勤勉なるは怠惰の証
最近涙もろいです
「―――あー、そっか。ベルちゃんもそっち行っちゃうんだ」
「ラジエル様……?」
「そっかそっか……。なら、私もやる事やっちゃわないとね」
「……行くんですか?」
「うん。行こうか」
◆
「仲間を守る―――か。随分とカッコイイ事言うじゃねェか、ルヴェルフェさんよ!」
「あはは。ちょっとだけ背伸びしちゃったかな。最終決戦だと思うと、ね」
「ま、でもそのくらいの意気で行かないとね。私はそういうの好きよ?」
「私も嫌いじゃないですよ。ですが、私だって同じ気持ちですから―――負けませんよ、ルヴェルフェにだってね」
徐々に揃いつつある《魔帝八皇》たちは、俺の後ろでそんな会話を繰り広げていた。
だいぶ柔らかい態度になったルシファルナも交えて、いい感じの雰囲気になっているな。
「ルミナス様? ここからはどうするの?」
「私も気になります。と言っても、私にできるのはせいぜいサポートくらいですが」
俺の隣ではミカエラとラフィーナがそう問いかけてくる。
この後、か。
前を見ると、怒りで今にも飛び出してきそうなイヴが居る。
その後ろにはセットでアダムもだ。
「そうだな―――」
『ここから―――なんて貴様らには来ないぞ』
「……何故だ? 数的有利を持っているのはこちらなんだぞ? それにお前たちの攻撃は俺が全部防げるんだぞ? こんな状況で、お前らに勝ち目なんてあるとは思えないが」
『フッ―――ほざいてるといい。そんな余裕な態度が取れるのも今の内だけだ』
そう言うと、イヴは再び地面に足をつけた。
『イヴ―――』
『アダム。お前は手を出すな。少しだけ、力を解放する―――』
『……分かりました。では、私は全てを見届ける事にしましょう。何にも手出しはしませんからね』
『ああ。それでいい』
言いながら一歩ずつこちらへ歩み寄ってくるイヴ。
その身体の周りにはバチィッ……!と、黒い電気が発せられていた。見ると、イヴの拳には先程まで素手だったはずなのに、メリケンサックのような物がいつの間にかついていた。
今の一瞬で装備したというのだろうか。
「お前たち。陣形は崩すなよ―――?」
俺は一歩前に出て、仲間たちを庇うように手を出しながらそう指示を出した。
仲間たちは俺の言葉に頷くと、それぞれのポジションに付き始める。
レヴィーナ、ルシファルナ、ラフィーナは完全に後衛として。
ルヴェルフェは中衛で動けるように。
そしてサタールとミカエラは前衛で攻められるように。
『―――貴様らは、俺を怒らせた。悪いがここからは、魔王すら殺す気で行かせてもらう』
次の瞬間。
そう言い残したイヴは、俺の視界でも捉えることの出来ないスピードで消え去った。
「……ッ!!」
そしてさらに次の瞬間だ。
「―――ゴフッ……!!!」
そんな。そんな、声にもならないような声が、背後から聞こえてきた。
―――まさか、この一瞬で? そう思って俺はすぐに振り返る。
「ラフィーナッ!?」
するとそこには、血を吐いて倒れるラフィーナの姿があった。
俺は“神速”でラフィーナの元まで駆け寄ると、すぐに治療を開始する。
「大丈夫だッ! すぐに助けてやるからな……ッ!」
「う……わ、私の事は大丈夫……です―――から、今はあの神に……集中を―――」
『ソイツの言う通りだぜ魔王ッ!! おらァッ!!』
「チッ……させるかよッ!」
ガキィィンッ!!という金属と金属が打ち合う音が響く。
見るとサタールの振るう“神滅”が、イヴの拳と力比べをしていたのだ。
『ヘェ……? よく俺の拳を受け止められたなァ……?』
「ほとんど勘だけどなァ……ッ!!」
「―――サタールッ! 上に飛んでッ!!」
「おうッ!!」
すると、後ろからレヴィーナの声がして、その言葉に導かれるままにサタールは上に飛んだ。
直後、幾重もの弓矢がイヴに向かって襲いかかってきていた。
『小賢しいッ!! “限界破壊衝撃波”ッ!!』
それに対しイヴは、拳を地面に打ち付けて放つ衝撃波によって迎え撃とうとしていた。
波状に襲い来る衝撃波と、それに真っ向から立ち向かう弓矢たち。一見すれば弓矢の方が不利な気もするが―――
「ルシファルナ! 今よッ!」
「分かりました……! ―――『幻想世界・解除』ッ!!」
そう、ルシファルナが叫ぶと。
衝撃波の直前まで迫っていた弓矢はその場から姿を消したのだ。
『……ほう?』
「喰らいなさい―――“幻影矢雨”ッ!!」
かと思えば、今度はイヴの上空から雨のように弓矢は現れて、イヴへと襲いかかった。
そしてイヴの放った衝撃波は、
「―――こんな物……“陽神光柱”ッ!!!」
ミカエラが放った火炎の柱によって掻き消されていた。
『なかなか面白い事をしてくれる。だが―――所詮はその程度ッ!!』
そう言ってイヴは飛び上がる。
すると、上空から迫っていた弓矢たちは何故か次々と破裂していき、さらにイヴはそれを魔力を使って一つに集めていたのだ。
『自分たちの技で砕け散るといい―――“破壊爆弾”』
壊れた弓矢が一つに集まり、やがてそれは一つの爆弾を形成していた。
そしてそれを、イヴがこちらへ向かって投げつけてくる。
「こんなガラクタ……俺がぶった斬ってやるよォッ!」
「私も手伝うわよッ!」
その爆弾を斬り捨てようと、サタールとミカエラの前衛組が我先にと飛び出していった。
だが、俺には少しだけ嫌な予感がしていた。あの爆弾から、何やら変な気配を感じたのだ。
ただの爆弾じゃないような。そんな気が。
「……まさかあれって―――マズイかも、魔王っ!!」
「ルヴェルフェ……? ど、どうしたんだよ!」
「―――説明してる時間はなさそうだね……ッ! それなら……“高速付与・転移穴”ッ!!」
ルヴェルフェが焦るように力を使った。
俺を守った時と同じ呪術だろう。ルヴェルフェの隣には、飛び出していったサタールもミカエラが居たのだから。
「お、おい! 何故逃げようとするんだよ!」
「そうよ! このまま壊しちゃえば良かったのに!」
「二人とも落ち着いて。あの爆弾―――多分触ったら細胞レベルで破壊されちゃうよ?」
『ほう……? そんな事まで気がつくとはなァ? ―――なかなかやるじゃねェか。だがな。それに気づいたところで、この攻撃を防ぐ術はねェんだよ。とっとと朽ち果てなァッ!!!』
ルヴェルフェの言った事はどうやら事実だったようで、イヴはそんな煽りを入れてきたが、実際イヴの言う通り、もし本当にその攻撃が触れることの出来ない物なのだとしたら太刀打ちができないのだ。
武器は壊されてしまうし、肉体は破壊されてしまう。
「……マズイか、これ―――?」
爆弾は徐々にこちらへと迫ってきているこの状況。ゆっくりではあるが、死に近づいている感覚は心に、確かに存在していた。
そんな、誰もが軽く絶望をしかけていた時。
「その程度の攻撃なら簡単に防げるぞ〜!! ほれっ!☆」
そんな風に軽々しい口調で何かを投げ込みながら現れたのは、二人の天使だった。
どかーん!とイヴの爆弾は、その投げ込まれた何かとぶつかって爆ぜて消えてしまっていた。
「お前たちは……」
「ふぃー。私はラジエルよ―――あー、もう全部面倒くなったわ。さっきので全部使い果たした感じ」
「ちょ、ラジエル様……」
それは、ラジエルとラージエリの二人だった。
やっぱり来たかと、俺は心の中で安堵していた。だって俺が悪魔側の援軍を呼ぶとそれに対応した天使組も二人やって来ていたからだ。
今回はこの二人か。
「……んじゃとっとと反撃しよっか」
「魔王、我々もここからは加勢するわ」
「ああ。助かる、二人とも」
俺は二人にお礼を言いながら、さらに次なる援軍を呼ぼうと思案する。
(次は、アイツらだな―――)
イヴがああいう攻撃をしてくると分かった以上、こちらもそれに対抗できる奴を呼ばなくては。そう思った俺は、そいつらを呼ぼうと、再びルインに通信魔法をかけるのであった。
◆
「―――ヘッ……! ようやくオレらの出番かよッ!!」
「だな。一緒に踊り狂おうぜ、マノン!」
「おう! ようやく面白くなってきやがったな……!」
『オレら爆魔の使者が全部破壊し尽くしてやるよ……ッ!』
「首を洗って待ってなァ―――破壊神サマよォッ!!!」
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メンタル死にそうなのでぜひぜひ。




