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case.6 戦帝国フラウ

「ヒィッ……!」



 俺が一歩ずつ歩み寄れば、それに対応するようにサタールは一歩後退する。



「だ、だが俺はまだ生きてる! お前さんにさっきの焉魔はもう撃てない! 剣でも魔法でも俺っちには勝てないんだ! 分かるかい?!」



 ブラフだな。

 もう、勝ち目は無いのが分かっていて、言っているのだろう。


 何故か。それなら後退する理由が無いからだ。剣でも魔法でも俺に勝つ自信があるなら、突っ込んでくればいい。しかし、それをしないということは、勝ち目がないことを悟ったからだ。



 それに……



「俺はこの魔法を、“一度しか使えない”なんて一言も言ってないだろ?」


「は……?」



 俺は手のひらに黒い炎を生み出しながら言った。



「嘘だろ……? なんでい……アンタのその力は……!」


「これが、魔王だ」



 俺は、カッコつけながらそう言った。


 フッ……キマったな……!



「なるほどねェ? アンタの強さは分かったよ。俺の負けだ。負けでいいさ。流石に勝てねェや」



 両手を上げながら降参するサタール。


 そんな俺は、無慈悲にもサタールに言った。



「それじゃあ……サタール」


「ほえ……?」



 手を顔にかざす。



「宣言通り、俺の傀儡になりな。『支配ルール』」



 久しぶりの『支配』を使う。


 『支配』を受けたサタールの目はトロンとしてくる。光を失った目はやがて光を取り戻す。



「おい、サタール。おーい、起きろー」


「……んん……んあ? ああ、そうか。『支配』したのかい」


「おう。一応な。これでお前は裏切れないぞ」


「いやいや、流石にアンタを裏切るのはレベルが高いって」



 そんな会話をしていると、見ていたルインとルシファルナがやってきた。



「主様! すごいです!」


「はい。しかし、流石にあの時は驚きましたよ」



 あの時?



「そうですよ、主様! 自殺なんて、ビックリしたんですから! ……でも、ちゃんと生きてて本当に良かったです! さすが主様です!」



 えへへ、なんて笑いながらそう言うルインに、やはり俺は照れてしまう。

 なんて可愛さなんだ……。



「あっ、ああ。まあな?」



 焦ったようにそう答えてしまう俺。


 しかし、そんな様子を見たのか、サタールはこちらを見ながらこんなことを言ってきた。



「ヘェ? 魔王様の好きな娘はこういう女の子なんだなァ?」


「は……?」


「へ……?」



 俺とルインは固まってしまう。



「ちょちょちょちょ! べ、別に好きなんて言ってないだろう?!」



 焦ったように反論してしまったが……



「主様は……私の事、別に好きじゃないの……かな……。うっ、うう……」



 今度はポロポロと涙をこぼすルイン。


 あっ、あわわわわわわわ。

 ど、どうすれば……!



「あ〜あ、泣かせちまったなァ? 魔王様?」


「な! だ、第一お前のせいだろう!? だぁーもう、ルイン、違うんだ、これは誤解だぁぁぁぁぁ!」



 俺の悲痛な叫びが、平原にこだました。



※そのあとルシファルナの的確な対応によって、この問題は無事解決しました。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「それで、この後どうするんだい?」


「そうだな……一度魔界に戻りたいが……」



 俺はサタールの問いに答えながら考えた。



「みんなは、どうしたい?」


「私は特に大丈夫です!」


「ええ、私も大丈夫ですよ」



 俺の問いに、ルインとルシファルナはそう答えた。


 しかし、サタールは少し悩んだあと、言った。



「悪いね、魔王様。俺っちはちょっとこの国でやりたい事があるんよ」


「戦帝国フラウ、でか?」


「ああ。ちょっと許せねぇ奴が居てなぁ」



 なんだろう。また妙な胸騒ぎがする。

 また聖皇国ラーゼの時みたいな、あの感じ。



「まあ、俺っちの種族は見ての通り“鬼族オーガ”なんだけどよ、この国の奴らも、基本は鬼が大半を占めてるんだわ。そんで、そいつらが、魔族を悪用してるみたいでさァ」



 またか……。何故この世界の奴らはこぞって魔族を痛めつけるんだ。



「と、言うわけでこの国に潜伏してたんだけどよ、折角魔王様も来たことだし、いっちょ滅ぼしますか?」


「物騒なことを言うなよ。だがまあ、魔族を虐げてるなら話は別だ。いいぜ、乗った。」



 俺とサタールはニヤリと笑い、そして拳を合わせる。



「2人とも、そんな感じでいいか?」



 俺は後ろで見てたルインとルシファルナに聞いた。



「ええ、愚問ですよ」


「はい! もちろん私たちもお供します!」



 よし、決まりだ。

 次の標的は戦帝国フラウ。


 ここを『支配』してやる……。



 そう決意した俺たちは、国内へ入り込む為、偽装の準備に取り掛かるのだった。



(それにしても、魔界に残して来たマノンたちは大丈夫か……?)

次回は魔界に残してきた4人のお話です

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