覚悟
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「ラファエル……サタン―――」
また、二人が俺の中へと消えていった。
もう気づいた時には、力を受け継ぐ時の痛みなんて全く感じていなかった。
『イヴ。少しマズイかもしれません』
『ああ……これで3つずつ―――そろそろ決めにかかんねェと“あの力”を使う羽目になっちまう』
『ええ。私が援護しますから、イヴはいつものように突貫してください』
『ああ。俺もちょっと本気出させてもらうぜ』
向こうはどうやらついにアダムも参戦して、あの化け物を合わせると3体の相手をする必要があるみたいだ。
俺はイヴの相手になるだろうから、アダムとあの化け物次第だが、残りは仲間たちに任せる必要があるだろう。
▶スキル『絶対治癒』
▶スキル『火焔灼炎』
▶二つのスキルを再び受け継いだようだぞ。サタンのバカみたいなスキルも一緒だが、まあ上手く使ってやれ。
(ああ、度々ありがとな。ハヌマーン)
「―――皆! そっちの化け物は任せたぞ……!」
俺は少し離れた位置にいる仲間たちにそう呼びかけた。
するとレヴィーナやサタールといった自信満々の二人は言ったのだ。
「大将ッ! こっちは問題ねェから、そっちの戦いに集中してくれよ!? 大将が負けたら全部お終いなんだからよォッ!」
「そうよ! こっちには5人も居るんだから! アンタが仲間たちを信じるってんなら、何も心配する必要なんてないでしょう?」
二人のその言葉は、俺を勇気づけるには十分過ぎる言葉だった。
心に少しだけあったモヤはその言葉で一気に取り払われ、視界には光が宿るのを感じる。
そう思っていると、ルシファルナの時と同じく収納魔法の異空間からは二つの武器が勝手に現れてきた。
「これは……」
それは。方や神を滅する為の剣―――“神剣・神滅”で。方や作るだけ作って渡す事の無かったレヴィーナ用の武器―――“妖魔ノ弓”だった。
二つの武器は光り輝いて、自然に浮遊しているが、やがてブーストがかかったかのように飛んでいってしまう。
「こりゃァ……」
「何、これ……」
飛んでいった武器たちはそれぞれサタールとレヴィーナのところへ辿り着くと、まるで自分たちを使ってくれと言わんばかりに目の前で浮遊していたのだ。
二人は目の前に来たそれを取ると、一気に構えた。
「大将―――コイツァありがたく使わせてもらうぜッ!」
「私も……! ていうかこんな物作ってたならもっと早く寄越しなさいよ!」
「わ、悪い……! だが、ソイツらが使われる事を願っていると言うのなら、存分に使ってやってくれ!」
「「了解っ!」」
武器だって使われなければただの鉄くずなんだ。
正しい使われ方をするのなら、アイツらだって本望だろう。多分、そんな思いがあって俺の下から離れていったのかもしれないな。
『さぁて……そんじゃあ続きといこうか……ッ!!』
「ああ。お前は俺がここで食い止めといてやるよッ!」
『ハンッ! お前が俺の足止めだァッ!? 舐めたこと言うじゃねェか! ―――こっちは理想の為に必ず勝たなきゃならねぇんだよ。だから、テメェはその理想の為にここで肉だるまと化しとけやァッ!!』
叫びながら、イヴは飛び出した。
速い。先程までとは比にならないくらいの速度だ。
だが―――目で追えないレベルではない!
「“神速”ッ!!」
神帝武流の簡易発動で、俺はイヴとほぼ同タイミングで飛び出す。
『まずは本気の一発……! 受け止めてみろやァァァッ!!!』
「……なッ!!」
しかし、イヴは俺と拳がぶつかる直前に急加速をして、そんな叫び声と共に俺は腹に強烈な一撃を受けてしまう。
「グァァァァァァアアアアッ!!!」
▶グゥッ……! 大丈夫か魔王!
(ああ……ッ! だが……何だこれは……っ! 苦しい―――?)
「チッ……! 『幻影天―――』」
『させるかよッ!! ―――“悪即壊”ッ!!』
謎の苦しさに堪えながら、俺はスキルによる回復を試みた。
だが、そんな暇はイヴが与えてくれない。
気づいた時にはイヴが目の前まで迫ってきていたのだ。
『ぶっ壊れろ……ッ!!!』
「―――ッ!!!」
その瞬間、俺は死を悟ったが―――
『私の力を使いなさいッ!!』
俺の中でミカエラがそう叫び、咄嗟に力を使った。
『「『絶対防御』ッ!」』
それは、どんな攻撃でも防ぐことのできる実質最強の力。
俺の体にはスキルによる光が鎧のように身にまとわりついて、直後イヴによる一撃を再び腹に食らったのだが―――
「痛くない……っ!!」
『何ッ……!? チッ―――そうか、アイツの力かよ……ッ!』
俺に攻撃が通らなくなった事で、イヴは一旦後退をした。
直後、俺は何かをする暇が出来たのが分かり、ラファエルの力で回復を試みる事に。
「『絶対治癒』!」
スキルを使うと、一瞬にして俺の体に残っていた違和感や痛みは全て消え去り、むしろ戦う前より気分がいい。
これが絶対治癒の力なんだろう。病気とかも治せるのだろうか。
『ええ。治せますよ』
(じゃあ凄い便利な力なんだな)
『うーん……まあ、一長一短な気はしますけどね』
あんまり嬉しくなさそうにラファエルは呟いた。
何だ。こんなに便利な力だと言うのに。まあいいか。
『クッ……! 何故こんな力が貴方たちにもっ!?』
『GYAAAAAAAAAAAAAASSU!!!!』
すると背後からは、化け物の痛々しい叫び声とアダムの困惑した訴えが聞こえてきた。
『おいおいマジかよ……ッ! アイツの手駒が押されてるだと……?!』
それは、イヴにとっても困惑するべき出来事だったようで。
「―――“鬼龍流奥義・百鬼夜行”ッ!!!」
「―――“妖魔ノ雷矢”!」
見ればサタールとレヴィーナが主となって化け物へと攻撃を仕掛けていたのだ。
ルシファルナやミカエラはそれにあまりついていけておらず、ラフィーナは完全にバックアップする態勢へと入っていた。
『GYAAAAAAAAAAA!!!!!!』
『そんな……ッ!! 神の力を合成して、十二神将の力を一部コピーして、ようやく出来た最高傑作だと言うのに……っ!! ―――どうして勝てないんですかッ!?』
アダムはそんなシンプルな疑問に悩み、叫んで訴えていた。
だがサタールは「フッ」と鼻で笑って一蹴してみせた。
『何が……おかしいのですか!』
「ああいや。所詮は偽物の癖に―――って思っちまっただけさ」
『……どういう意味ですか』
「本当にやりたい事があるならよ。そんな偽物の化け物より、自分自身で戦えばいいじゃねぇか。そんなんじゃウチの大将よりよっぽど覚悟の無い腰抜け野郎だぜェ?」
化け物の顔に剣を突き刺しながら、アダムに向けて鋭い言葉の刃を放つサタール。
覚悟が無い腰抜け野郎―――か。その言葉を少し前に言われてたら多分俺は立ち直れなかっただろうな。だが、今は違う。
ちゃんと、仲間を信じられるようになったんだから。
『覚悟が無い―――?』
『覚悟が無い、かァ―――』
しかし。
その言葉の刃は、思ったよりも深く刺さってしまったようで。
『―――貴方たちに何が分かると言うのですか』
『―――お前らに理解できる訳ねェだろうが』
大気が揺らぐ。
脳が、直感でこれはヤバいというのを伝えてくる。
それくらい、今の奴らは威圧的で悲しげな口調だったのだ。
『―――分かりました。私が、直接貴方たちに手を下しましょう』
『アダムがやるってんなら、背中は俺に任せときな』
『ありがとう。もう、手加減なんてしませんから』
『覚悟なら、とっくの昔に出来てるんだよ。大昔にな』
そう言って、二人は背中合わせになって構えた。
多分、ここからが双神との本当の戦いの始まりなんだろう。
それなら―――そう思って俺はさらなる援軍を呼ぶことにした。
何でもこなせる、万能薬みたいな奴とその始祖の二人を―――
◆
『―――うん。こっちはルインさんと合流したけど。え? 次は僕たち……? うん。ああ、なるほどね。つまりは便利屋さんとして呼ばれた訳だ。―――うん、ああ。あの人も連れて行けばいいのね? オーケーオーケ。任せといて。今は隣で寝てるからさ』
『ZZzZzZzzzzzzzzz…………』
『うん。分かったよ。すぐに向かうから―――』
『ZzzZzz』
『任せといて。時間稼ぎくらいはしてみせるさ―――いくら【怠惰】の名を冠してるとはいえね』
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