
いわば憑依状態。俺が肉体を提供する代わりに、向こうからは力を貸してもらう、そういう状態だ。
▶スキル『暴雷』
▶スキル『絶対殲滅』
▶再び二つのスキルを獲得したぞ。余計な事はもう言わなくても大丈夫だな?
(ああ、もちろん。俺はこの力を、アイツらの分まで上手く使いこなすだけだ)
▶ああ、それでいい。
「魔王ルミナス、少しよろしいですか?」
「ん? あ、ああ。どうした?」
後ろからラフィーナに呼ばれて、俺は振り返った。
一体どうかしたのだろうか。
「はい。頼まれていた皆様の治療が、何とか終わりましたので……」
「あら……よくやったわラフィーナ!! 偉い!!」
「ほ、本当ですか……?♡ おね、お姉さまに、ほめ、褒められちゃった……♡」
横からやってきたミカエラが声をかけると、ラフィーナは蕩けた表情でその場にへたりこんでしまった。
そんなラフィーナを横目に、俺はそのさらに後ろを見てみる。
「ああ、お前たち―――」
すると、ルヴェルフェとラージエリは元気そうにこちらへと歩いてきていた。
「大丈夫なのかァ? 結構派手にぶちかまされてたが」
「フム……やはり我が主や、その忠実なる配下である我ほどの防御力が無いと、奴の攻撃はそれなりに効くという事か」
「ちょっとちょっと。魔王はまだ分かるけどさ。ベルゼリオ、お前は別にそこまで硬い訳じゃないだろ? あんま調子に乗るなよ?」
やって来たルヴェルフェは、サタールとベルゼリオとそんな会話を繰り広げていた。
対してラージエリは。
「うぅ……結構痛いですよ、あれ。普通に一撃喰らえば死にますって……」
「ふーん。やっぱそうなのか。ならオレも破壊の神の力を引き継ぐ者としてちゃんと戦ってみてェなァ!」
「破壊の神ってあんた―――あ、そっか。マノンって……シヴァの……あー、そっかそっか」
「ンだよレヴィーナ。文句あんのか?」
「ちょっとお二方。喧嘩なんかしてる場合じゃないんですよ? 喧嘩腰なのはいただけないですね」
「うるさいわね、ウリエナさん? あんまりピリピリしてると、お肌が荒れちゃうわよ??」
「なん……なんですって……!!」
レヴィーナやマノン、そしてウリエナたちと騒がしく話していた。
だいぶ打ち解けてきた様子だし、こんな状況でも冗談が言い合えるってことはまだ割と余裕はありそうだな。
どうやら『絶対防御』や『絶対守護』、『絶対狂化』、『絶対治癒』のクールタイムは終わっているようだし、新しく獲得した『絶対命中』や『絶対殲滅』も是非使ってみたいところだ。
それに、大罪の奴らから受け継いだ力も使わないとアイツらに失礼だからな。
サタンの火炎の力に、ベルゼブブの雷電の力。マモンの爆撃の力と、レヴィアタンの攻撃集中の力と、ルシファーの明転暗転の力と……あとは、ベルフェゴールのよく分からない力か。
(残るは―――アイツらか)
そこで俺は、残るは最後の一つの罪について考える。
もうここまで来たら、温存しておく意味はあまりないだろう。
だったら―――
◆
「―――うん、うん。分かった」
「……来たの?」
「そうみたいです。やっと、やっとお姉ちゃん達の番なのね―――」
「ま、序列は一番下だしねぇ〜? とはいえ僕たちは強いんだからさ―――」
「そうですね。颯爽と駆けつけて、華麗に皆のピンチを救ってみせましょうか!」
「ふふ、それでいいよ。僕たち【色欲】の名を冠する者が―――」
「―――待ちなさいよ」
「ふぇ……?」
……格好良く言葉を続けようとしたアスモフィの前に、現れた二人の天使。それは【色欲】と対になる、生反対の力を持つ天使―――メタトロンとメタリアだった。
「待ちなさいと言っているの」
「な、何……? お姉ちゃんたちになんか用?」
「用があるから声をかけたんでしょうが。貴女アホなの?」
「アホってなによ!!!」
「まあまあ落ち着いてアスモフィ」
「アスモデウス様! 貴方は少しくらい反論してくれてもいいじゃないですかぁ!!」
「……そう言われてもねぇ。―――一緒に来るんでしょ? メタトロン」
「……ええ。貴方みたいなたらしと行くのは癪だけどね」
「私だって癪ですけど」
「ちょっと貴女は黙ってなさい。メタトロン様の邪魔をするなら消すわよ?」
「……メタリア。貴女は彼女と喧嘩なんてしてる場合じゃないわよ。これからは協力するんだから―――」
「は、はい。申し訳ありませんでした」
「さて……と。それじゃ、さっさと向かっちゃおっか」
「ええ。改めて出発進行よ!!!」
そんなこんなで。
残る最後の一欠片。【色欲】の名を冠する者たちと、【純潔】の名を冠する者たちが今、決戦の地へと向かうのであった。
◆
「よし。これで―――」
彼女たちに連絡を入れた俺は、再び視線の先に奴を据える。
もちろん、イヴの事だ。
「それで? 具体的にはどうするつもりなんだよ―――アダム」
『そうですね。基本的には今まで通り攻撃してください。あの詠唱による世界崩壊は私が止めてみせますから』
「……ん? それなら俺たちに力を借りる必要なんて無いんじゃ―――」
『いえ。私の全力を持ってしても、イヴの攻撃を止められるのはせいぜい一回が限度です。その一回を止めている間に、貴方たちには全力の攻撃をイヴに叩き込んでください』
「それで、どうにかなるのか?」
『ええ。イヴが弱ってくれれば、あとは簡単な話です。そこからは私に任せてください』
「……分かった」
やはり、アダムは不敵に笑ってみせた。
恐ろしく、寒気のするような笑顔だ。
何か、裏がありそうな……そんな顔―――
『―――全部。ブッ壊してやらァ』
「……ッ!!!」
すると、そんな声が聞こえて。
『―――まさかッ! そんな、詠唱が早すぎるッ!』
「はァ? あんだけ長くブツブツ言ってたのに、これでもまだ早いってのか!?」
『……ええ! それよりも全員、構えてくださいッ! 私が言うのもなんですが、このままじゃ全員死にますよッ!』
『―――もう 遅ェよ』
アダムの指示も、全員が構えるのも、何もかもが―――
「―――はっ?」
―――遅かったんだ。
◆
「……ッ!?」
「る、ルインさん……っ! 今のは―――」
「……にぃ……?」
「白夜……?」
その時。
ルインと白夜は立ち上がっていた。それを心配するように、月夜とラグマリアも立ち上がる。
「……いや……嫌です……嫌ですよ……?」
「あ……れ? なんで……涙が―――」
繋がっていた糸が、途切れるような感覚が二人にはあった。
それは、その瞬間。プツっと、無慈悲に切られたような感覚だった。
「消え……た?」
「ベリアル様……?」
「みんなの……力が……消え、た……」
ベリアルにも、それは感じられたようだった。
彼は言う。「消えた」と。
「……もう、いいのではないか?」
「そう、ね―――もう、律儀に指示を守っているのはやめにしましょう?」
ゼウスとガネーシャは言う。
「もういい」と。
「あるじ……さま……」
「アニ……キ……」
きっと……いや、絶対に大丈夫だ。
そう信じている二人は、固く、固く拳を握りしめる。
「ルインさん―――」
「ええ。分かっています。ガネーシャさんの、言う通りですね」
「それじゃあ、行くのね……?」
「にぃ……大丈夫だよね……?」
「ああ。大丈夫さ。だって、あのアニキだぜ?」
笑ってそう言う白夜だが。その笑顔は、どうしようもなく震えていた。
「……白夜様―――行きましょう。もう、全員で行くべきときなのです」
「……ですね。大丈夫……きっと、皆無事です―――そうですよね。アニキ……っ!!」
不安な気持ちを押し殺して。
大丈夫だと笑ってみせた二人は。
ずっと待っていた仲間たちを引き連れて、彼の地へと向かう。
―――全てが終わってしまった、絶望の地へと。
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最弱姫プは今日更新します!!




